テキスト復習チェック・民法7-1

1 売買契約は諾成契約であり、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

1 正しい 諾成契約とは、合意のみで成立し、効力を生ずる契約をいう。売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。つまり、諾成契約である。


2 売買契約は、双務契約であり、有償契約である。

2 正しい 双務契約とは、当事者双方に対価的な関係のある債務が発生する契約をいう。売買は、売主が財産権を相手方に移転する債務を負い、買主が代金を支払う債務を負う。この売主の債務と買主の債務は対価的関係にある。よって、売買契約は、双務契約である。有償契約とは、契約の当事者双方が利益を求めるための契約をいう。売買契約は、売主も買主も利益を求める契約であるところから有償契約といえる。


3 売買における一方予約があるときは、予約完結権を有する当事者の一方が相手方当事者に対し本契約を締結するという意思表示をし、相手方当事者が承諾をすることで売買契約(本契約)が成立する。

3 誤り 売買における一方予約があるときは、予約完結権を有する当事者の一方が相手方当事者に対し本契約を締結するという意思表示をするだけで、つまり相手方当事者の承諾なしに売買契約(本契約)が成立する。


4 Aを売主、Bを買主とする土地甲の売買契約において、AはBに土地甲を引き渡す行為を行う債務を負う一方、Bに対し代金を支払う行為を行うことを請求することができる債権を取得する。また、BはAに代金を支払う行為を行う債務を負担する一方、Aに対し土地甲を引き渡す行為を請求することができる債権を取得する。

4 正しい 債権とは、特定の人に対して一定の行為を要求する権利をいい、債務とは、特定の人に対して、一定のことをしなければならない義務をいう。ここより、売買における売主であるAは、Bという特定の人に対し代金を支払う行為を行うことを請求することができる債権を取得する一方、Bという特定の人に土地甲を引き渡す行為を行う債務を負う。また、買主であるBは、Aという特定の人に対して土地甲を引き渡す行為を請求することができる債権を取得する一方、Aという特定の人に対して代金を支払うという行為を行う債務を負担する。


5 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供しても、履行を完了していない限り自己の債務の履行を拒むことができる。

5 誤り 同時履行の抗弁権とは、双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができるというものである。つまり、相手方がその債務の履行を提供すれば、履行を完了していなくても自己の債務の履行を拒むことはできない。


6 Aが所有する土地甲についてBと売買契約を締結したが、Aが債務の履行に代わる損害賠償債務を負ったとき、Bからの損害賠償請求に対して、Aは代金支払との同時履行を主張することはできない。

6 誤り 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ここより、Aが債務の履行に代わる損害賠償債務を負ったとき、Bからの損害賠償請求に対して、Aは代金支払との同時履行を主張することができる。


7 同時履行の抗弁権を有する債務者は、相手方がその債務の履行の提供をするまでは、履行遅滞を理由に損害賠償を請求されることはなく、契約の解除をされることもない。

7 正しい 同時履行の抗弁権を有する債務者は、相手方がその債務の履行の提供をするまでは、自己の債務を履行期に至って履行しないことが正当化され、履行遅滞を理由に損害賠償を請求されることはなく、契約の解除をされることもない。


8 Aが所有する土地甲についてBと売買契約を締結し、土地甲を引き渡し、代金の支払を受けた後、当該売買契約を取り消し又は解除をしてBに土地甲の返還を求めたとき、Bは代金の返還との同時履行を主張することができる。

8 正しい 売買契約等の双務契約の取消し又は解除に伴う当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係に立つ。よって、Aからの土地建艦請求に対し、Bは代金の返還との同時履行を主張することができる。


9 AB間の双務契約で、Aの債務の弁済期が令和6年4月1日、Bの債務の弁済期が5月1日であるとき、4月1日にBから債務の履行を請求されたAは、Bの債務との同時履行を主張することはできない。

9 正しい 同時履行の抗弁権が認められるためには、相手方の債務が弁済期にあることが必要である。4月1日において、Aの債務の弁済期は到来しているが、Bの債務の弁済期は到来していない。よって、Aは、4月1日にBから債務の履行を請求されたとき、Bの債務との同時履行を主張することはできない。


10 AB間の双務契約で、Aの債務がBの債務よりも先に履行すべきものであるとき、Aはその債務の履行期到来によりBから債務の履行を請求されても同時履行を主張することはできない。

10 正しい 当事者の一方が先履行義務を負っている場合には、先履行義務者は、その債務の履行期に当該債務の履行を請求されても同時履行の抗弁権を主張できない。


11 Aは、所有する自動車についてBと売買契約を締結し、Bの代金債務の弁済期が到来したので自動車の引渡しの提供をしたが、Bは代金の支払いを拒絶した。しばらくして、Aが自動車の引渡しの提供をすることなく再びBに代金の支払を請求したとき、Bは、同時履行の抗弁権により代金の支払を拒絶することができる。

11 正しい Bの代金債務の弁済期が到来し、Aが自動車の引渡しの提供をしたにもかかわらずBが代金を支払わなかったことで、Bは履行遅滞に陥る。ただ、履行遅滞に陥った債務者であっても、同時履行の抗弁権が認められる。そこで、履行遅滞に陥った債務者は、再度の履行の請求において債権者がその債務の履行の提供をしていない限り、同時履行の抗弁権により債務の履行を拒絶することができる。ここより、Aが自動車の引渡しの提供をすることなく再びBに代金の支払を請求したとき、Bは、同時履行の抗弁権により代金の支払を拒絶することができる。


12 Aは、所有する自動車についてBと売買契約を締結し、Bの代金債務の弁済期が到来したので自動車の引渡しの提供をしたが、Bは代金の支払いを拒絶した。Aは、今一度、履行の提供をしなければ、Bの履行遅滞を理由に売買契約の解除をすることができない。

12 誤り 一度履行の提供をして履行を請求したが反対債務が履行されなかったとき、その後、債務不履行を理由に契約の解除をするにあたっては、再度の履行提供は不要と一般的に解されている。ここより、Aは、今一度、履行の提供をしなくても、Bの履行遅滞を理由に売買契約の解除をすることができる。


13 同時履行の抗弁権を有しているAの債務について債権者Bがその履行を求める訴えを提起したとき、裁判所は、Aに対しBがAに対して負う債務の履行と引換えに履行すべき旨を命ずる判決をする。

13 正しい 同時履行の抗弁権が認められる債務の履行を求める訴えに対し、裁判所は、引換給付判決、すなわち反対債務の履行と引換えにその債務の履行を命ずる判決をする。ここより、裁判所は、Aに対しBがAに対して負う債務の履行と引換えに履行すべき旨を命ずる判決をする。


14 委任契約において受任者が委任事務の履行により得られる成果を委任者に引き渡す債務を負うことがあるが、この成果物引渡債務と委任者の報酬支払債務は同時履行の関係に立つ。

14 正しい 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合、いわゆる成果完成型委任において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。


15 請負契約における請負人の仕事目的物引渡債務と注文者の報酬支払債務は、同時履行の関係に立つ。

15 正しい 報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。つまり、請負人の仕事目的物引渡債務と注文者の報酬支払債務は、同時履行の関係に立つ。


16 請負契約において、請負人の担保責任としての損害賠償債務と注文者の報酬支払債務は、同時履行の関係に立たない。

16 誤り 請負人の担保責任としての損害賠償債務と注文者の報酬支払債務は、同時履行の関係に立つ。


17 借地借家法の借地権における建物買取請求権の行使における借地権者の建物引渡債務と借地権設定者の建物買取代金支払債務は同時履行の関係に立つが、借地権者の土地明渡と建物買取代金の支払いは同時履行の関係に立たない。

17 誤り 建物買取請求権の行使により借地上建物の売買契約が成立するところから、借地権者の建物引渡債務と借地権設定者の建物買取代金支払債務は同時履行の関係に立つ。このとき、借地権者の土地明渡と建物買取代金支払債務も同時履行の関係に立つ。


18 借地借家法の建物賃貸借における造作買取請求権の行使における借家権者の造作引渡債務と借家権設定者の造作買取代金支払債務は同時履行の関係に立つが、建物の明渡しと造作買取代金の支払いは同時履行の関係に立たない。

18 正しい 造作買取請求権の行使により造作について売買契約が成立するところから、借家権者の造作引渡債務と借家権設定者の造作買取代金支払債務は同時履行の関係に立つ。このとき、建物の引渡しと造作代金の支払いは同時履行の関係に立たない。


19 建物賃貸借契約が終了したとき、賃借人は、敷金の返還と賃借建物の明渡しの同時履行を主張することができる。

19 誤り 建物賃貸借契約が終了したとき、賃借人には建物明渡債務、賃貸人には敷金返還債務が発生するが、この場合、賃借人の建物明渡債務が先履行となる。つまり、賃借人が建物を明け渡した後に、賃貸人は敷金を返還すればよく、両債務は同時履行の関係に立たない。


20 金銭消費貸借契約において借主の返還債務を担保するために抵当権が設定され登記されているとき、借主は、返還債務と抵当権登記の抹消の同時履行を主張することができる。

20 誤り 金銭消費貸借の借主の返還債務と抵当権登記の抹消は、借主の返還債務が先履行となる。つまり、借主の返還と抵当権登記の抹消は、同時履行の関係に立たない。


21 履行期に債務を履行せず、債権者に損害を与えたとしても、その履行しなかったことが契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができる事由が存在しないときは、債権者は、損害賠償を請求することはできない。

21 正しい 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。


22 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負う。

22 誤り 債務の履行について確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う。よって、期限の到来したことを知った時から遅滞の責任を負うというものではない。


23 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った場合でも、履行の請求を受けない限り、遅滞の責任を負わない。

23 誤り 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。よって、期限の到来したことを知れば、履行の請求を受けなくても、遅滞の責任を負う。


24 債務の履行について期限を定めなかったときは、当該債務が成立した時から遅滞の責任を負う。

24 誤り 債務の履行について期限を定めなかったときは、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。


25 損害賠償債務は、債務不履行に基づくものか、不法行為に基づくものかを問わず、債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

25 誤り 債務不履行に基づく損害賠償債務の債務者は、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。しかし、不法行為に基づく損害賠償債務の債務者(加害者)は、履行の請求を受けた時からではなく、損害が発生した時から遅滞の責任を負う。


26 債務の履行期を徒過しても債務を履行しなかったとき、それが債務者の責めに帰すべき事由によるものでないときは、遅延損害賠償を請求することはできない。

26 正しい 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。ここより、履行期を徒過しても債務を履行しなかったとき、それが債務者の責めに帰すべき事由によるものでないときは、遅延損害賠償を請求することはできない。


27 Aは、所有する土地甲をBに売買した後、さらにCに二重に売買した。AがCに土地甲の所有権移転登記をすれば、AのBに対する債務は履行不能となる。

27 正しい 不動産の二重譲渡で一方の譲受人への所有権移転登記が完了することで、他方譲受人に対する売主の債務は履行不能となる。よって、AがCに所有権移転登記をすれば、AのBに対する債務は履行不能となる。


28 A所有の建物甲につきAB間で売買契約が締結されたが、建物甲は契約締結以前にすでに滅失していた。建物甲の売買契約は無効であり、Bは、損害賠償の請求も契約の解除もすることができない。

28 誤り 契約締結時以前に履行不能となっている場合、いわゆる原始的不能の場合であっても、契約は無効ではない。よって、損害賠償の請求及び契約の解除ということもある。よって、建物甲の売買契約は無効ではなく、Bは、損害賠償の請求も契約の解除もすることができないというものではない。


29 債務の履行が不能であるところから債務が履行されないとき、それが契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、債権者は、それによって生じた損害の賠償を請求することができる。

29 正しい 債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。


30 A所有の建物甲につきAB間で売買契約が締結され、Aが履行期が到来したにもかかわらず建物甲をBに引き渡していない間に建物甲が落雷により焼失した。履行不能がAの責めに帰すべき事由によるものでないところから、Bは、Aに対して損害賠償の請求をすることはできない。

30 誤り 債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。Aが履行期が到来したにもかかわらず建物甲をBに引き渡していないところから、Aは履行遅滞にある。債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。ここより、建物甲の焼失は落雷という当事者双方の責めに帰することができない事由によるものであるが、それはAの責めに基づく事由によるものとみなさる。よって、Bは、Aに対し損害賠償を請求することができる。


31 履行遅滞において本来の給付とともに請求する損害賠償は、履行が遅延したことによる損害の賠償、いわゆる遅延賠償である。

31 正しい 履行遅滞において本来の給付とともに請求する損害賠償は、遅延賠償、すなわち履行が遅延したことによる損害の賠償である。


32 債権者は、債務者の責めに帰すべき事由により債務の履行が不能であるとき又は債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債務の履行に代わる損害賠償、いわゆる填補賠償の請求をすることができる。

32 正しい 債務者の責めに帰すべき事由により債務の履行が不能であるとき又は債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、填補賠償、すなわち債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。


33 契約によって生じた債務について、債権者は、その契約について債務不履行による契約の解除権が発生しただけでは損害賠償として填補賠償の請求が認められることはない。しかし、契約の解除は損害賠償の請求を妨げないところから、解除権を行使し解除をすれば、その債務不履行が債務者の責めに帰すべき事由によるものであれば、填補賠償の請求をすることができる。

33 誤り 契約の解除は損害賠償の請求を妨げない。そして、契約によって生じた債務につき債務者の責めに帰すべき事由による債務不履行がある場合において、その契約が解除された場合に限らず、債務の不履行による契約の解除権が発生したときも、損害賠償として填補賠償の請求が認められる。


34 債権者は、債務の不履行によって通常生ずべき損害について損害賠償の請求ができるほか、特別の事情によって生じた損害について、当事者がその事情を予見していたときに限り、その賠償を請求することができる。

34 誤り 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害(通常損害)の賠償をさせることをその目的とする。そして、特別の事情によって生じた損害(特別損害)であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。よって、当事者がその事情を予見していたときに限り、特別損害の賠償を請求することができるというものではない。


35 債務不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは損害賠償の請求ができないところから、金銭債務について不可抗力により履行が遅滞した場合であれば、債権者は、遅延損害の賠償を請求することはできない。

35 誤り 債務不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは損害賠償の請求ができない。しかし、金銭債務の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。よって、金銭債務について不可抗力により履行が遅滞した場合であっても、債権者は、遅延損害の賠償を請求することができる。


36 債務不履行を理由に損害賠償の請求をするにあたっては、債権者において損害の証明をする必要があるが、金銭債務における損害賠償請求においては、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

36 正しい 債務不履行を理由に損害賠償の請求をするにあたっては、債権者において損害の証明をする必要がある。しかし、金銭債務の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。


37 金銭債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。このとき、約定利率が法定利率を超えるときであっても、法定利率による。

37 誤り 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。


38 当事者は、契約と同時にする場合に限り、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

38 誤り 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。損害賠償の額を予定は、契約締結後においてもすることができ、契約と同時にする場合に限りできるというものではない。


39 違約金の定めは、民法上、損害賠償額の予定とみなされる。

39 誤り 違約金は、損害賠償額の予定として定める場合と債務不履行に対する制裁、すなわち違約罰として定める場合がある。後者の場合、違約金のほか損害賠償の請求ができる。ただ、民法上、違約金は、賠償額の予定と推定される。しかし、みなされるものではない。よって、違約金について損害賠償額の予定ではなく、違約罰として定めたことを立証すれば、違約罰と取り扱われ、違約金のほか損害賠償の請求ができる。


40 損害賠償額の予定があれば、債務者の責めに帰すべき事由よらない債務不履行であっても、債務者は、予定した額を損害賠償として支払わなければならない。

40 誤り 損害賠償額の予定は、債務者が債務不履行損害賠償責任を負う場合に、債権者は損害の発生及び損害額の証明をすることなく予定額につき損害賠償として請求することができるというものである。よって、債務者の責めに帰すべき事由よらない債務不履行として債務者が債務不履行損害賠償責任を負わない場合であれば、債務者は予定した額を損害賠償として支払う必要はない。


41 土地甲の売買契約を締結した際に損害賠償額の予定をしたときであっても、買主は売主に対し土地甲の引渡しを請求することができ、売主が土地甲の引渡しをしないとき売買契約の解除をすることもできる。

41 正しい 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。よって、損害賠償額の予定をしたときであっても、買主は売主に対し土地甲の引渡しを請求することができ、売買契約の解除をすることもできる。


42 損害賠償額の予定をしたとき、債権者は、債務不履行があったこと及びそれにより損害が発生したことを証明すれば、損害額について証明しなくても、予定額について損害賠償の請求をすることができる。

42 誤り 債権者が損害賠償の請求をするには、債務不履行があったこと、それにより損害が発生したこと及び損害額について証明することを要するのが原則であるが、損害賠償額の予定をすれば、債務不履行があったことだけを証明すれば、損害が発生したこと及び損害額について証明しなくても、予定額について損害賠償の請求をすることができる。


43 損害賠償額の予定があれば、債権者が実際に生じた損害が予定額を上回ることを証明しても、その実際に生じた額の損害賠償を請求することはできない。一方、債務者が実際に生じた額が予定額を下回ることを証明しても、原則としてその実際に生じた額の損害賠償を請求することはできない。

43 正しい 損害賠償額の予定があれば、実際に生じた損害が予定額を上回る場合であっても、その実際に生じた額の損害賠償を請求することはできない。また、実際に生じた損害が予定額を下回る場合であっても、その損害賠償額の予定が暴利行為に該当するような公序良俗に反するものである場合を除き、その実際に生じた額の損害賠償を請求することはできない。


44 損害賠償額の予定があれば、裁判所はその予定額の賠償を命ずることになる。ただし、暴利行為に該当するような公序良俗に反する損害賠償額の予定がなされたときは、予定額を減額して賠償を命ずることができる。

44 正しい 損害賠償額の予定があれば、裁判所はこれに拘束され、予定額と異なる額の損害賠償を命ずることはできない。ただし、損害賠償額の予定の内容が暴利行為に該当するような公序良俗に反する場合は、予定額を減額して賠償を命ずることができる。


45 損害賠償額の予定があれば、過失相殺は認められず、過失相殺により予定額を下回る額の賠償が裁判所により命ぜられることはない。

45 誤り 損害賠償額の予定がある場合であっても過失相殺が認められる。よって、債権者に過失があれば、過失相殺により賠償額が減額され、予定額を下回る額の賠償が裁判所により命ぜられることがある。


46 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、債務者の請求を受け、必要に応じて、損害賠償の責任及びその額を定めることができる。

46 誤り 債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。つまり、債権者に過失があったときは、債務者の請求を待つまでもなく、裁判所は、必ず過失相殺をしなければならない。必要に応じて過失相殺ができるというものではない。


47 裁判所は、債務者の主張がなくても、職権により過失相殺をすることができる。

47 正しい 裁判所は、債権者の過失を基礎づける事実が弁論に現れていれば、債務者の主張がなくても、職権により過失相殺をすることができる。

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