存続期間の規制
01 期間を1年未満とする建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約及び一時使用目的の建物の賃貸借契約を除く。)は、期間を1年とするものとみなされる。
01 誤り 期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。期間を1年とするものとみなされるものではない。
02 Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約について期間の定めをしなかった場合、AはBに対して、いつでも解約の申入れをすることができ、本件契約は、解約の申入れの日から3月を経過することによって終了する。
02 誤り 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。よって、期間の定めをしなかった場合、AはBに対して、いつでも解約の申入れをすることができ、本件契約は、解約の申入れの日から3月ではなく、6月を経過することによって終了する。
03 賃貸人Aと賃借人Bとの間で令和3年7月1日に締結した一時使用目的ではない建物賃貸借契約において期間の定めがない場合、借地借家法第28条に定める正当事由を備えてAが解約の申入れをしたときには、解約の申入れをした日から6月を経過した日に、本件契約は終了する。
03 正しい 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。ただ、賃貸人による解約の申入れは、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。そして、賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。ここより、正当事由を備えてAが解約の申入れをしたときには、解約の申入れをした日から6月を経過した日に、本件契約は終了する。
法定更新
04 AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の賃貸借契約において、AがBに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。
04 誤り 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間満了の1年前から6月前までの間に、相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。よって、Aは、法定更新を阻止するためには、期間満了の3月前ではなく6月前までに更新しない旨の通知をしなければならない。法定更新後の期間が、期間の定めがないものとなる点は、正しい。
05 賃貸人Aと賃借人Bとの間で令和3年7月1日に締結した一時使用目的ではない建物賃貸借契約に期間を2年とする旨の定めがあり、AもBも更新拒絶の通知をしなかったために本件契約が借地借家法に基づき更新される場合、更新後の期間について特段の合意がなければ、更新後の契約期間は2年となる。
05 誤り 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。よって、更新拒絶の通知をしなかったために建物賃貸借が更新される場合、更新後の期間について特段の合意がない場合に更新後の契約期間は従前の存続期間である2年となるものではない。
06 借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通の建物賃貸借契約契約の場合、書面で契約し、かつ、Aに相当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。
06 誤り 普通の建物賃貸借契約は、書面で契約をする必要はない。そして、建物の賃貸人による更新拒絶の通知は、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。ここより、普通の建物賃貸借契約は、書面で契約しなくても、Aに相当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。一方、定期建物賃貸借契は契約の更新がないこととする旨を定めた建物賃貸借であるが、公正証書による等書面によって契約をする必要がある。つまり、定期建物賃貸借契の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができる。
建物賃借権(借家権)の対抗力(対抗要件)
07 Aは、B所有の甲建物(床面積100㎡)につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。当該賃貸借契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。
07 正しい 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。ここより、定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。
08 Aを賃貸人、Bを賃借人とする建物賃貸借契約によりBが建物の引渡しを受けた後にAが建物をCに売却して建物の所有者がCに変わった場合、当該賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であれば、BはCに対して賃借人であることを主張できるが、当該賃貸借契約が定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通の建物賃貸借契約であれば、BはCに対して賃借人であることを主張できない。
08 誤り 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。この建物引渡しによる建物賃借権の対抗力は、定期建物賃貸借契及び普通の建物賃貸借契約のどちらにおいても認められる。よって、Bが建物の引渡しを受けた後にAが建物をCに売却して建物の所有者がCに変わった場合、Bは、定期建物賃貸借契の場合と同様、普通の建物賃貸借契約の場合においても、Cに対して賃借人であることを主張することができる。
09 Aは、Bからの借入金の担保として、A所有の甲建物に第一順位の抵当権(「本件抵当権」という。)を設定し、その登記を行った。AC間にCを賃借人とする甲建物の一時使用目的ではない賃貸借契約がある。Cが本件抵当権設定登記より前に賃貸借契約に基づき甲建物の引渡しを受けていたとしても、AC間の賃貸借契約の期間を定めていない場合には,Cの賃借権は甲建物の競売による買受人に対抗することができない。
09 誤り 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。ここに建物の賃貸借は、期間の定めの有無を問わない。よって、Cが本件抵当権設定登記より前に賃貸借契約に基づき甲建物の引渡しを受けていたときは、AC間の賃貸借契約の期間を定めていない場合であっても,Cの賃借権は抵当権に対抗することができ、Cは、甲建物の競売による買受人に賃借権を対抗することができる。
10 Aは、Bからの借入金の担保として、A所有の甲建物に第一順位の抵当権(「本件抵当権」という。)を設定し、その登記を行った。AC間にCを賃借人とする甲建物の一時使用目的ではない賃貸借契約がある。Cが本件抵当権設定登記より前に賃貸借契約に基づき甲建物の引渡しを受けていたとしても、Cは、甲建物の競売による買受人に対し、買受け人の買受けの時から1年を経過した時点で甲建物を買受人に引き渡さなければならない。
10 誤り 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。よって、甲建物の引渡しを受けていたCは、賃借権を抵当権に対抗することができる。抵当権に対抗することができるということは、抵当権実行による買受け人に対しても、賃借権を対抗することができるということである。ここより、Cは、甲建物の競売による買受人に対し、甲建物の賃借権を対抗することができ、買受けの時から1年を経過した時点で甲建物を買受人に引き渡さなければならないというものではない。
借賃増減額請求権
11 建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約及び一時使用目的の建物の賃貸借契約を除く。)において、現行賃料が定められた時から一定期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。
11 誤り 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。現行賃料が定められた時から一定期間が経過していなければ、賃料増額請求は認められないというものではない。
12 本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
12 正しい 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。この借賃増減請求権は、定期建物賃貸借契約においても認められる。よって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
13 Aを賃貸人、Bを賃借人とする建物賃貸借契約において契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約を定めていても、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、当該賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約又は定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通の建物賃貸借契約契約のいずれの場合であっても、借地借家法第32条に基づく賃料減額請求をすることができる。
13 誤り 借地借家法32条は、建物賃貸借契約の当事者に借賃増減額請求権を認めるとともに、一定期間借賃を増額しない旨の特約のみを認めている。ここから、借地借家法32条は、一定期間借賃の減額請求をしない旨の特約を認めておらず、無効とするものといえる。ただ、定期建物賃貸において、借賃の改定に係る特約がある場合には、この借地借家法32条は適用されない。そこで、契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約、すなわち借賃の改定に係る特約を定めているとき、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、普通の建物賃貸借契約の場合には賃料減額請求をすることができるが、定期建物賃貸借契の場合には賃料減額請求をすることができない。
14 建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約及び一時使用目的の建物の賃貸借契約を除く。)において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不当になったなどの事情が生じても、この特約は有効である。
14 誤り 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。ここに借賃不増額特約に限り有効とされているところから、反対解釈により借賃不減額特約は無効となる。
造作買取請求権
15 本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、造作買取請求に関する特約がない場合、期間満了で本件契約が終了するときに、Bは、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について買取請求をすることができる。
15 正しい 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。この造作買取請求権は、定期建物賃貸借契約においても認められる。よって、造作買取請求に関する特約がない場合、期間満了で本件契約が終了するときに、Bは、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について買取請求をすることができる。
16 賃貸人Aと賃借人Bとの間で令和3年7月1日に締結した一時使用目的ではない建物賃貸借契約においてBがAの同意を得て建物に付加した造作がある場合であっても、本件契約終了時にAに対して借地借家法第33条の規定に基づく造作買取請求権を行使することはできない、という特約は無効である。
16 誤り 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。この造作買取請求権を行使することはできないという特約は買主にとって不利なものといえそうであるが、無効ではなく有効である。
建物の転貸に関する規制
17 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約が締結された。BがAに無断でCに当該建物を転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。
17 正しい 賃借人が無断転貸により第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。ただし、無断転貸が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は解除できない (最判S28.9.25)。よって、BがAに無断でCに転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。
18 AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の賃貸借契約において、Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契 約の終了をCに対抗することができない。
18 正しい 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。よって、Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。
19 Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約において甲建物が適法にBからDに転貸されている場合、AがDに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から3月を経過することによって終了する。
19 誤り 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了によって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。この通知がなされたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から6月を経過することによって終了する。よって、AがDに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から3月ではなく6月を経過することによって終了する。
20 賃貸人Aと賃借人Bとの間で令和3年7月1日に締結した一時使用目的ではない建物賃貸借契約にあって建物の転貸借がされている場合において、本件契約がB(転貸人)の債務不履行によって解除されて終了するときは、Aが転借人に本件契約の終了を通知しなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。
20 誤り 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了によって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。しかし、賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除され終了するときは、賃貸人から転借人にその旨の通知がなくても、転借人は転借権を賃貸人に主張できない(最判S36.12.21)。
居住用建物の賃借権の承継
21 Aを賃貸人、Bを賃借人とする建物賃貸借契約が締結され、Bが契約期間中に相続人なしで死亡した場合において、婚姻をしていない事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dがあるときは、当該賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約又は定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通の建物賃貸借契約契約のいずれの場合であっても、Aに反対の意思表示をしないDは、建物の賃貸借に関し、Bの権利義務を承継する。
21 正しい 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。この居住用建物の賃貸借の承継の取扱いは、定期建物賃貸借契及び普通の建物賃貸借契約のどちらにおいても認められる。よって、Bが契約期間中に相続人なしで死亡した場合において、婚姻をしていない事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dがあるときは、定期建物賃貸借契の場合も普通の建物賃貸借契約の場合も、Aに反対の意思表示をしないDは、建物の賃貸借に関し、Bの権利義務を承継する。
22 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約が締結された。Bが相続人なしに死亡した場合、Bと婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1月以内にAに反対の意思表示をしない限り、賃借人としてのBの権利義務を承継する。
22 正しい 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。よって、Bが相続人なしに死亡した場合、Bと婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1月以内にAに反対の意思表示をしない限り、賃借人としてのBの権利義務を承継する。
定期建物賃貸借
23 AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の賃貸借契約において、甲建物が居住の用に供する建物である場合には、契約の更新がない旨を定めることはできない。
23 誤り 契約の更新がない旨を定めた建物賃貸借契約、いわゆる定期建物賃貸借は、居住用建物に限らず、非居住用建物についても締結することができる。
24 借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通の建物賃貸借契約契約の場合、書面で契約し、かつ、Aに相当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。
24 誤り 普通の建物賃貸借契約は、書面で契約をする必要はない。そして、建物の賃貸人による更新拒絶の通知は、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。ここより、普通の建物賃貸借契約は、書面で契約しなくても、Aに相当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。一方、定期建物賃貸借契は契約の更新がないこととする旨を定めた建物賃貸借であるが、公正証書による等書面によって契約をする必要がある。つまり、定期建物賃貸借契の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができる。
25 AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の賃貸借契約において、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。
25 誤り 契約の更新がない旨を定めた建物賃貸借契約、いわゆる定期建物賃貸借は、公正証書による等書面によって契約することを要するが、さらに賃貸人は、賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了することについて書面を交付して事前に説明しなければならない。よって、公正証書による等書面によって契約すれば足りるというものではない。
26 賃貸人Aと賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約において期間を定め、当該賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。
26 誤り 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。ここから、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していても、それが書面を交付しての説明でない限り、賃貸借契約は期間満了により更新され、終了しないことがある。よって、あらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了するとはいえない。
27 Aは、B所有の甲建物(床面積100㎡)につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。BはAに対して、当該賃貸借契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。
27 誤り 定期建物賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。この説明書面は、契約書とは別個独立の書面であることを要する(最判H24.9.13)。よって、賃貸借契約書を交付して説明しても、定期建物賃貸借契約として締結することはできない。
28 Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約で、期間を5年、契約の更新がない旨を定めた場合、Aは、期間満了の1年前から6月前までの間に、Bに対し賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、従前の契約と同一条件で契約を更新したものとみなされる。
28 誤り 定期建物賃貸借契約において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。つまり、通知をしなかった場合でも、期間満了により定期建物賃貸借は終了するが、この終了を賃借人に対抗することができないだけで、従前の契約と同一条件で契約を更新したものとみなされるのではない。
29 Aは、B所有の甲建物(床面積100㎡)につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。当該賃貸借契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約である場合、Aの中途解約を禁止する特約があっても、やむを得ない事情によって甲建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは、Aは本件契約の解約の申入れをすることができる。
29 正しい 定期建物賃貸借契約において、中途解約を禁止する特約も有効である。ただ、この特約があっても、居住の用に供する建物の賃貸借(床面積が200㎡未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。よって、Aの中途解約を禁止する特約があっても、やむを得ない事情によって甲建物を自己の生活の本拠として使用することが困難になったときは、Aは本件契約の解約の申入れをすることができる。
30 本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約である場合、Aは、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情があれば、Bに対し、解約を申し入れ、申入れの日から1月を経過することによって、本件契約を終了させることができる。
30 誤り 居住の用に供する建物の定期建物賃貸借(床面積が200㎡未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができ、申入れをすれば当該申入れの日から1月を経過することによって建物賃貸借は終了する。この解約の申入れは、建物の賃借人のみに認められるものであり、賃貸人には認められていない。よって、賃貸人であるAは、Bに対し、解約を申し入れることはできない。
31 本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
31 正しい 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。この借賃増減請求権は、定期建物賃貸借契約においても認められる。よって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
32 Aを賃貸人、Bを賃借人とする建物賃貸借契約において契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約を定めていても、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、当該賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約又は定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通の建物賃貸借契約契約のいずれの場合であっても、借地借家法第32条に基づく賃料減額請求をすることができる。
32 誤り 借地借家法32条は、建物賃貸借契約の当事者に借賃増減額請求権を認めるとともに、一定期間借賃を増額しない旨の特約のみを認めている。ここから、借地借家法32条は、一定期間借賃の減額請求をしない旨の特約を認めておらず、無効とするものといえる。ただ、定期建物賃貸において、借賃の改定に係る特約がある場合には、この借地借家法32条は適用されない。そこで、契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約、すなわち借賃の改定に係る特約を定めているとき、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、普通の建物賃貸借契約の場合には賃料減額請求をすることができるが、定期建物賃貸借契の場合には賃料減額請求をすることができない。