32鑑定評価・地価公示法

【鑑定評価】

不動産の価格に関する諸原則

01 不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成されるが、これを最有効使用の原則という。

01 正しい 最有効使用の原則とは、不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準として形成されるというものである。

鑑定評価によって求める価格

02 不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格であるが、市場性を有しない不動産については、鑑定評価の依頼目的及び条件に応じて限定価格、特定価格又は特殊価格を求める場合がある。

02 誤り 市場性を有しない不動産について求める価格は、特殊価格のみである。限定価格又は特定価格は、正常価格と同様に、市場性を有する不動産について求める価格である。不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格である点は、正しい。


03 限定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする鑑定評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさないことにより正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することとなる場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格のことをいい、民事再生法に基づく鑑定評価目的の下で、早期売却を前提として求められる価格が例としてあげられる。

03 誤り 限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産 との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場 概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正 に表示する価格をいう。本肢が記述するところは、特定価格である。

地域分析

04 同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいうが、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によって、その地域的範囲は狭められる場合もあれば、広域的に形成される場合もある。

04 正しい 同一需給圏とは、一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の対象不動産の存在する圏域をいう。同一需給圏は、不動産の種類、性格及び規模に応じた需要者の選好性によってその地域的範囲を異にするもの、つまりその地域的範囲が狭められ、又は広域的に形成される場合もある。

鑑定評価の方式・手法

05 鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法及び収益還元法に大別され、実際の鑑定評価に際しては、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した手法をいずれか 1つ選択して、適用すべきである。

05 誤り 不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法及び収益還元法に大別される。鑑定評価の手法の適用に当たっては、地域分析及び個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類、所在地の実情、資料の信頼性等により複数の鑑定評価の手法の適用が困難な場合においても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきである。対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した手法をいずれか1つ選択して、適用すべきであるというものではない。


06 鑑定評価の各手法の適用に当たって必要とされる取引事例等については、取引等の事情が正常なものと認められるものから選択すべきであり、売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する事例を用いてはならない。

06 誤り 鑑定評価の各手法の適用に当たって必要とされる取引事例等は、取引等の事情が正常なものと認められるものであること又は正常なものに補正することができるものであることを要する。したがって、売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存する場合でも、正常なものに補正することができるものであれば、取引事例等とすることができる。


07 収益還元法は、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効な手法であるが、事業の用に供さない自用の不動産の鑑定評価には適すべきではない。

07 誤り 収益還元法は、賃貸用不動産又は賃貸以外の事業の用に供する不動産の価格を求める場合に特に有効である。この手法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきものであり、自用の不動産といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。


08 収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法であるが、市場における土地の取引価格の上昇が著しいときは、その価格と収益価格との乖離が増大するものであるため、この手法の適用は避けるべきである。

08 誤り 市場における土地の取引価格の上昇が著しいときは、その価格と収益価格との乖離が増大するものであるので、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として、収益還元法が活用されるべきである。収益還元法が、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格を求める手法である点は、正しい。

【地価公示法】

地価公示の効力等

09 土地の取引を行なう者は、取引の対象となる土地が標準地である場合には、当該標準地について公示された価格により取引を行なう義務を有する。

09 誤り 都市及びその周辺の地域等において、土地の取引を行なう者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければならない。公示された価格により取引を行なう義務を有するというものではない。

標準地の選定

10 都市計画区域外の区域を公示区域とすることはできない。

10 誤り 公示区域(標準地を選定する区域)は、都市計画法に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(国土利用計画法により指定された規制区域を除く。)である。ここより、都市計画区域外の区域を公示区域とすることはできないとはいえない。


11 標準地は、土地鑑定委員会が、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常であると認められる一団の土地について選定するものとされている。

11 正しい 標準地は、土地鑑定委員会が、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定するものとする。


12 土地の使用収益を制限する権利が存する土地を標準地として選定することはできない。

12 誤り 標準地は、土地鑑定委員会が、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定するものとする。土地の使用収益を制限する権利が存する土地を標準地として選定することはできないというものではない。ただ、この場合、そうした権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格を判定し、これが公示される。

価格の判定

13 正常な価格とは、土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格をいい、この「取引」には住宅地とするための森林の取引も含まれる。

13 正しい 正常な価格とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引(農地、採草放牧地又は森林の取引(農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引を除く。)を除く。)において通常成立すると認められる価格をいう。ここから、正常な価格にいう取引には、森林の取引であっても、それが農地、採草放牧地及び森林以外のものとするための取引であれば含まれる。よって、住宅地とするための森林の取引も含まれる。


14 土地鑑定委員会が標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定する際は、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めなければならない。

14 正しい 土地鑑定委員会が標準地の正常な価格を判定する際は、二人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めなければならない。


15 不動産鑑定士は、土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を行うに当たっては、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格を基本とし、必要に応じて、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案しなければならない。

15 誤り 不動産鑑定士は、標準地の鑑定評価を行うにあたっては、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案してこれを行わなければならない。近傍類地の取引価格から算定される推定の価格を基本とし、必要に応じて、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案しなければならないというものではない。ここより、近傍類地の地代等から算定される推定の価格及び同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額は、必要に応じて勘案するというものではなく、常に勘案しなければならない。


16 不動産鑑定士が土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を行うに当たっては、標準地の鑑定評価額が前年の評価額と変わらない場合は、その旨を土地鑑定委員会に申告することにより、鑑定評価書の提出に代えることができる。

16 誤り 標準地の鑑定評価を行った不動産鑑定士は、土地鑑定委員会に対し、鑑定評価額その他の一定事項を記載した鑑定評価書を提出しなければならない。標準地の鑑定評価額が前年の評価額と変わらない場合は、その旨を土地鑑定委員会に申告することにより、鑑定評価書の提出に代えることができるといったことはない。

価格等の公示

17 土地鑑定委員会は、公示区域内の標準地について、毎年2回、2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとされている。

17 誤り 土地鑑定委員会は、公示区域内の標準地について、毎年1回、2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする。公示は、毎年1回であり、2回ではない。


18 土地鑑定委員会は、標準地の価格の総額を官報で公示する必要はない。

18 正しい 土地鑑定委員会は、標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、一定事項を官報で公示しなければならない。ここに、標準地の単位面積当たりの価格は公示しなければならないが、標準地の価格の総額までは公示する必要はない。


19 土地鑑定委員会が標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、標準地の形状についても公示しなければならない。

19 正しい 土地鑑定委員会は、標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、一定事項を官報で公示しなければならないが、この公示すべき一定事項の一つとして標準地の形状がある。


20 土地鑑定委員会は、標準地の単位面積当たりの価格及び当該標準地の前回の公示価格からの変化率等一定の事項を官報により公示しなければならないとされている。

20 誤り 土地鑑定委員会は、標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、標準地の単位面積当たりの価格等一定事項を官報で公示しなければならない。公示事項として、標準地の前回の公示価格からの変化率といったものはない。

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