権利特別法01/借地借家法・借地(40肢)

借地一般

01 甲土地につき、期間を60年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が建物を所有する目的ではなく、資材置場とする目的である場合、ケース①は期間の定めのない契約になり、ケース②では期間は15年となる。

01 誤り 借地借家法は、建物の所有を目的とする土地賃貸借を対象とするところから、資材置場とする目的の賃貸借であれば、借地借家法の借地権にあたらず、民法の適用があるのみである。民法上、賃貸借の存続期間は、50年を超えることができず、契約でこれより長い期間を定めたときでは、その期間は50年となる。よって、15年と定めたケース②では期間は15年となる。一方、60年と定めたケース①では50年の賃貸借となり、期間の定めのない契約になるものではない。


02 Aは、所有している甲土地につき、Bとの間で建物所有を目的とする賃貸借契約を締結する予定であるが、期間が満了した時点で、確実に借地契約が終了するようにしたい。借地契約がBの臨時設備の設置その他一時使用のためになされることが明らかである場合には、期間を5年と定め、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることができる。

02 正しい 借地権の存続期間を30年未満とすること、また契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨の借地契約は、借地借家法上、一般に認められない。ただ、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権(一時借地権)については、こうした制限の適用はない。よって、借地契約が一時借地権であることが明らかである場合には、期間を5年と定め、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることができる。

借地権の存続期間

03 甲土地につき、期間を50年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年 となり、ケース②の期間は15年となる。

03 誤り 建物所有目的の賃貸借は借地契約であり、借地借家法の適用がある。借地借家法上、借地権の存続期間は、30年となる。契約で30年以上の期間を定めたときは、その期間となるが、契約で30年未満の期間を定めたときは、借地権者に不利な特約として無効となり、存続期間は30年となる。このことは、契約を公正証書により締結したか否かを問わない。よって、60年と定めたケース①は60年の借地契約となり、15年と定めたケース②は30年の借地契約となる。


04 建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約(一時使用目的の借地契約を除く。)により借地権を設定する場合において、存続期間を定めなかったときは、その期間は30年となる。

04 正しい 借借地権の存続期間は、30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。ここより、存続期間を定めなかったときは、その期間は30年となる。


05 甲土地につき、期間を50年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が建物の所有を目的とする場合、公正証書で契約を締結しなければ、ケース①の期間は30年 となり、ケース②の期間は15年となる。

05 誤り 建物所有目的の賃貸借は借地契約であり、借地借家法の適用がある。借地借家法上、借地権の存続期間は、30年となる。契約で30年以上の期間を定めたときは、その期間となるが、契約で30年未満の期間を定めたときは、借地権者に不利な特約として無効となり、存続期間は30年となる。このことは、契約を公正証書により締結したか否かを問わない。よって、60年と定めたケース①は60年の借地契約となり、15年と定めたケース②は30年の借地契約となる。

借地契約の更新

06 借地権の存続期間が満了する場合、借地権者が契約の更新を請求したとき、その土地上に建物が存在する限り、借地権設定者は異議を述べることはできない。

06 誤り 借地権者の更新請求に対し、借地権設定者は正当の事由があると認められる場合でなければ、異議を述べることはできない。このとき、借地上に建物が存在すれば、それだけで正当事由がないというものではない。建物が存在しても、借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、なお正当事由が認められ、異議を述べることはできる場合がある。


07 AB間のA所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約において、Bの居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間が満了する場合において甲土地上に建物があり、Bが契約の更新を請求したとしても、Aが遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。

07 正しい 賃貸借契約が契約の更新がない旨を定めていない契約であるところから、この契約は、いわゆる定期借地契約ではなく、普通借地契約にあたる。この場合、借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、法定更新として契約を更新したものとみなされるが、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、この異議に正当の事由があると認められる場合には、法定更新は認められない。よって、期間が満了する場合において甲土地上に建物があり、Bが契約の更新を請求したとしても、Aが遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、賃貸借契約は更新されない。


08 AB間のA所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約において、Bの居住のための建物を所有する目的であり契約の更新がない旨を定めていない契約であって、期間が満了する場合において甲土地上に建物があり、Bが契約の更新を請求したとしても、Aが遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、本件契約は更新されない。

08 正しい 賃貸借契約が契約の更新がない旨を定めていない契約であるところから、この契約は、いわゆる定期借地契約ではなく、普通借地契約にあたる。この場合、借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、法定更新として契約を更新したものとみなされるが、借地権設定者が遅滞なく異議を述べ、この異議に正当の事由があると認められる場合には、法定更新は認められない。よって、期間が満了する場合において甲土地上に建物があり、Bが契約の更新を請求したとしても、Aが遅滞なく異議を述べ、その異議に更新を拒絶する正当な事由があると認められる場合は、賃貸借契約は更新されない。


09 AとBとが期間満了に当たり本件契約を最初に更新する場合、更新後の存続期間を15年と定めても、20年となる。

09 正しい 当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、借地権の設定後の最初の更新にあっては、20年とする。これに反する特約で、借地権者に不利なものは、無効となり、更新後の期間は20年となる。よって、更新後の存続期間を15年と定めても、20年となる。


10 当事者が借地権の設定後に最初に借地契約(一時使用目的の借地契約を除く。)を更新する場合において、存続期間を定めなかったときは、その期間は更新の日から10年となる。

10 誤り 当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から10年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、20年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。ここより、最初に借地契約を更新する場合において、存続期間を定めなかったときは、その期間は更新の日から20年となる。


11 借地権の存続期間を契約で30年と定めた場合には、当事者が契約を更新する際、その期間を更新の日から30年以下に定めることはできない。

11 誤り 当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から10年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、20年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。ここより、借地権の存続期間を契約で30年と定めた場合であっても、更新後の期間を更新の日から30年以下に定めることはできる。


12 甲土地につき、期間を50年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が居住の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。

12 正しい 居住用建物所有目的の賃貸借は借地契約であり、借地借家法の適用がある。借地借家法上、存続期間が50年以上であれば、一般定期借地権として書面により契約の更新がないことを定めることができる。ここより、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効である。一方、期間が50年未満であれば通常の借地権であり、契約の更新がない定めは借地権者に不利な特約として無効であり、30年未満の期間を定めても存続期間は30年となる。よって、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。

建物再築と期間延長

13 借地権(定期借地権及び一時使用目的の借地権を除く。)の目的である土地に転借地権が設定されている場合において、転借地上の建物が滅失したときは、転借地権は消滅し、転借地権者(転借人)は建物を再築することができない。

13 誤り 建物が滅失しても、その敷地の借地権は消滅せず、存続する。借地権が存続するのであれば、転借地権も存続する。そして、借地権者は、当初の存続期間内であれば借地権設定者の承諾なく、更新後であれば借地権設定者の承諾を得て建物を築造することができる。転借地権が設定されている場合、転借地権者による建物の築造は、借地権者による建物の築造とみなされる。よって、借地権者が建物の築造をすることができるのであれば、転借地権者も借地権設定者(賃貸人)との関係で建物を築造することができる。また、転借地権の設定者である借地権者(賃借人)と転借地権者は、借地権設定者と借地権者と同様の関係であるところから、転借地権の当初の存続期間中であれば借地権者(賃借人)の承諾なく、更新後であれば借地権者(賃借人)の承諾を得て建物を築造することができる。以上より、転借地権者は、借地権設定者及び転借地権設定者のどちらの関係においても、建物を再築することができないというものではない。


14 借地権(定期借地権及び一時使用目的の借地権を除く。)の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合でも、借地権の存続期間の延長の効果が生ずる。

14 誤り 借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造するにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日又は建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続する。よって、建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がない場合は、借地権の存続期間の延長の効果は生じない。


15 借地権(定期借地権及び一時使用目的の借地権を除く。)の目的である土地の上の建物が滅失し、借地権設定者の承諾を得て借地権者が新たに建物を築造するに当たり、借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約を借地権者と結んだとしても、この特約は無効である。

15 正しい 借地権者は、借地権設定者の承諾を得て、残存期間を超えて存続する建物を築造することができる。これに反する特約で借地権者に不利なものは、無効である。借地権設定者が存続期間満了の際における借地の返還確保の目的で、残存期間を超えて存続する建物を築造しない旨の特約は、借地権設定者の承諾を得て、残存期間を超えて存続する建物を築造することができることに反する特約で借地権者に不利なものといえ、無効である。

建物買取請求権

16 借地権(定期借地権及び一時使用目的の借地権を除く。)の目的である土地の上の建物所有者が借地権設定者に建物買取請求権を適法に行使した場合、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得るとともに、これに基づく敷地の占有についても、賃料相当額を支払う必要はない。

16 誤り 建物買取請求権が行使されると、建物につき、借地権者を売主、借地権設定者を買主とする売買契約が成立する。売主は、代金支払と目的物引渡しの同時履行の抗弁権を有し、また代金支払請求権を担保するため目的物につき留置権を有する。ここから、建物買取請求権を行使した借地権者は、買取代金の支払があるまでは建物の引渡しを拒み得る。ただ、このとき、敷地を利用した賃料相当額の利益は、不当利得として、借地権設定者に返還すべきである。よって、敷地の占有について、賃料相当額を支払う必要はないというものではない。


17 本件契約で「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨を定めても、この合意は無効となる。

17 誤り 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。ただ、借地人の債務不履行による土地賃貸借契約解除の場合には、借地人は建物等買取請求権を有しない(最判S35.2.9)。ここより、「Bの債務不履行により賃貸借契約が解除された場合には、BはAに対して建物買取請求権を行使することができない」旨の定めは、判例を確認するものであり、無効とならず、有効である。


18 AB間のA所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約において、建物買取請求権を排除する旨の特約が定められていない場合、本件契約が終了したときは、その終了事由のいかんにかかわらず、BはAに対してBが甲土地に所有している建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。

18 誤り 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる。しかし、借地権者の債務不履行を理由に賃貸人が借地契約を解除したことにより借地権が消滅した場合には、建物買取請求権は成立しない(最判S35.2.9)。よって、賃貸借契約が終了したときは、その終了事由のいかんにかかわらず、BはAに対してBが甲土地に所有している建物を時価で買い取るべきことを請求することができるというものではない。

借地権の対抗力

19 Bは、借地権の登記をしていなくても、甲土地の引渡しを受けていれば、甲土地を購入したCに対して借地権を主張することができる。

19 誤り 借地権の第三者に対する対抗要件は、登記又は借地権者が登記されている借地上の建物であり、土地の引渡しは対抗要件ではない。よって、Bは、借地権の登記をしていないときは、甲土地の引渡しを受けていても、Cに対して借地権を主張することができない。


20 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。Bが甲土地の所有権移転登記を備えていない場合には、Aから建物所有目的で甲土地を賃借して甲土地上にD名義の登記ある建物を有するDに対して、Bは自らが甲土地の所有者であることを主張することができない。

20 正しい 不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。ここにいう第三者に、不動産賃借権者は該当する(最判S49.3.19)。そして、建物所有目的の土地賃借権、いわゆる借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。つまり、賃借地上の登記された建物が、借地権の対抗要件となる。ここより、Dが賃借した甲土地上に登記した建物を所有するときは、その賃借権を所有権移転登記を備えていないBに対抗することができる。つまり、Bは、Dの賃借権の付いた甲土地を取得したことになる。


21 土地の賃借人として当該土地上に登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。

21 正しい 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。ここより、土地の賃借人として当該土地上に登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。


22 借地権者が借地権の登記をしておらず、当該土地上に所有権の登記がされている建物を所有しているときは、これをもって借地権を第三者に対抗することができるが、建物の表示の登記によっては対抗することができない。

22 誤り 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。このとき、建物の登記が表示の登記であっても、借地権を第三者に対抗することができる(最判S50.2.13)。


23 借地権者が所有する数棟の建物が一筆の土地上にある場合は、そのうちの一棟について登記があれば、借地権の対抗力が当該土地全部に及ぶ。

23 正しい 借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。このとき、借地権者が所有する数棟の建物が一筆の土地上にある場合は、そのうちの一棟について登記があれば、借地権の対抗力が当該土地全部に及ぶ(大判T3.4.4)。


24 借地権者が借地上の建物にのみ登記をしている場合、当該借地権を第三者に対抗することができるのは、当該建物の敷地の表示として記載されている土地のみである。

24 正しい 複数の土地に借地権を有するが、建物はそのうちの1つの土地の上にのみ存するとき、当該建物の登記は当該建物が存在する土地(建物登記に所在の地番として記載されている土地)の借地権の対抗要件となるのみで、他の土地の借地権の対抗要件とはならない(最判S44.12.23)。ここより、借地権者が借地上の建物にのみ登記をしている場合、当該借地権を第三者に対抗することができるのは、当該建物の敷地の表示として記載されている土地のみである。


25 借地権者が登記ある建物を火災で滅失したとしても、建物が滅失した日から2年以内に新たな建物を築造すれば、2年を経過した後においても、これをもって借地権を第三者に対抗することができる。

25 誤り 借地上の登記ある建物が滅失したとき、借地権者が一定事項を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権は、なお対抗力を有する。そして、建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限り借地権は対抗力を有する。しかし、掲示をせず、建物を築造しただけでは、建物が滅失した日から2年を経過した後に借地権を第三者に対抗することはできない。


26 土地の賃借人が登記ある建物を所有している場合であっても、その賃借人から当該土地建物を賃借した転借人が対抗力を備えていなければ、当該転借人は転借権を第三者に対抗することができない。

26 誤り 借地権者が所有する借地上の登記ある建物は、借地権の対抗要件である。借地権が対抗要件を具備していれば、転借人は、賃借人(転貸人)がその借地権を対抗しうる第三者に対し、賃借人の借地権を援用して転借権を対抗することができる(最判S39.11.20)。よって、土地の賃借人が登記ある建物を所有していれば、転借人が対抗力を備えていなくても、当該転借人は転借権を第三者に対抗することができる。

地代増減請求権

27 本件契約で「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた場合には、甲土地の借賃が近傍類似の土地の借賃と比較して不相当となったときであっても、当該期間中は、AもBも借賃の増減を請求することができない。

27 誤り 土地の借賃が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。ここより、「一定期間は借賃の額の増減を行わない」旨を定めた場合、増額請求はできないが、減額請求はできることになる。よって、AもBも借賃の増減を請求することができないとはいえない。


28 AB間のA所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約において、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約を定めた場合、その期間内は、BはAに対して地代の減額請求をすることはできない。

28 誤り 地代が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。ここに地代不増額特約に限り有効とされているところから、反対解釈により地代不減額特約は無効となる。よって、当初の10年間は地代を減額しない旨の特約は無効であり、BはAに対して地代の減額請求をすることができなくなるものではない。

借地権設定者の先取特権

29 借地権設定者は、弁済期の到来した最後の3年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。

29 誤り 借地権設定者は、弁済期の到来した最後の2年分の地代等について、借地権者がその土地において所有する建物の上に先取特権を有する。最後の3年分の地代等について先取特権を有するものではない。

一般定期借地権

30 Aは、所有している甲土地につき、Bとの間で建物所有を目的とする賃貸借契約を締結する予定であるが、期間が満了した時点で、確実に借地契約が終了するようにしたい。居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、借地契約を書面で行えば、借地権を消滅させるため、借地権の設定から20年が経過した日に甲土地上の建物の所有権を相当の対価でBからAに移転する旨の特約を有効に定めることができる。

30 誤り 借地権を消滅させるために一定期間経過後に借地権設定者に借地上建物を譲渡する旨の特約を付した借地権(建物譲渡特約付借地権)は、居住用建物を所有することを目的とする場合であっても認められるが、建物を譲渡する時期について借地権設定後30年以上を経過した日とする必要がある。よって、借地契約を書面で行う場合であっても、借地権を消滅させるため、借地権の設定から20年が経過した日に甲土地上の建物の所有権をBからAに移転する旨の特約を有効に定めることはできない。


31 Aは、所有している甲土地につき、Bとの間で建物所有を目的とする賃貸借契約を締結する予定であるが、期間が満了した時点で、確実に借地契約が終了するようにしたい。事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。

31 正しい 一般定期借地権として、存続期間を50年以上とし、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がないこととする旨を定めることができる。この特約は、書面によってしなければならないが、公正証書による必要はない。そして、この一般定期借地権は、事業の用に供する建物を所有する目的とする場合でも設定することができる。ここより、事業の用に供する建物を所有する目的とし、期間を60年と定める場合には、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を書面で合意すれば、公正証書で合意しなくても、その旨を借地契約に定めることができる。


32 甲土地につき、期間を50年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。

32 誤り 存続期間が50年以上であれば、専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする借地権であっても、一般定期借地権として、公正証書による必要はないが、書面により契約の更新がないことを定めることができる。ここより、存続期間が50年であるケース①について、契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限らず、書面で定めれば、その特約は有効となる。一方、公正証書により存続期間を10年以上30年未満とし、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする借地権を設定すれば、事業用借地権として、契約の更新(法定更新)のない旨を定めたか否かにかかわらず、当然に更新のないものとなる。ここより、ケース②における公正証書による契約の更新がないことの定めは、この事業用借地権として契約の更新(法定更新)がないことを確認するものといえ、無効という必要はない。


33 AB間のA所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約において、甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。

33 誤り 事業用定期借地権の設定は、公正証書で合意する必要がある。しかし、賃貸アパート事業用の建物を所有する目的により事業用定期借地権を設定することはできない。ただ、一般定期借地権を設定することで、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がないものとすることができる。この一般定期借地権は、書面により合意することを要するが、公正証書による必要はない。よって、専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的で、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならないというものではない。


34 甲土地につき、期間を50年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が居住の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。

34 正しい 居住用建物所有目的の賃貸借は借地契約であり、借地借家法の適用がある。借地借家法上、存続期間が50年以上であれば、一般定期借地権として書面により契約の更新がないことを定めることができる。ここより、ケース①では契約の更新がないことを書面で定めればその特約は有効である。一方、期間が50年未満であれば通常の借地権であり、契約の更新がない定めは借地権者に不利な特約として無効であり、30年未満の期間を定めても存続期間は30年となる。よって、ケース②では契約の更新がないことを書面で定めても無効であり、期間は30年となる。


35 AB間のA所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約において、甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。

35 誤り 事業用定期借地権の設定は、公正証書で合意する必要がある。しかし、賃貸アパート事業用の建物を所有する目的により事業用定期借地権を設定することはできない。ただ、一般定期借地権を設定することで、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がないものとすることができる。この一般定期借地権は、書面により合意することを要するが、公正証書による必要はない。よって、専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的で、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならないというものではない。

事業用定期借地権・事業用借地権

36 甲土地につき、期間を50年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする場合、ケース①では契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限りその特約は有効であるが、ケース②では契約の更新がないことを公正証書で定めても無効である。

36 誤り 存続期間が50年以上であれば、専ら工場の用に供する建物の所有を目的とする借地権であっても、一般定期借地権として、公正証書による必要はないが、書面により契約の更新がないことを定めることができる。ここより、存続期間が50年であるケース①について、契約の更新がないことを公正証書で定めた場合に限らず、書面で定めれば、その特約は有効となる。一方、公正証書により存続期間を10年以上30年未満とし、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする借地権を設定すれば、事業用借地権として、契約の更新(法定更新)のない旨を定めたか否かにかかわらず、当然に更新のないものとなる。ここより、ケース②における公正証書による契約の更新がないことの定めは、この事業用借地権として契約の更新(法定更新)がないことを確認するものといえ、無効という必要はない。


37 Aは、所有している甲土地につき、Bとの間で建物所有を目的とする賃貸借契約を締結する予定であるが、期間が満了した時点で、確実に借地契約が終了するようにしたい。居住の用に供する建物を所有することを目的とする場合には、公正証書によって借地契約を締結するときであっても、期間を20年とし契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることはできない。

37 正しい 居住用建物を所有することを目的とする借地権で、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めることができるのは、存続期間を50年以上とする一般定期借地権である。公正証書によって借地契約を締結するときであっても、期間を20年とし契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を借地契約に定めることはできない。


38 AB間のA所有の甲土地につき建物所有目的で期間を50年とする賃貸借契約において、甲土地上で専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的である場合、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならない。

38 誤り 事業用定期借地権の設定は、公正証書で合意する必要がある。しかし、賃貸アパート事業用の建物を所有する目的により事業用定期借地権を設定することはできない。ただ、一般定期借地権を設定することで、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がないものとすることができる。この一般定期借地権は、書面により合意することを要するが、公正証書による必要はない。よって、専ら賃貸アパート事業用の建物を所有する目的で、契約の更新や建物の築造による存続期間の延長がない旨を定めるためには、公正証書で合意しなければならないというものではない。


39 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、存続期間を20年として借地権を設定する場合、建物買取請求権の規定は適用されず、また、その契約は、公正証書による等書面によってしなければならない。

39 誤り 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。)の所有を目的とし、存続期間を20年とする借地権の設定は、公正証書によることを要する。公正証書以外の書面により契約することはできない。よって、公正証書による等書面によってしなければならないとはいえない。建物買取請求権の規定は適用されという点は、正しい。

建物譲渡特約付借地権

40 居住の用に供する建物の所有を目的として借地権を設定する場合において、借地権を消滅させる目的で、その設定後30年を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨の特約を定めても、この特約は無効である。

40 誤り 借地権を設定する場合においては、借地権を消滅させるため、その設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。いわゆる建物譲渡特約付借地権であり、この特約は有効である。

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