テキスト復習チェック・民法2

1 心裡留保による意思表示は、表意者が真意と異なることを知りながらする意思表示であるが、真意ではない意思表示ということで無効であるが、相手方が表意者の真意と異なることを知っていた場合又は過失により知らなかった場合は有効となる。

1 誤り 心裡留保による意思表示は、真意と異なる意思表示であり、そのことを表意者自身が知りながらする意思表示である。この心裡留保による意思表示は、真意と異なるものであるが有効である。ただ、相手方において、表意者の真意と異なることを知っていた場合(悪意の場合)又は過失により知らなかった場合(善意有過失の場合)は、無効となる。


2 A所有の土地甲につき、AがBと売買契約を締結し、さらにBがCと売買契約を締結した。ABの売買契約のAの意思表示が心裡留保によるものであるとき、そのことにつきB及びCが悪意であれば、Aは土地甲の所有権をB及びCに主張することができる。

2 正しい 心裡留保による意思表示を含む契約は、相手方が表意者の心裡留保につき悪意であるときは、無効である。表意者は、この無効を善意の第三者には対抗することができないが、悪意の第三者には対抗することができる。よって、B及びCが悪意であれば、Aは土地甲の所有権をB及びCに主張することができる。


3 A所有の土地甲につき、AがBと売買契約を締結した後、さらにBが土地甲をCに売買した。ABの売買契約のAの意思表示が心裡留保によるものであるとき、そのことにつきB及びCが善意有過失であれば、Aは土地甲の所有権をB及びCに主張することができる。

3 誤り 心裡留保による意思表示を含む契約は、相手方が表意者の心裡留保につき善意有過失であるときは、無効である。表意者は、この無効を善意の第三者には対抗することができない。このとき、第三者が善意有過失であっても、善意である以上、対抗することができない。ここより、B及びCが善意有過失であっても、Aは土地甲の所有権をCに主張することができない。


4 A所有の土地甲につき、AとBが通謀して虚偽の意思表示により売買契約を締結したとき、当該契約は無効である。

4 正しい 相手方と通じてなした虚偽の意思表示を含む契約は無効である。よって、AとBが通謀して虚偽の意思表示により締結した売買契約は、無効である。


5 A所有の土地甲につき、AとBが売買契約を締結した後、さらにBが土地甲をCに売買した。ABの売買契約が通謀虚偽表示によるものであるとき、それにつきCが善意であっても、その善意につき過失があるときは、Aは、Cに対し土地甲の所有権を主張することができる。

5 誤り 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。このとき、第三者が善意であれば、それにつき過失がある場合でも、通謀虚偽表示の無効を対抗することはできない。よって、Cが善意であれば、その善意につき過失があるときであっても、Aは、Cに対し土地甲の所有権を主張することができない。


6 A所有の土地甲につき、AとBが売買契約を締結した後、さらにBが土地甲をCに売買した。ABの売買契約が通謀虚偽表示によるものであるとき、それにつきCが善意であっても、登記の移転を受けていないときは、Aは、Cに対し土地甲の所有権を主張することができる。

6 誤り 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。このとき、第三者が善意であれば、登記を備えていなくても、通謀虚偽表示の無効を対抗することはできない。よって、Cが善意であれば、登記の移転を受けていないときであっても、Aは、Cに対し土地甲の所有権を主張することができない。


7 A所有の土地甲につき、AとBが通謀虚偽表示により売買契約を締結した。Bの債権者Cは、ABの通謀虚偽表示につき善意である。Aは、Cが土地甲について差押えをしているか否かにかかわらず、Cに対し土地甲の所有権を主張することができる。

7 誤り 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。ここに第三者とは、通謀虚偽表示の目的物法律上の利害関係を有するに至った者をいう。通謀虚偽表示の目的物について差押えをしていない債権者は第三者に該当しないが、差押えをした債権者は第三者に該当する。よって、Aは、通謀虚偽表示につき善意であるCが土地甲について差押えをしていないときは、Cに対し土地甲の所有権を主張することができるが、Cが土地甲について差押えをしているときは、Cに対し土地甲の所有権を主張することができない。


8 AとBが通謀虚偽表示によりA所有の土地甲につきBを抵当権者とする抵当権設定契約を締結した後、BがCのために土地甲の抵当権に転抵当権を設定したとき、CがBの抵当権が通謀虚偽表示によるものであることを知らなかったのであれば、Cは、Aに対し転抵当権の取得を主張することができる。

8 正しい 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。ここに第三者とは、通謀虚偽表示の目的物法律上の利害関係を有するに至った者をいう。転抵当権は、第三者に該当する。よって、CがBの抵当権が通謀虚偽表示によるものであることを知らなかったのであれば、Aは、Cに対し通謀虚偽表示による抵当権設定契約の無効を主張することができず、Cは、Aに対し転抵当権の取得を主張することができる。


9 AとBが通謀虚偽表示によりAがBに借金をし、BがAに対し貸金返還債権を有することにした後、Bがこの貸金返還債権をCに譲渡した。CがAの借金が通謀虚偽表示によるものであることを知らなかったときは、Cは、Aに対し貸金返還債権の支払いを請求することができる。

9 正しい 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。ここに第三者とは、通謀虚偽表示の目的物法律上の利害関係を有するに至った者をいう。Bの貸金返還債権は通謀虚偽表示により成立した仮装債権であるが、この仮装債権の譲受人は、上記第三者に該当する。よって、CがAの借金が通謀虚偽表示によるものであることを知らなかったときは、Cは、Aに対し貸金返還債権の支払いを請求することができる。


10 A所有の土地甲につき、AとBが通謀虚偽表示による売買契約を締結した後、Bが土地甲に建物乙を建築し、これをCに賃貸した。Aは、CがABの通謀虚偽表示につき善意であっても、Cに対し土地甲の使用の中止を請求することができる。

10 正しい 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。ここに第三者とは、通謀虚偽表示の目的物法律上の利害関係を有するに至った者をいう。土地の仮装譲受人が当該土地上に建築した建物の賃借人は、ここにいう第三者に該当しない。よって、Aは、CがABの通謀虚偽表示につき善意であっても、Cに対し土地甲の使用の中止を請求することができる。


11 A所有の土地甲につき、通謀虚偽表示によりAからBに譲渡された後、BからC、CからDへと転々譲渡された。AB間の通謀虚偽表示についてCが善意であっても、Dが悪意であれば、AはDに対して土地甲の所有権を主張することができる。

11 誤り 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。そして、第三者が善意であれば、その転得者は善意・悪意を問わず保護される。よって、Cが善意であれば、Dが悪意であっても、Dは保護され、Aは、Dに対して土地甲の所有権を主張することができない。


12 A所有の土地甲につき、通謀虚偽表示によりAからBに譲渡された後、BからC、CからDへと転々譲渡された。AB間の通謀虚偽表示についてCが悪意であれば、Dが善意であっても、AはDに対して土地甲の所有権を主張することができる。

12 誤り 虚偽表示による無効は、善意の第三者には対抗(主張)することができない。そして、第三者が悪意であっても、転得者が善意であれば、転得者が善意の第三者として保護される。よって、Cが悪意であっても、Dが善意であれば、AはDに対して土地甲の所有権を主張することができない。


13 錯誤には、内心的効果意思と表示行為が対応していない表示の錯誤と行為の基礎事情、つまり動機の勘違いである動機の錯誤があるが、動機の錯誤は、その動機が相手方に表示されていなければ、民法において取り上げられることはない。ただ、この表示は、黙示の表示でもよい。

13 正しい 錯誤とは、勘違いをいう。民法が取り上げる錯誤としては、内心的効果意思と表示行為が対応していない表示の錯誤と行為の基礎事情、つまり動機の勘違いである動機の錯誤がある。ただ、動機の錯誤については、その動機が相手方に表示されているときに限り、取り上げられる。この動機の表示は、明示される場合のほか黙示による表示でもよい。


14 錯誤による意思表示は、表示の錯誤か動機の錯誤かを問わず、当該錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものでなければ、錯誤を理由に取り消すことはできない。

14 正しい 錯誤による意思表示は、当該錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものでなければ、錯誤を理由に取り消すことはできない。このことは、表示の錯誤か動機の錯誤かを問わない。


15 錯誤による意思表示は、当該錯誤につき表意者に過失があれば、それが単なる過失で重大な過失にあたらない場合でも、取り消すことはできない。

15 誤り 錯誤による意思表示は、当該錯誤につき表意者に重大な過失があれば、取り消すことはできない。しかし、過失があっても、それが重大な過失にあたらないとき、つまり単なる過失(軽過失)であるときは、そのことを理由に取り消すことができないというものではない。


16 錯誤による意思表示は、相手方が錯誤による意思表示であることを知っていた場合には、当該錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものでない場合でも、錯誤を理由に取り消すことができる。

16 誤り 錯誤による意思表示は、当該錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものでないとき、または表意者に当該錯誤につき重大な過失があるときは、取り消すことができない。ただ、表意者に当該錯誤につき重大な過失があるときであっても、相手方が錯誤による意思表示であることを知っていた場合は、取り消すことができる。しかし、錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものでないときは、相手方が錯誤による意思表示であることを知っていた場合でも、取り消すことはできない。


17 錯誤による意思表示は、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合でも、当該錯誤につき表意者に重大な過失があれば、錯誤を理由に取り消すことはできない。

17 誤り 錯誤による意思表示は、当該錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものでないとき、または表意者に当該錯誤につき重大な過失があるときは、取り消すことができない。ただ、表意者に当該錯誤につき重大な過失があるときであっても、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合であれば、取り消すことができる。


18 表意者において錯誤を理由に意思表示を取り消すことができる場合であっても、表意者の錯誤を知らなかった第三者に対してはその取消しを対抗することができない。このとき、第三者が表意者の錯誤を知らないことにつき過失がある場合であっても、取消しを対抗することができない。

18 誤り 錯誤による意思表示の取消しは、善意かつ無過失の第三者に対抗することができない。よって、相手方が表意者の錯誤を知らなかった場合でも、その知らないことにつき過失がある場合であれば、取消しを対抗することができる。


19 相手方に騙されて行った意思表示は、取り消すことができる。一方、相手方以外の第三者に騙されて行った意思表示は、表意者が騙されていることを相手方が知っていた場合には取り消すことができるが、相手方が知らなかった場合には、その知らなかったことにつき相手方に過失がある場合でも、取り消すことはできない。

19 誤り 相手方に騙されて行った意思表示は、取り消すことができる。相手方以外の第三者に騙されて行った意思表示は、そのことを相手方が知っていた場合、つまり悪意の場合には取り消すことができる。また、相手方が知らなかった場合でも、その知らなかったことにつき相手方に過失がある場合、つまり善意有過失の場合であれば、取り消すことができる。


20 AがBに騙され、所有する土地甲をBに売却した後、Bが土地甲をCに売却し引き渡した。Aが騙されていることを知っていたCに対しては、Aは、詐欺を理由にBとの売買契約を取り消し、Cに対し土地甲の返還を請求することができる。

20 正しい 詐欺による意思表示の取消しは、(取消前の)善意・無過失の第三者には対抗(主張)できない。しかし、悪意の第三者には対抗することができる。よって、Aが騙されていることを知っていたCに対しては、Aは、詐欺を理由に売買契約を取り消し、Cに対し土地甲の返還を請求することができる。


21 AがBに騙され、所有する土地甲をBに売却した後、Bが土地甲をCに売却し引き渡した。CにおいてAが騙されていることを知らなかったときは、その知らなかったことにつき過失があっても、Aは、Bとの売買契約の取消しをもってCに対抗することができない。

21 誤り 詐欺による意思表示の取消しは、(取消前の)善意・無過失の第三者には対抗(主張)できない。しかし、善意有過失の第三者には対抗することができる。よって、Aが騙されていることを知らなかった過失により知らなかったCに対し、Aは、Bとの売買契約の取消しをもってCに対抗することができる。


22 AがBに騙され、所有する土地甲をCに売却した後、Cが土地甲をDに売却し引き渡した。C及びDにおいてAが騙されていることを知らなかったとき、その知らなかったことにつきCに過失がないときであっても、Dにおいて過失があれば、Aは詐欺を理由にAC間の土地甲の売買契約を取り消し、この取消しをDに対抗することができる。

22 誤り 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたとき(悪意)、又は知ることができた(不注意で知らなかった)とき(善意・有過失)に限り、意思表示を取り消すことができる。ここより、相手方であるCにおいてAが騙されていることを知らず、かつ、その知らなかったことについて過失がないときは、そもそもAは、Bの詐欺を理由にCとの売買契約を取り消すことができない。このとき、Dが善意有過失であっても、AはCとの売買契約を取り消すことはできない。取消しができない以上、取消しをDに対抗することができるということはない。


23 相手方に脅されて行った意思表示は、取り消すことができる。一方、相手方以外の第三者に脅されて行った意思表示は、表意者が脅されていることを相手方が知っていたか、又は過失により知らなかった場合には取り消すことができるが、相手方が知らず、その知らなかったことにつき過失がないときは取り消すことはできない。

23 誤り 強迫による意思表示は、取り消すことができる。相手方以外の第三者が強迫を行った場合、その事実につき、相手方が悪意の場合又は善意有過失の場合に限らず、善意無過失の場合であっても、取り消すことができる。


24 AがBに脅され、所有する土地甲をBに売却した後、Bが土地甲をCに売却し引き渡した。CにおいてAが脅されていることを知らず、その知らないことにつき過失がない場合であっても、Aは、強迫を理由にBとの売買契約を取り消し、Cに対し土地甲の返還を請求することができる。

24 正しい 強迫による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者にも対抗することができる。よって、CにおいてAが脅されていることを知らず、その知らないことにつき過失がない場合であっても、Aは、強迫を理由にBとの売買契約を取り消し、Cに対し土地甲の返還を請求することができる。


25 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効であるが、この無効をもって善意無過失の第三者に対抗することはできない。

25 誤り 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。この無効は、善意無過失の第三者にも対抗することができる。


26 意思無能力の状態でなされた行為は無効であるが、この無効をもって善意無過失の第三者に対抗することはできない。

26 誤り 意思無能力の状態でなされた行為は、無効である。この無効は、善意無過失の第三者にも対抗することができる。


27 未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った行為は取り消すことができるが、この取消しを善意無過失の第三者に対抗することはできない。

27 誤り 未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った行為は、取り消すことができる。この取消しは、善意無過失の第三者にも対抗することができる。

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