請 負
01 Aを注文者、Bを請負人として、A所有の建物に対して独立性を有さずその構成部分となる増築部分の工事請負契約を締結し、Bは3か月間で増築工事を終了させた。AがBに請負代金を支払っていなくても、Aは増築部分の所有権を取得する。
01 正しい 増築部分が既存物と別個独立の存在を有せず、その構成部分となっている場合には、増築部分は民法242条(不動産の付合)により既存建物の所有者の所有に帰属する(最判S38.5.31)。よって、Bが請負工事により完成させた増築部分は、それがA所有の建物に対して独立性を有さずその構成部分となるものであるときは、付合により建物の所有者であるAに帰属する。つまり、Aは、請負代金を支払っていなくても、Aは増築部分の所有権を取得する。
02 Aを注文者、Bを請負人とする請負契約の目的物たる建物の品質が建て替えざるを得ない程度に契約の内容に適合していないとき、AはBに対して契約を解除し、損害賠償を請求することができる。
02 正しい 仕事の目的物の品質に関し契約の内容に適合しないものがあり、それにつき注文者の責めに帰すべき事由がない場合、注文者は請負人に対して修補請求等の追完請求をすることができる。本肢は契約内容の不適合が建て替えざるを得ない程度であるところから、修補が不能な場合といえ、債務の一部の履行が不能であり、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときにあたる。この場合、注文者は、催告なしに契約の全部を解除することができる。そして、解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。よって、Aは、契約を解除し、損害賠償を請求することができる。
03 Aを注文者、Bを請負人として、A所有の建物に対して独立性を有さずその構成部分となる増築部分の工事請負契約を締結し、Bは3か月間で増築工事を終了させた。増築した部分にAが提供した材料の性質によって品質に関して契約の内容に適合しないものが生じ、Bが材料が不適当であることを知らずに工事を終了した場合、Aは提供した材料によって生じた契約不適合を理由とした修補を請求することはできない。
03 正しい 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したときは、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。ここより、Aが提供した材料の性質によって契約不適合が生じ、Bが材料が不適当であることを知らずに工事を終了した場合、Aは提供した材料によって生じた契約不適合を理由とした修補を請求することはできない。
04 Aを注文者、Bを請負人とする請負契約が、事務所の用に供するコンクリート造の建物の建築を目的とするもので、その品質が契約の内容に適合していないときであっても、Bがその契約不適合を知った時から10年以内にその旨を請負人に通知しないときは、Bは、その不適合を理由として、履行の追完の請求をすることができない。
04 誤り 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき、注文者がその契約不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。このことは、請負がコンクリート造の建物の建築を目的とするものであっても変わらない。よって、Bは、契約不適合を知った時から10年以内ではなく、1年以内に不適合をAに通知しないときは、履行の追完の請求をすることができない。
05 Aを注文者、Bを請負人として、A所有の建物に対して独立性を有さずその構成部分となる増築部分の工事請負契約を締結し、Bは3か月間で増築工事を終了させた。Bが材料を提供して増築した部分に品質に関して契約の内容に適合しないものがある場合、Aは工事が終了した日から1年以内にその旨をBに通知しなければ、契約不適合を理由とした修補をBに対して請求することはできない。
05 誤り 注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ここより、Aは、工事が終了した日から1年以内にその旨をBに通知しなければ、修補をBに対して請求することはできないというものではない。
06 Aを注文者、Bを請負人として、A所有の建物に対して独立性を有さずその構成部分となる増築部分の工事請負契約を締結し、Bは3か月間で増築工事を終了させた。Bが材料を提供して増築した部分に品質に関して契約の内容に適合しないものがあり、Bは契約不適合があることを知りながらそのことをAに告げずに工事を終了し、Aが工事終了日から3年後に契約不適合を知った場合、AはBに対して、消滅時効が完成するまでは契約不適合を理由とした修補を請求することができる。
06 正しい 注文者がその不適合を知った時から1年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただ、仕事の目的物を注文者に引き渡した時において、請負人が不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。ここより、Bが契約不適合を知りながらそのことをAに告げずに工事を終了したとき、Aは、契約不適合を知った時から1年以内に不適合をBに通知しなかった場合でも、契約不適合を理由とした修補を請求することができる。ただ、この修補請求権も一般の消滅時効の適用があるところから、Aが不適合を理由とした修補を請求することができるのは、修補請求権の消滅時効が完成するまでということになる。
07 Aを注文者、Bを請負人とする請負契約において、Bが仕事を完成しない間は、AはいつでもBに対して損害を賠償して本件契約を解除することができる。
07 正しい 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
委 任
08 委任は、当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じない。
08 誤り 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。当事者の一方が仕事を完成することを相手方に約し、相手方がその仕事の結果に対しその報酬を支払うことを約さなければ、その効力を生じないのは、請負である。
09 AB間の委任契約において、受任者Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。
09 誤り 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。よって、Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意ではなく、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理しなければならない。
10 売主が、売買契約の付随義務として、買主に対して、マンション専有部分以外の防火戸の操作方法につき説明義務を負う場合、業務において密接な関係にある売主から委託を受け、売主と一体となって当該マンションの販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者も、買主に対して、防火戸の操作方法について説明する信義則上の義務を負うことがある。
10 正しい 防火設備の一つとして重要な役割を果たし得る防火戸が室内に設置されたマンションの専有部分の販売に際し,防火戸の電源スイッチが一見してそれとは分かりにくい場所に設置され、それが切られた状態で専有部分の引渡しがされた場合において、宅建業者が,購入希望者に対する勧誘、説明等から引渡しに至るまで販売に関する一切の事務について売主から委託を受け、売主と一体となって同事務を行っていたこと、買主は、上記業者を信頼して売買契約を締結し、上記業者から専有部分の引渡しを受けたことなどの事情においては、上記業者には、買主に対し、防火戸の電源スイッチの位置、操作方法等について説明すべき信義則上の義務がある(最判H17.9.16)。
11 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
11 正しい 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
12 AB間の報酬を支払う旨の合意がある委任契約において、受任者Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。
12 誤り 受任者は、委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき、又は委任が履行の中途で終了したとき、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。ここにいう委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったときに、受任者の責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合が含まれる。また、委任が履行の中途で終了したときには、受任者の責めに帰すべき事由によって委任契約が解除されたような場合を含む。以上より、受任者の責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合であっても、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。よって、Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができないとはいえない。
13 AB間の報酬を支払う旨の合意がある委任契約において、Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
13 正しい 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。よって、Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で委任が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができる。ただ、Bは、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
14 委任によって代理権を授与された者は、報酬を受ける約束をしている場合であっても、いつでも委任契約を解除して代理権を消滅させて、代理人を辞することができる。
14 正しい 委任による代理権は、委任の終了によって消滅する。委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。よって、委任によって代理権を授与された者は、報酬を受ける約束をしている場合であっても、いつでも委任契約を解除して代理権を消滅させて、代理人を辞することができる。
15 個人として事業を営むAが死亡した。AがBとの間でB所有建物の清掃に関する準委任契約を締結していた場合、Aの相続人は、Bとの間で特段の合意をしなくても、当該準委任契約に基づく清掃業務を行う義務を負う。
15 誤り 準委任契約は、受任者の死亡によって終了する。よって、Aが死亡すれば、AB間の準委任契約は終了し、Aの相続人は、受任者の地位を引き継がず、清掃業務を行う義務を負わない。
16 AB間の委任契約において、受任者Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。
16 誤り 受任者が死亡すれば、委任は終了する。ここより、Bが死亡した場合、委任は終了する。委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者の相続人は、委任者等が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない。よって、Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情があるときに限り委任事務を処理しなければならないのであり、急迫の事情の有無にかかわらず委任事務を処理しなければならないというものではない。
不法行為一般
17 責任能力がない認知症患者が線路内に立ち入り、列車に衝突して旅客鉄道事業者に損害を与えた場合、当該責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を負う。
17 誤り 責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。精神障害者と同居する配偶者は、監督義務を引き受けたとみるべき特段の事情が認められる場合には,法定の監督義務者に準ずべき者に該当することがあるが、同居する配偶者であるからといって,その者が責任無能力者を監督する法定の義務を負う者に当たるとすることはできない(最判H28.3.1)。よって、責任無能力者と同居する配偶者は、法定の監督義務者として損害賠償責任を負うとはいえない。
18 建物の建築に携わる設計者や施工者は、建物としての基本的な安全性が欠ける建物を設計し又は建築した場合、設計契約や建築請負契約の当事者に対しても、また、契約関係にない当該建物の居住者に対しても損害賠償責任を負うことがある。
18 正しい 建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者は、建物の建築に当たり、契約関係にない居住者を含む建物利用者、隣人、通行人等に対する関係でも、当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い、これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体又は財産が侵害された場合には、設計者等は、不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う(最判H19.7.6)。
19 第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても 、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。
19 誤り 債権もまた対世的な権利不可侵の効力を持ち、その債務の全部又は一部の履行を不能ならしめた行為は、不法行為となる(大判T4.3.10)。そして、行為者を教唆した者は、共同行為者とみなして不法行為責任を負う。よって、第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとき 、当該第三者は、当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負う。
20 名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。
20 正しい 名誉も、法律上保護されるべき利益であり、これを侵害すれば、不法行為となる。そして、名誉を毀損された被害者は、加害者対し、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることを裁判所に請求することができる。また、名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、侵害行為の差止めを求めることができる(最判S61.6.11)。
21 放火によって家屋が減失し、火災保険契約の被保険者である家屋所有者が当該保険契約に基づく保険金請求権を取得した場合、当該家屋所有者は、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、いわゆる損益相殺として控除しなければならない。
21 誤り 加害行為により被害者が不利益を受けると同時に利益を受けた場合、不利益から利益分を控除した残額が賠償を要する損害となる(損益相殺)。家屋焼失による損害につき火災保険契約に基づいて被保険者たる家屋所有者に給付される保険金は、既に払い込んだ保険料の対価たる性質を有し、たまたまその損害について第三者が所有者に対し不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償義務を負う場合においても、右損害賠償額の算定に際し、損益相殺として控除されるべき利益にはあたらない(最判S50.1.31)。よって、加害者に対する損害賠償請求金額からこの保険金額を、損益相殺として控除する必要はない。
22 被害者は、不法行為によって損害を受けると同時に、同一の原因によって損害と同質性のある利益を既に受けた場合でも、その額を加害者の賠償すべき損害額から控除されることはない。
22 誤り 不法行為と同一の原因によって被害者が第三者に対して損害と同質性を有する利益を内容とする債権を取得し、当該債権が現実に履行されたときは、これを加害者の賠償すべき損害額から控除すべきである(最判H5.3.24)。
23 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しない場合、時効によって消滅する。
23 正しい 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには、時効によって消滅する。
24 Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。
24 正しい 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは時効によって消滅するが、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権については、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときは時効によって消滅する。よって、BのAに対するケガに係る損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害及び加害者を知った時から5年間行使しないときには時効により消滅する。
25 Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。本件事故について、AのBに対する不法行為責任が成立する場合、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、本件事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。
25 正しい 不法行為による損害賠償の請求権は、不法行為の時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する。よって、BのAに対する損害賠償請求権は、B又はBの法定代理人が損害又は加害者を知らないときでも、事故の時から20年間行使しないときには時効により消滅する。
26 不法行為の加害者は、不法行為に基づく損害賠償債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
26 誤り 不法行為に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であるが、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る(最判S37.9.4)。よって、不法行為の加害者は、不法行為に基づく損害賠償債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うものではない。
27 名誉を違法に侵害された者は、損害賠償又は名誉回復のための処分を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し侵害行為の差止めを求めることができる。
27 正しい 名誉も、法律上保護されるべき利益であり、これを侵害すれば、不法行為となる。そして、名誉を毀損された被害者は、加害者対し、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることを裁判所に請求することができる。また、名誉を違法に侵害された者は、人格権としての名誉権に基づき、侵害行為の差止めを求めることができる(最判S61.6.11)。
使用者責任
28 被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を与え、第三者に対してその損害を賠償した場合には、被用者は、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について、使用者に対して求償することができる。
28 正しい 被用者が使用者の事業の執行について第三者に損害を加え,その損害を賠償した場合には,被用者は,使用者の事業の性格,規模,施設の状況,被用者の業務の内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,加害行為の予防又は損失の分散についての使用者の配慮の程度その他諸般の事情に照らし,損害の公平な分担という見地から相当と認められる額について,使用者に対して求償することができる(最判R2.2.28)。
土地工作物責任
29 Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。Aが甲建物をCから賃借している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしなかったとしても、Bに対して不法行為責任を負わない。
29 誤り 土地の工作物の保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。Aは、甲建物の占有者にあたる。よって、Aは、甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしなかったときは、Bに対して不法行為責任を負う。
30 Aが1人で居住する甲建物の保存に瑕疵があったため、甲建物の壁が崩れて通行人Bがケガをした。Aが甲建物を所有している場合、Aは甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしたとしても、Bに対して不法行為責任を負う。
30 正しい 土地の工作物の保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。ここから、Aは、甲建物の所有者として、甲建物の保存の瑕疵による損害の発生の防止に必要な注意をしたとしても、Bに対して不法行為責任を負う。
共同不法行為
31 第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとしても 、当該第三者が当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負うことはない。
31 誤り 債権もまた対世的な権利不可侵の効力を持ち、その債務の全部又は一部の履行を不能ならしめた行為は、不法行為となる(大判T4.3.10)。そして、行為者を教唆した者は、共同行為者とみなして不法行為責任を負う。よって、第三者が債務者を教唆して、その債務の全部又は一部の履行を不能にさせたとき 、当該第三者は、当該債務の債権者に対して、不法行為責任を負う。