テキスト復習チェック・民法3

1 Aの代理人Bが、AのためにC所有の土地甲を買う契約を締結したとき、土地甲の所有権はいったんBに帰属し、BがこれをAに移転することでAが土地甲の所有権を取得する。

1 誤り 代理人が本人に代わって法律行為をした場合に、その行為の効果は直接本人に帰属する。いったん代理人に帰属し、その後、本人に帰属するものではない。よって、代理人Bが、Aのために土地甲を買う契約を締結したとき、土地甲の所有権はBに帰属せず、直接Aに帰属する。


2 AからC所有の土地甲を買う代理権を授与されたBがAのためにすることを示さないでCと土地甲の売買契約を締結したとき、BがAのためにすることについて、Cが善意無過失であるときは土地甲の所有権はAに帰属するが、Cが悪意又は善意有過失のときは土地甲の所有権はBに帰属する。

2 誤り 代理人が本人のためにすることを示さないで行った法律行為の効果は、代理人に帰属する。ただし、本人のためにすることについて、相手方が悪意又は善意有過失の場合は、本人に帰属する。ここより、BがAのためにすることについて、Cが善意無過失であるときは土地甲の所有権はAではなくBに帰属し、Cが悪意又は善意有過失のときは土地甲の所有権はAではなくBに帰属する。


3 未成年者であっても代理人になることができるが、法定代理人の同意を得ずに行った代理行為は、本人において取り消すことができる。

3 誤り 代理人は、制限行為能力者でもなることができる。ここより、未成年者であっても、代理人になることができる。そして、未成年者である代理人は、代理行為について法定代理人の同意を得ることを要しない。よって、同意を得ずに行った代理行為は、本人において取り消すことはできない。


4 Aは、未成年者Bの法定代理人である。AがBを代理してA所有の土地甲の売買を行った。Aが成年被後見人で当該代理行為につき成年後見人の同意を得ていなかったときも、Aが被保佐人で当該代理行為につき保佐人の同意を得ていなかったときも、当該代理行為について制限行為能力を理由に取り消すことができる。

4 正しい 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。ここより、制限行為能力者が自分のために行う行為につき保護者の同意を得ずに行ったとき取り消すことができるものについて、保護者の同意を得ずに法定代理人として代理行為を行ったときは、取り消すことができる。土地の売買は、成年被後見人、被保佐人のどちらであっても、これを保護者の同意を得ずに自己のために行えば取り消すことができる。よって、Aが成年被後見人または被保佐人のどちらであっても、B所有の土地の売買を成年後見人または保佐人の同意を得ずに法定代理人として行えば、その代理行為は制限行為能力を理由に取り消すことができる。


5 Aは、未成年者Bの法定代理人である。AがBを代理してA所有の土地甲につき一時使用目的のための期間1年の賃貸借契約をCと締結した。Aが成年被後見人で当該代理行為につき成年後見人の同意を得ていなかったときも、Aが被保佐人で当該代理行為につき保佐人の同意を得ていなかったときも、当該代理行為について制限行為能力を理由に取り消すことができる。

5 誤り 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。ここより、制限行為能力者が自分のために行う行為につき保護者の同意を得ずに行ったとき取り消すことができるものについて、保護者の同意を得ずに法定代理人として代理行為を行ったときは、取り消すことができる。土地に係る一時使用目的のための期間1年の賃貸借契約について、これを成年被後見人が自己のために行うにあたっては、保護者である成年後見人の同意を要し、同意を得ずに行えば取り消すことができる。よって、Aが成年被後見人であるとき、成年後見人の同意を得ずにBを代理してA所有の土地甲に係る一時使用目的のための期間1年の賃貸借契約は、制限行為能力を理由に取り消すことができる。一方、被保佐人は、期間5年を超える土地賃貸借を時効のために行うにあたり保佐人の同意を要するが、期間5年以下の土地賃貸借を自己のために行うにあたっては保佐人の同意を要しない。よって、Aが被保佐人であるとき、一時使用目的のための期間1年の賃貸借契約であれば、これを保佐人の同意を得ずにBを代理して行っても、当該代理行為を制限行為能力を理由に取り消すことはできない。


6 A所有の土地甲について、AB間で通謀虚偽表示による売買がなされた。Cから土地甲の買受けの代理権を授与されたDが、Cの代理人としてBと土地甲の売買契約を締結し、Dが土地甲の引渡しを受けた。AB間の売買が通謀虚偽表示によるものであることについて、Dは知らなかったが、Cは知っていた場合、Aは、Dに対し土地甲の返還を請求することができる。

6 正しい 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効である。この無効は、善意の第三者に対抗することができないが、悪意の第三者には対抗することができる。代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。ここより、代理人CがAB間の売買が通謀虚偽表示によるものであることを知っていたときは、通謀虚偽表示における第三者が悪意であったことになる。よって、代理行為の効果はすべて本人に帰属するところから、Aは、AB間の売買が通謀虚偽表示により無効であることをDに対抗することができ、Aは、土地甲の所有権を主張してDに対し土地甲の返還を請求することができる。


7 A所有の土地甲について、AB間で通謀虚偽表示による売買がなされた。Cから土地甲の買受けの代理権を授与されたDが、Cの代理人としてBと土地甲の売買契約を締結し、Dが土地甲の引渡しを受けた。AB間の売買が通謀虚偽表示によるものであることについて、Dは知っていたが、Cは知らなかった場合、Aは、Dに対し土地甲の返還を請求することができる。

7 正しい 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効である。この無効は、善意の第三者に対抗することができないが、悪意の第三者には対抗することができる。代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。ただ、特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。ここより、本人DがAB間の売買が通謀虚偽表示によるものであることを知っていたときは、代理人Cが知らなかったとしても、Dは、通謀虚偽表示における第三者が善意であったことを主張することができない。よって、Aは、Dに対し、AB間の売買が通謀虚偽表示により無効であることをDに対抗することができ、Aは、土地甲の所有権を主張してDに対し土地甲の返還を請求することができる。


8 復代理とは、代理人が自分の権限の範囲内の行為を行わせるために選任する代理人の代理人であり、復代理人が行った行為の効果は、代理人に帰属する。

8 誤り 復代理とは、代理人が自分の権限の範囲内の行為を行わせるために選任する本人の代理人である。代理人の代理人ではない。復代理人が行った行為の効果は、代理人ではなく、直接本人に帰属する。


9 委任による代理人は、本人の許諾を得たときに限り、復代理人を選任することができる。

9 誤り 委任による代理人(任意代理人)は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。よって、本人の許諾を得たときに限り、復代理人を選任することができるというものではない。


10 法定代理人は、本人の許諾なしに、復代理人を選任することができる。

10 正しい 法定代理人が復代理人を選任するにあたり、本人の許諾を要しない。


11 委任契約において代理権を授与された代理人が選任した復代理人がその行為により本人に損害を与えたとき、委任による代理人は、委任契約における受任者の債務不履行損害賠償責任として本人に対し損害賠償責任を負う。

11 正しい 委任契約において代理権を授与された代理人は、受任者として、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負うここから、復代理人を選任した委任による代理人は、善良な管理者の注意をもって復代理人を指揮監督する債務を負っている。復代理人が本人に損害を与えたときは、この受任者の復代理人を指揮監督する債務不履行の損害賠償責任として本人に対し損害賠償責任を負う。


12 法定代理人が選任した復代理人がその行為により本人に損害を与えたとき、法定代理人は選任及び監督に過失がない場合であっても、その損害を賠償する責任を負うが、やむを得ない事由により復代理人を選任したときは、選任及び監督に過失がなければ損害賠償責任を負わない。

12 正しい 法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。ここより、復代理人が本人に与えた損害につき、法定代理人は、選任及び監督に過失がない場合であっても賠償責任を負うのが原則であるが、やむを得ない事由により復代理人を選任したときは、選任及び監督に過失があるときに限り賠償責任を負う。


13 権限の定めのない代理人であっても、保存行為をする権限はあるが、利用又は改良を目的とする行為を行う権限はない。

13 誤り 権限の定めのない代理人は、保存行為のほか、代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為についても、これを行う権限を有する。


14 委任による代理人の権限は、代理権授与行為により定まるが、売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、当該売買契約の取消しの意思表示を受領する権限を有する

14 正しい 委任による代理人の権限は、代理権授与行為により定まる。売買契約を締結する権限を与えられた代理人は、特段の事情がない限り、当該売買契約の取消しの意思表示を受領する権限を有する。


15 本人が死亡すれば、任意代理人及び法定代理人の代理権は消滅する。代理人が死亡した場合、法定代理人の代理権は消滅するが、任意代理人の代理権は消滅せず、相続人に承継される。

15 誤り 本人の死亡は、法定代理人及び任意代理人の代理権消滅事由である。また、代理人の死亡も、法定代理人及び任意代理人の代理権消滅事由である。よって、任意代理人が死亡すればその代理権は消滅し、相続の対象とならない。


16 本人につき破産手続開始の決定があれば、任意代理人及び法定代理人の代理権は消滅する。代理人につき破産手続開始の決定があれば、法定代理人の代理権は消滅するが、任意代理人の代理権は消滅しない。

16  誤り 本人につき破産手続開始の決定があれば、任意代理人の代理権は消滅するが、法定代理人の代理権は消滅しない。代理人につき破産手続開始の決定があれば、法定代理人の代理権だけでなく、任意代理人の代理権も消滅する。


17 本人につき後見開始の審判があれば、任意代理人及び法定代理人の代理権は消滅する。代理人につき後見開始の審判があっても、任意代理人及び法定代理人の代理権は消滅しない。

17 誤り 本人につき後見開始の審判があっても、任意代理人及び法定代理人の代理権は消滅しない。代理人につき後見開始の審判があれば、任意代理人及び法定代理人の代理権は消滅する。


18 代理人が本人のためにすることを示して代理権の範囲内の行為をしたのであれば、代理人に自己又は第三者の利益を図る目的があり、そのことを相手方が知らず、その知らなかったことにつき過失がなかった場合でも、有効な代理行為として本人に効果が帰属する。

18 誤り 代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合、いわゆる代理権を濫用した代理行為において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。つまり、無効であって、効果は生じておらず、本人に帰属しない。


19 AからA所有の土地甲の売却の代理権を授与されたBが、自ら買主となり、かつ、Aの代理人として締結した土地甲の売買契約も有効であるが、Aはこれを取り消して無効とすることができる。

19 誤り 同一の法律行為について、相手方の代理人としてした行為、いわゆる自己契約は、代理権を有しない者がした行為とみなす。つまり、無効である。Bが、自ら買主となり、かつ、Aの代理人として締結した土地甲の売買契約は自己契約であり、無効である。有効であり、取り消すことができるというものではない。


20 売主及び買主からあらかじめ許諾を得ていたとしても、一人の者が売主と買主の代理人として行った代理行為は、無効である。

20 誤り 同一の法律行為について、当事者双方の代理人としてした行為、いわゆる双方代理は、代理権を有しない者がした行為とみなす。つまり、無効である。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。つまり、有効である。よって、売主及び買主からあらかじめ許諾を得ていれば、一人の者が売主と買主の代理人として行った代理行為は、有効である。


21 売主Aと買主Bの土地売買契約において、CがAB双方から所有権移転登記の申請の代理権を授与され、ABを代理してAからBへの所有権移転登記の申請を行うことは、Cが当事者双方の代理人としてした行為であり、ABがあらかじめ許諾をしていないときは、代理権を有しない者がした行為とはみなされる。

21 誤り 同一の法律行為について、当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。つまり、債務の履行の双方代理は、本人の許諾がなくても、代理権を有しない者がした行為とはみなされない。AB双方から所有権移転登記の申請の代理権を授与されたCがAB双方を代理してAからBへの所有権移転登記の申請を行うことは、双方代理といえるが、登記移転行為の申請という債務の履行に関するものであり、ABの許諾がなくても代理権を有しない者がした行為とはみなされない。


22 売主Aと買主Bの売買契約において、CがBの代理人として代金を支払い、かつ、CがAの代理人として代金を受領することは、Cが当事者双方の代理人としてした行為であり、代理権を有しない者がした行為とみなされる。

22 誤り 同一の法律行為について、当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行については、この限りでない。Cが売主A及び買主Bの代理人として代金の授受を行うことは債務の履行についての双方代理であり、代理権を有しない者がした行為とはみなされない。


23 代理権を有しない者が、代理人として締結した契約は、本人において取り消すことができる。

23 誤り 代理権を有しない者が、代理人として締結した契約は、本人に対してその効力を生じない。つまり、無効である。有効で取り消すことができるというものではない。


24 代理権を有しない者が代理人として締結した契約の追認は無効であり、本人による追認はあるが、追認の拒絶ということはない。

24 誤り 無権代理行為について、本人は、追認をすることも、追認の拒絶をすることもできる。無権代理行為は無効であるが、追認により有効になることもあり。その無効は不確定なものといえる。この不確定無効を確定的無効とし、法律関係を安定させるために本人による追認の拒絶が認められている。


25 代理権を有しない者が代理人として締結した契約の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

25 正しい 無権代理による契約の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


26 無権代理において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認をしたものとみなす。

26 誤り 無権代理の相手方は、本人に対して、相当の期間を定めて、追認をするか否かの催告をすることができ、期間内に確答がない場合は、追認を拒絶したものとみなされる。追認をしたものとみなされるものではない。


27 無権代理における相手方の催告権は、無権代理につき善意の相手方に認められるものであり、悪意の相手方には認められない。

27 誤り 無権代理における相手方の催告権は、善意の相手方に限らず、悪意の相手方にも認められる。


28 代理権を有しない者がした契約について、本人及び相手方はこれを取り消すことができるが、相手方は本人が追認をしない間に限り取り消すことができる。

28 誤り 代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただ、本人には追認拒絶権が認められており、取消権は認められていない。


29 無権代理において相手方に認められている取消権は、無権代理につき悪意の相手方には認められないが、善意無過失の相手方に限らず、善意有過失の相手方にも認められる。

29 正しい 無権代理における相手方の取消権は、無権代理につき悪意の相手方には認められないが、善意無過失の相手方に限らず、善意有過失の相手方にも認められる。


30 無権代理において、無権代理人の責任として、無権代理人が履行かつ損害賠償をする義務を負うことが認められている。

30 誤り 無権代理人の責任として無権代理人に認められているのは、履行又は損害賠償の義務であり、相手方は遅行と損害賠償の両方を請求することはできない。


31 無権代理につき善意無過失の相手方のほか、悪意の相手方であっても、無権代理人の責任を追及することができる。

31 誤り 無権代理につき善意無過失の相手方は無権代理人の責任を追及することができるが、悪意の相手方は無権代理人の責任を追及することができない。


32 無権代理につき善意有過失の相手方は、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときを除き、無権代理人の責任を追及することができない。

32 正しい 無権代理につき善意有過失の相手方は、無権代理人の責任を追及することができないが、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは、善意有過失の相手方であっても、無権代理人の責任を追及することができる。


33 無権代理人が制限行為能力者であっても、相手方は、無権代理人の責任を問うことができる。

33 誤り 無権代理人が行為能力の制限を受けていたとき、相手方は、無権代理人の責任を問うことができない。


34 Aが、実際には与えていないのに、土地甲の売却の代理権をBに与えた旨の表示をした場合、BがAの代理人としてCと土地甲の売買契約を締結したとき、Cが代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときを除き、Aは、当該売買契約について責任を負う。

34 正しい 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。ここより、Aが実際には与えていないにもかかわらずBに土地甲の売却の代理権を与えた旨の表示をした場合、BがCと締結した土地甲の売買契約について、Cが代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときを除き、Aは、当該売買契約について責任を負う。


35 Aは、所有する土地甲に抵当権を設定する代理権をBに与えたが、BがAの代理人としてCと土地甲の売買契約を締結した。Cにおいて、Bが土地甲の売買の代理権があると信ずべき正当な理由があるときは、Aは、当該売買契約について責任を負う。

35 正しい 他人に代理権を与えた者は、その代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときは、当該売買契約について責任を負う。ここより、Bに土地甲に抵当権を設定する代理権を与えたAは、Bが土地甲についてCと売買契約を締結したとき、Cにおいて、Bが土地甲の売買の代理権があると信ずべき正当な理由があるときは、Aは、当該売買契約について責任を負う。


36 Aは、所有する土地甲の売買の代理権をBに与えた。Bにつき破産手続開始の決定があった後、Bは、Aの代理人としてCと土地甲の売買契約を締結したとき、破産手続開始の決定によりBの代理権は消滅しており、Bは代理権がないにもかかわらず代理人として土地甲の売買契約を締結したものであり、Cが代理権の消滅の事実につき善意無過失であったとしても、Aは、当該売買契約について責任を負わない。

36 誤り 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。ここより、BのCとの売買契約は、破産手続開始の決定によりBの代理権が消滅した後になされたものであるが、CがBの代理権消滅の事実につき善意無過失であるときは、Aは、当該売買契約について責任を負う。


37 Aは、実際にはBに所有する土地甲に抵当権を設定する代理権を与えていないが、これを与えた旨を表示していたとき、BがAの代理人としてCと土地甲の売買契約を締結した。Aは、土地甲の売買の代理権を与えた旨を表示していたものではないところから、当該売買契約について責任を負うことはない。

37 誤り 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば代理権授与表示による表見代理としてその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。ここより、Aが実際には与えていないにもかかわらずBに土地甲に抵当権を設定する代理権を与えた旨の表示をし、Bがその範囲外である売買契約を締結したとき、CにおいてBに土地甲の売買の代理権があると信ずべき正当な理由があるときは、Aは当該売買契約について責任を負う。よって、Aは、当該売買契約について責任を負うことはないとはいえない。


38 Aが所有する土地甲に抵当権を設定する代理権をBに与えた後、Bは、破産手続開始の決定を受けたにもかかわらず、Aの代理人としてCと土地甲の売買契約を締結した。当該売買契約は代理権が消滅した後の当該代理権の範囲外の契約であるが、CにおいてBに土地甲の売買の代理権があると信ずべき正当な理由があるときは、Aは、当該売買契約について責任を負う。

38 正しい 他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば代理権消滅後の表見代理としてその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。ここより、Bが破産手続開始の決定により抵当権設定の代理権が消滅した後に代理人としてCと売買契約を締結したとき、CにおいてBに土地甲の売買の代理権があると信ずべき正当な理由があるときは、Aは、当該売買契約について責任を負う。


39 Aが、実際には与えていないのに、土地甲の売却の代理権をBに与えた旨の表示をし、BがAの代理人としてCと土地甲の売買契約を締結した。CにおいてBが土地甲の売買の代理権があると信ずべき正当な理由があるときは、Cは表見代理によるAの責任を追及すべきである。CがBに対し無権代理人の責任を追及してきたときは、Bは表見代理が成立することを主張して無権代理人の責任の履行を拒否することができる。

39 誤り 無権代理の相手方において、表見代理の成立要件及び無権代理人の責任追及の要件のどちらもみたすとき、相手方は、表見代理又は無権代理人の責任のいずれかを選択することができる。このとき、無権代理人は、表見代理の成立を主張して、無権代理人の責任を免れることはできない。ここより、Cは、代理権授与表示による表見代理が成立する場合でも、表見代理によるAの責任を追及せず、Bに対し無権代理人の責任を追及することができる。このとき、Bは、表見代理の成立を主張して、無権代理人の責任の履行を拒否することはできない。


40 Aから代理権の授与を受けていないBが、Aの代理人としてA所有の土地甲の売買契約をCと締結した。Aが追認拒絶をしていないまま死亡し、BがAを単独相続すれば、それにより当該売買契約は当然に有効となり、Bは追認を拒絶することができなくなる。

40 正しい 無権代理において、本人が追認拒絶をしていないまま死亡し、無権代理人が本人を相続すれば、無権代理人は本人が有していた追認拒絶権を承継しているはずである。ただ、このとき、無権代理人の相続が単独相続であるときは、無権代理行為は当然に有効となり、無権代理人において追認を拒絶することはできない。


41 Aから代理権の授与を受けていないBが、Aの代理人としてA所有の土地甲の売買契約をCと締結した。Bが死亡し、AがBを相続したとき、Aは、当該売買契約を追認又は追認拒絶をすることができる。

41 正しい 本人が無権代理人を相続した場合には、無権代理行為は当然には有効とならない。このとき、本人は無権代理行為を追認することも、追認拒絶することもできる。


42 Aから代理権の授与を受けていないBが、Aの代理人としてA所有の土地甲の売買契約をCと締結した。Aが追認拒絶をしていないまま死亡し、BとDがAを共同相続した。BとDが共同で当該売買契約を追認しない限り、当該売買契約は有効とならない。

42 正しい 無権代理人が他の共同相続人とともに本人を共同相続した場合、追認する権利は共同相続人全員に不可分的に帰属し、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理行為は有効とならない。ここより、BとDがAを共同相続した場合、BとDが共同で当該売買契約を追認しない限り、当該売買契約は有効とならない。

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