農 地
01 山林を開墾し、農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、農地法の適用を受ける農地に該当しない。
01 誤り 農地とは、耕作の目的に供される土地をいう。土地登記簿上の地目が農地以外であっても、農地として耕作している土地であれば、農地に該当する(最判S35.3.17)。よって、農地として耕作している土地であれば、土地登記簿上の地目が山林であっても、法の適用を受ける農地に該当する。
02 登記簿の地目が宅地となっている場合には、現況が農地であっても農地法の規制の対象とはならない。
02 誤り 農地とは、耕作の目的に供される土地をいう。耕作の目的に供される土地であれば、登記簿上の地目にかかわらず、農地に該当する。よって、登記簿の地目が宅地となっている場合でも、現況が農地であれば法の規制の対象となる。
03 農地法の適用については、土地の面積は、登記簿の地積によることとしているが、登記簿の地積が著しく事実と相違する場合及び登記簿の地積がない場合には、実測に基づき農業委員会が認定したところによる。
03 正しい 農地法の適用については、土地の面積は、登記簿の地積による。ただし、登記簿の地積が著しく事実と相違する場合及び登記簿の地積がない場合には、実測に基づき、農業委員会が認定したところによる。
3条許可の要否
04 農地法第3条第1項の許可があったときは所有権が移転する旨の停止条件付売買契約を原因とする所有権移転の仮登記の申請を行う場合にも、農業委員会の許可が必要である。
04 誤り 物権変動に条件が付いている場合、つまり条件の成就により取得する物権についても、仮登記をすることができる(大判S11.8.4)。3条許可があったときは所有権が移転する旨の停止条件付売買契約は、農業委員会の許可である3条許可がある前に3条許可という条件の成就により取得する農地所有権を生じさせるものといえる。よって、いまだ3条許可がないときであっても、3条許可があることで取得する農地所有権について仮登記をすることができる。
05 金融機関からの資金借入れのために農地に抵当権を設定する場合、農地法第3条第1項の許可が必要である。
05 誤り 農地法3条1項の許可が必要になるのは、農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合である。よって、農地に抵当権を設定する場合は、3条1項の許可は不要である。
06 農地に抵当権を設定する場合には、農地法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
06 誤り 農地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合に3条許可を要する。抵当権は、抵当不動産を使用及び収益を目的とする権利にあたらない。よって、農地に抵当権を設定する場合には、3条許可を受ける必要はない。
07 自己所有の農地に住宅を建設する資金を借り入れるため、当該農地に抵当権を設定する場合には、農地法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
07 誤り 農地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合は、3条許可を受けなければならない。農地を目的とする抵当権の設定は、農地の使用及び収益を目的とする権利の設定にあたらず、3条許可を要しない。
08 親から子に対して、所有するすべての農地を一括して贈与する場合には、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
08 誤り 農地について所有権を移転する場合には、一定の例外を除き、農業委員会の許可を受けなければならない。親から子に対して、所有するすべての農地を一括して贈与する場合は、ここにいう例外に該当せず、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
09 耕作を目的として農業者が競売により農地を取得する場合であっても、農地法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
09 正しい 農地について所有権を移転する場合には、一定の例外を除き、農業委員会の許可を受けなければならない。農業者が競売による取得であっても、法第3条第1項の許可を受ける必要がある(最判S42.3.3)。
10 相続により農地を取得することとなった場合には、農地法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
10 誤り 農地について所有権を移転する場合、すなわち権利移転のための行為について3条許可を要する。相続による権利移転は、被相続人の死亡により法律上当然生ずる効果であり、権利移転のための行為は存しないところから3条許可を要しない。
11 相続により農地を取得する場合は、農地法第3条第1項の許可を要しないが、相続人に該当しない者が特定遺贈により農地を取得する場合は、同項の許可を受ける必要がある。
11 正しい 農地について所有権を移転する場合には、3条許可を要する。相続による農地所有権の移転は、被相続人の死亡という事実によって法律上当然に生ずる効果であって権利移転のための行為によるものではないところから、3条許可を要しない。一方、相続人に対する特定遺贈により農地の権利が取得される場合は、3条許可を要しないが、相続人に該当しない者が特定遺贈により農地を取得する場合は3条許可を要する。
12 遺産分割によって農地を取得する場合には、農地法第3条第1項の許可は不要であるが、農業委員会への届出が必要である。
12 正しい 遺産の分割によって農地の権利が設定され、又は移転される場合であれば、農地法の許可を要しない。ただ、農地の権利を取得した者は、許可を受けてこれらの権利を取得した場合等一定の場合を除き、その農地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。ここから、遺産の分割によって農地を取得する場合には、許可は不要であるが、農業委員会への届出が必要である。
3条許可基準
13 社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人(社会福祉法人)が、農地をその目的に係る業務の運営に必要な施設の用に供すると認められる場合、農地所有適格法人でなくても、農業委員会の許可を得て、農地の所有権を取得することができる。
13 正しい 農業委員会は、農地の所有権等を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合は、3条許可をすることができない。ただし、教育、医療又は社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人で農林水産省令で定めるものが農地の取得後において、その農地をその目的に係る業務の運営に必要な施設の用に供し、農地の全てについて耕作の事業を行うと認められる場合であれば、3条許可を受けることができ、農地所有適格法人でなくても、農業委員会の許可を得て、農地の所有権を取得することができる。
3条許可違反
14 農地法第3条第1項の許可が必要な農地の売買については、この許可を受けずに売買契約を締結しても所有権移転の効力は生じない。
14 正しい 3条許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。よって、3条許可が必要な農地の売買については、この許可を受けずに売買契約を締結しても所有権移転の効力は生じない。
15 農地法第3条第1項の許可を受けなければならない場合の売買については、その許可を受けずに農地の売買契約を締結しても、所有権移転の効力は生じない。
15 正しい 許可を受けないでした農地の売買契約は、その効力を生じない。つまり、所有権移転の効力は生じない。
16 農地法法第3条第1項の許可又は法第5条第1項の許可が必要な農地の売買について、これらの許可を受けずに売買契約を締結しても、その所有権の移転の効力は生じない。
16 正しい 3条許可又は5条許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。よって、3条許可又は5条許可が必要な農地の売買について、これらの許可を受けずに売買契約を締結しても、その所有権の移転の効力は生じない。
農地貸借の特例
17 農地第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。
17 誤り 農業委員会は、農地所有適格法人以外の法人が農地の所有権等を取得しようとする場合は、農地法3条の許可をすることができないのが原則である。ただ、農業委員会は、農地について使用貸借による権利又は賃借権が設定される場合において、一定の要件を満たすときは、農地所有適格法人以外の法人に対して農地法3条の許可をすることができる。ここより、農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできないというものではない。
4条許可の要否
18 耕作目的で原野を農地に転用しようとする場合、農地法第4条第1項の許可は不要である。
18 正しい 農地法4条1項の許可が必要になるのは、農地を農地以外のものにする場合である。よって、原野を農地に転用しようとする場合は、4条1項の許可は不要である。
19 市街化区域内の農地を自家用駐車場に転用する場合、農地法第4条第1項の許可が必要である。
19 誤り 市街化区域内にある農地を自家用駐車場のような農地以外のものにする場合は、農業委員会への届出が必要であり、農地法4条1項の許可は不要である。
20 市街化区域内の自己所有の農地を駐車場に転用するため、あらかじめ農業委員会に届け出た場合には、農地法第4条第1項の許可を受ける必要がない。
20 正しい 農地を農地以外のものにする者は、4条許可を要する。ただ、市街化区域内にある農地を農地以外に転用する場合は、4条許可ではなく、転用工事を行う前に農業委員会に届け出る必要がある。よって、市街化区域内の農地を駐車場に転用するため、農業委員会に届け出た場合には、4条許可を受ける必要がない。
21 自己の所有する面積4アールの農地を農作物の育成又は養畜の事業のための農業用施設に転用する場合は、農地法法第4条第1項の許可を受ける必要はない。
21 誤り 耕作の事業を行う者がその農地(2アール未満のものに限る。)をその者の農作物の育成若しくは養畜の事業のための農業用施設に供する場合は、4条許可を要しない。よって、自己の所有する面積4アールの農地を農作物の育成又は養畜の事業のための農業用施設に転用する場合は、4条許可を受ける必要がある。
4条許可の手続
22 市街化区域以外の区域に存する4haを超える農地を転用する場合には、農林水産大臣の許可を受ける必要がある。
22 誤り 農地を農地以外のものにする者は、一定の例外を除き、都道府県知事の許可を受けなければならない。市街化区域以外の区域に存する4haを超える農地の転用についても、農林水産大臣ではなく、都道府県知事の許可を受ける必要がある。
23 市街化区域内の自己の農地を駐車場に転用する場合には、農地転用した後に農業委員会に届け出ればよい。
23 誤り 農地を農地以外のものにする者は、一定の例外を除き、4条許可を受ける必要がある。ただ、市街化区域内にある農地を農地以外のものにする場合は、4条許可ではなく、農業委員会への届出が必要である。この届出なしに、転用工事を行うことはできない。よって、市街化区域内の自己の農地を駐車場に転用する場合には、農地転用後ではなく、農地転用前に農業委員会への届出が必要になる。
4条許可違反
24 農地法第4条第1項、第5条第1項の違反について原状回復等の措置に係る命令の対象となる者(違反転用者等)には、当該規定に違反した者又はその一般承継人は含まれるが、当該違反に係る土地について工事を請け負った者は含まれない。
24 誤り 農地法4条1項、5条1項の違反について原状回復等の措置に係る命令の対象となる者(違反転用者等)には、当該規定に違反した者又はその一般承継人のほか、当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負った者又はその工事その他の行為の下請人も含まれる。
5条許可の要否
25 砂利採取法による認可を受けた採取計画に従って砂利採取のために農地を一時的に貸し付ける場合、農地法第5条第1項の許可は不要である。
25 誤り 農地を農地以外のものにするため農地に賃借権を設定するときは、農地法5条1項の許可を受ける必要がある。このとき、一時的な賃借権の設定又は砂利採取法による認可を受けた採取計画に従って砂利採取のための農地の賃貸借につき、5条1項の許可を要しないという例外はなく、許可が必要である。
26 砂利採取法第16条の認可を受けて市街化調整区域内の農地を砂利採取のために一時的に借り受ける場合には、農地法第5条第1項の許可は不要である。
26 誤り 農地を農地以外のものにするため、農地について賃借権を設定する場合には、一定の例外の場合を除き、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。砂利採取法16条の認可を受けて市街化調整区域内の農地を砂利採取のために一時的に借り受ける場合は、許可不要の例外に該当せず、5条1項の許可を要する。
27 都道府県が市街化調整区域内の農地を取得して病院を建設する場合には、都道府県知事(農地法第4条第1項に規定する指定市町村の区域内にあってはその長)との協議が成立すれば、農地法第5条第1項の許可があったものとみなされる。
27 正しい 都道府県は、道路、農業用用排水施設その他一定のものの用に供するため、農地を農地以外のものにする場合には、5条1項の許可を要しない。ここにいう道路、農業用用排水施設その他一定のものに、病院は該当しない。よって、都道府県が農地を取得して病院を建設する場合には、5条1項の許可を要する。ただ、都道府県が農地を農地以外のものにしようとする場合で許可が必要なとき、都道府県と都道府県知事等との協議が成立することをもって5条1項の許可があったものとみなされる。
5条許可の手続
28 農地法第5条第1項の許可申請書の提出において、法ではその申請に係る権利の設定又は移転に関し民事調停法により調停が成立した場合など一定の場合を除き、当事者は連署した申請書を提出しなければならないとされている。
28 正しい 5条許可を受けようとする者は、所定の事項を記載した申請書を、農業委員会を経由して、都道府県知事等に提出しなければならない。この申請書を提出する場合には、当事者が連署するものとする。ただし、その申請に係る権利の設定又は移転に関し、民事調停法により調停が成立した場合など一定の場合は、この限りでない。つまり、5条許可申請書の提出において、民事調停法により調停が成立した場合など一定の場合を除き、当事者は連署した申請書を提出しなければならない。
5条許可違反
29 農地法第4条第1項、第5条第1項の違反について原状回復等の措置に係る命令の対象となる者(違反転用者等)には、当該規定に違反した者又はその一般承継人は含まれるが、当該違反に係る土地について工事を請け負った者は含まれない。
29 誤り 農地法4条1項、5条1項の違反について原状回復等の措置に係る命令の対象となる者(違反転用者等)には、当該規定に違反した者又はその一般承継人のほか、当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負った者又はその工事その他の行為の下請人も含まれる。
農地賃貸借の規制
30 農地の賃貸借及び使用貸借は、その登記がなくても農地の引渡しがあったときは、これをもってその後にその農地について所有権を取得した第三者に対抗することができる。
30 誤り 農地の賃貸借は、その登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があったときは、これをもってその後その農地について物権を取得した第三者に対抗することができる。しかし、使用貸借については、こうした取扱いはない。
31 農地法によれば、農地の賃貸借で期間の定めのあるものについては、一定の場合を除き、期間満了の1年前から6か月前までの間に更新拒絶の通知をしないと従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借したものとみなされる。
31 正しい 農地の賃貸借について期間の定めがある場合において、その当事者が、その期間の満了の1年前から6月前までの間に、相手方に対して更新をしない旨の通知をしないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす。ただし、一定の場合はこの限りでない。
32 農地の賃貸借の解除については、農地の所有者が、賃借人に対して一方的に解約の申し入れを行う場合には、農地法第18条第1項の許可を受ける必要がない。
32 誤り 農地の賃貸借の当事者は、都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。ここより、農地の所有者が、賃借人に対して一方的に解約の申し入れを行う場合にも、都道府県知事の許可を受ける必要がある。
33 農地法によれば、農地の賃貸借の当事者は、当該賃貸借の合意による解約が民事調停法によって行われるなど一定の場合を除き、知事の許可を受けなければ、当該賃貸借について、解除、解約の申入れ、合意解約、更新拒絶の通知をしてはならないとされている。
33 正しい 農地の賃貸借の当事者は、政令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。ただし、当該賃貸借の合意による解約が民事調停法によって行われるなど一定の場合は、この限りでない。