民法07/債権各論2(44肢)

使用貸借

01 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、Aは、甲土地をBに引き渡す前であれば、①では口頭での契約の場合に限り自由に解除できるのに対し、②では書面で契約を締結している場合も自由に解除できる。

01 誤り 賃貸借契約で期間を定めた場合、当事者は、解約をする権利を留保していない限り、自由に解除することはできない。よって、①において、Aは、口頭で契約した場合であっても、甲土地をBに引き渡す前に自由に解除できるというものではない。使用貸借においては、期間を定めた場合であっても、貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。よって、②において、書面で契約を締結している場合であれば、Aは、賃貸目的物の引渡し前であっても、自由に解除できるものではない。


02 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。

02 誤り 使用貸借の借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。よって、②において、Bは、Aの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができるというものではない。賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができないところから、①において、Bは、Aの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできない点は、正しい。


03 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、甲土地について契約の本旨に反するBの使用によって生じた損害がある場合に、Aが損害賠償を請求するときは、①では甲土地の返還を受けた時から5年以内に請求しなければならないのに対し、②では甲土地の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

03 誤り 賃貸借と使用貸借のどちらにおいても、借主の契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償の請求は、賃貸人又は貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。よって、①において、Aが損害賠償を請求するときは、甲土地の返還を受けた時から5年以内に請求しなければならないというものではない。②において、Aが甲土地の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない点は、正しい。


04 個人として事業を営むAが死亡した。AがE所有の建物について貸主Eとの間で使用貸借契約を締結していた場合、Aの相続人は、Eとの間で特段の合意をしなくても、当該使用貸借契約の借主の地位を相続して当該建物を使用することができる。

04 誤り 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。よって、Aが死亡すれば、AE間の使用貸借は終了し、Aの相続人は、Eとの間で特段の合意がない限り、借主の地位を相続せず、当該建物を使用することはできない。


05 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、Bは、①では期間内に解除する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。

05 正しい 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。よって、①において、Bは、期間内に解除する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができる。使用貸借の借主は、いつでも契約の解除をすることができる。よって、②では、Bは、期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。

賃貸借の期間

06 甲土地につき、期間を60年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース①、期間を15年と定めて賃貸借契約を締結しようとする場合をケース②とするとき、賃貸借契約が建物を所有する目的ではなく、資材置場とする目的である場合、ケース①は期間の定めのない契約になり、ケース②では期間は15年となる。

06 誤り 借地借家法は、建物の所有を目的とする土地賃貸借を対象とするところから、資材置場とする目的の賃貸借であれば、借地借家法の借地権にあたらず、民法の適用があるのみである。民法上、賃貸借の存続期間は、50年を超えることができず、契約でこれより長い期間を定めたときでは、その期間は50年となる。よって、15年と定めたケース②では期間は15年となる。一方、60年と定めたケース①では50年の賃貸借となり、期間の定めのない契約になるものではない。

不動産賃貸人の地位の移転

07 AがBに賃貸し、引き渡している甲建物をCに売却した場合、Bは、それまでに契約期間中の賃料全額をAに前払いしていたことを、Cに対抗することができる。

07 正しい 借地借家法の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。借地借家法は、建物賃貸借の対抗要件として、建物の引渡しを規定する。Bは、甲建物の引渡しを受けており、借地借家法の対抗要件を備えている。よって、甲建物がCに譲渡されたとき、Cは賃貸人の地位を承継する。ここから、Cは、契約期間中の賃料全額の前払いを受けていたAの地位を承継する。Bは、契約期間中の賃料全額をAに前払いしていたことを、Cに対抗することができる。


08 AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。

08 正しい 不動産の賃貸借で対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、特段の合意をしない限り、その譲受人に移転する。建物の引渡しは、建物賃貸借の対抗要件である。Bは甲建物の引渡しを受けており、建物賃貸借の対抗要件を備えている。よって、AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。


09 建物の賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。

09 正しい 建物賃借権が建物の引渡しにより賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その建物が譲渡されたときは、その建物の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。ただ、建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその建物を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。


10 Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約において、甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。

10 正しい 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき、敷金を受け取っている賃貸人は、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。よって、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。

賃借権に基づく妨害停止請求等

11 AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した場合において、甲建物をDが不法占拠しているとき、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をDに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。

11 誤り 不動産に関する物権の得喪は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。不法占拠者は、ここにいう第三者にあたらない(最判S25.12.19)。よって、①において、Bは、甲建物の所有権移転登記を備えていなくても、甲建物の所有権の取得をDに対抗することができる。また、不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求をすることができる。つまり、②において、Bは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。


12 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、Dが甲土地を不法占拠してAの土地利用を妨害している場合、①では、Aは当該権原に基づく妨害排除請求権を行使してDの妨害の排除を求めることができるが、②では、AのDの妨害の排除を求めることはできない。

12 誤り 不動産の賃借人は、賃借権の対抗要件を備えた場合において、その不動産の占有を第三者が妨害しているとき、その第三者に対する妨害の停止の請求をすることができる。よって、②賃借権である場合では、AのDの妨害の排除を求めることはできないとはいえない。①地上権の場合は、地上権が物権であり物権的請求権としての妨害排除請求権が認められるところから、Aは当該権原に基づく妨害排除請求権を行使してDの妨害の排除を求めることができる点は、正しい。

賃貸物の修繕

13 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、①でも②でも、特約がなくても、BはAに対して、甲土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

13 誤り ①地上権である場合、地上権設定者Bに土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務はない。②賃借権である場合に、賃貸人Bが土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う点は、正しい。


14 Aを貸主、Bを借主とする甲建物の賃貸借契約において、Bの責めに帰すべき事由によって甲建物の修繕が必要となった場合は、Aは甲建物を修繕する義務を負わない。

14 正しい 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。ここより、Bの責めに帰すべき事由によって甲建物の修繕が必要となった場合は、Aは甲建物を修繕する義務を負わない。


15 Aを貸主、Bを借主とする甲建物の賃貸借契約において、甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。

15 正しい 賃借物の修繕が必要である場合において、賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人は、その修繕をすることができる。ここより、甲建物の修繕が必要であることを、Aが知ったにもかかわらず、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。


16 Aを貸主、Bを借主とする甲建物の賃貸借契約において、甲建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、Aが必要な修繕を直ちにしないときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。

16 誤り 賃借物の修繕が必要である場合において、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人は、その修繕をすることができる。ここより、BがAに修繕が必要である旨を通知し、Aが相当の期間内に必要な修繕をしないときにBは甲建物の修繕をすることができるのであり、Aが必要な修繕を直ちにしなければ、Bは修繕をすることができるというものではない。


17 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約が締結された。当該建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。

17 正しい 賃借物の修繕が必要である場合において、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときは、賃借人は、その修繕をすることができる。よって、建物の修繕が必要である場合において、BがAに修繕が必要である旨を通知したにもかかわらずAが相当の期間内に必要な修繕をしないときは、Bは自ら修繕をすることができる。


18 Aを貸主、Bを借主とする甲建物の賃貸借契約において、甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。

18 正しい 賃借物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。ここより、甲建物の修繕が必要である場合において、急迫の事情があるときは、Bは甲建物の修繕をすることができる。

賃借物の返還

19 建物の賃貸借契約が期間満了により終了したとき、賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷があれば、通常の使用及び収益によって生じた損耗も含めてその損傷を原状に復する義務を負う。

19 誤り 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ここより、通常の使用及び収益によって生じた損耗については、原状に復する義務を負わない。

賃目貸的物の損傷・滅失

20 AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した場合において、①と②の契約締結後、甲建物の引渡し前に、甲建物がEの放火で全焼したとき、①ではBはAに対する売買代金の支払を拒むことができ、②ではBとAとの間の賃貸借契約は経了する。

20 正しい 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。①において、甲建物がEの放火で全焼したことは、当事者双方の責めに帰することができない事由によって売主であるAが債務を履行することができなくなった場合にあたる。よって、債権者であるBは、反対債務、すなわち代金の支払を拒むことができる。賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。ここより、②において、甲建物がEの放火で全焼し、Bにおいて甲建物の使用及び収益をすることができなくなった場合には、BとAとの間の賃貸借契約は終了する。

損害賠償請求権・費用償還請求権についての期間の制限

21 AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。Cの用法違反によって甲建物に生じた損害についてAがBに損害賠償を請求する場合、Aは、甲建物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

21 正しい 賃借人Bは、賃借物を返還するまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良なる管理者の注意をもって賃借物を保管する義務を負い、また契約終了時に賃借物を賃貸人に返還する義務を負う。ここから、転借人Cの用法違反による甲建物に生じた損害について、AはBに対し保管義務又は返還義務の不履行として損害賠償を請求することができる場合がある。ただ、賃貸人の賃借人に対する損害賠償請求は、賃貸物の返還を受けた時から1年以内にする必要があるところから、AがBに損害賠償を請求する場合、Aは、甲建物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。


22 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、甲土地について契約の本旨に反するBの使用によって生じた損害がある場合に、Aが損害賠償を請求するときは、①では甲土地の返還を受けた時から5年以内に請求しなければならないのに対し、②では甲土地の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

22 誤り 賃貸借と使用貸借のどちらにおいても、借主の契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償の請求は、賃貸人又は貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。よって、①において、Aが損害賠償を請求するときは、甲土地の返還を受けた時から5年以内に請求しなければならないというものではない。②において、Aが甲土地の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない点は、正しい。

転貸・賃借権譲渡

23 Aが、甲土地を囲んでいる土地の一部である乙土地を公道に出るための通路にする目的で賃借した後、甲土地をBに売却した場合には、乙土地の賃借権は甲土地の所有権に従たるものとして甲土地の所有権とともにBに移転する。

23 誤り 通行地役権であれば、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転するが、通行のための賃借権にはこうした取扱いはない。よって、甲土地をBに売却しても、それだけで乙土地の賃借権はBに移転しない。


24 AがBに対してA所有の甲建物を令和3年7月1日に①売却又は②賃貸した場合において、①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。

24 正しい ①の売買契約においては、買主は所有権を取得する。所有者は、自由に所有物を使用又は収益することができる。ここから、①において、Bは、所有権を取得した甲建物をAの承諾を得ずにCに賃貸することができる。②の賃貸借契約において、Bは賃借人となる。賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。ここから、②において、Bは、Aの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。


25 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。

25 誤り 使用貸借の借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。よって、②において、Bは、Aの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができるというものではない。賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができないところから、①において、Bは、Aの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできない点は、正しい。


26 賃借人が賃貸借契約の目的物を第三者に転貸する場合、賃貸人の承諾は不要である。

26 誤り 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借物を転貸することができない。


27 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、CがBに無断でAから当該権原を譲り受け、甲土地を使用しているときは、①でも②でも、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる。

27 誤り 地上権者は、地上権設定者の承諾なしに地上権を譲渡することができる。よって、①地上権である場合、Bに無断であっても、CはAから地上権を取得しており、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することはできない。賃借権の譲渡を承諾しない賃貸人は、賃借契約を解除しなくても、譲受人に対し賃貸目的物の返還を求めることができる(最判S26.5.31)。よって、①賃借権である場合にBはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる点は、正しい。


28 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約が締結された。BがAに無断でCに当該建物を転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。

28 正しい 賃借人が無断転貸により第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。ただし、無断転貸が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、賃貸人は解除できない (最判S28.9.25)。よって、BがAに無断でCに転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。


29 AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。

29 正しい 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。Bは、賃借人として、Aに対し賃料支払債務を負うところから、この賃料支払債務を転借人Cも負うことになる。よって、BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。


30 賃貸人Aと賃借人Bとの間で締結した一時使用目的ではない建物賃貸借契約にあって建物の転貸借がされている場合において、本件契約がB(転貸人)の債務不履行によって解除されて終了するときは、Aが転借人に本件契約の終了を通知しなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。

30 誤り 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了によって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。しかし、賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除され終了するときは、賃貸人から転借人にその旨の通知がなくても、転借人は転借権を賃貸人に主張できない(最判S36.12.21)。


31 AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。

31 誤り 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。よって、Bとの賃貸借契約を合意解除したAは、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していれば、合意解除したことをもってCに対抗することができる。


32 賃貸人Aと賃借人Bとの間で締結した一時使用目的ではない建物賃貸借契約にあって建物の転貸借がされている場合において、本件契約がB(転貸人)の債務不履行によって解除されて終了するときは、Aが転借人に本件契約の終了を通知しなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。

32 誤り 建物の転貸借がされている場合において、建物の賃貸借が期間の満了によって終了するときは、建物の賃貸人は、建物の転借人にその旨の通知をしなければ、その終了を建物の転借人に対抗することができない。しかし、賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除され終了するときは、賃貸人から転借人にその旨の通知がなくても、転借人は転借権を賃貸人に主張できない(最判S36.12.21)。

賃貸借の終了

33 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、Aは、甲土地をBに引き渡す前であれば、①では口頭での契約の場合に限り自由に解除できるのに対し、②では書面で契約を締結している場合も自由に解除できる。

33 誤り 賃貸借契約で期間を定めた場合、当事者は、解約をする権利を留保していない限り、自由に解除することはできない。よって、①において、Aは、口頭で契約した場合であっても、甲土地をBに引き渡す前に自由に解除できるというものではない。使用貸借においては、期間を定めた場合であっても、貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。よって、②において、書面で契約を締結している場合であれば、Aは、賃貸目的物の引渡し前であっても、自由に解除できるものではない。


34 Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関して、Bは、①では期間内に解除する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。

34 正しい 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。よって、①において、Bは、期間内に解除する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができる。使用貸借の借主は、いつでも契約の解除をすることができる。よって、②では、Bは、期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。


35 AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した場合において、①と②の契約が解除されたとき、①ではBは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要があるのに対し、②では将来に向かって解除の効力が生じるのでAは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。

35 正しい 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。このとき、目的物の引渡を受けていた買主は、原状回復義務に基づく一種の不当利得返還義務として、解除までの間目的物を使用収益して得た利益を売主に償還すべき義務を負う(最判S34.9.22)。ここから、①において売買契約が解除された場合、Bは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要がある。一方、②の賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。そこで、解除までに生じた効果は、解除によって失効しない。ここから、②において、Aが解除までの期間に収受した賃料は有効な賃貸借の効果に基づくものであり、解除しても、Bに返還する必要はない。


36 個人として事業を営むAが死亡した。AがA所有の建物について賃借人Cとの間で賃貸借契約を締結している期間中にAが死亡した場合、Aの相続人は、Cに賃貸借契約を継続するか否かを相当の期間を定めて催告し、期間内に返答がなければ賃貸借契約をAの死亡を理由に解除することができる。

36 誤り 賃貸借契約は、賃貸人の死亡によっては終了せず、賃貸人の相続人は賃貸人の地位を引き継ぐ。このとき、相当の期間を定めて催告し、期間内に返答がなければ賃貸借契約を解除することができるといった取扱いはない。よって、Aの相続人は、催告により賃貸者悪契約を解除することはできない。


37 Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた。AとBのいずれもが死亡した場合、当該賃貸借契約は当然に終了する。

37 誤り 賃貸借契約の当事者が死亡しても、賃貸借契約は終了せず、当該契約に基づく権利及び義務は、相続の対象となる。よって、AとBのいずれもが死亡した場合、賃貸借契約は当然に終了するものではない。

敷 金

38 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、1個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものといえる。

38 誤り 敷金契約は、賃貸人が賃借人に対して取得することのある債権を担保するために締結されるものであって、賃貸借契約に附随するものではあるが、賃貸借契約そのものではないから、賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、一個の双務契約によって生じた対価的債務の関係にあるものとすることはできない(最判S49.9.2)。


39 賃貸借における敷金は、賃貸借の終了時点までに生じた債権を担保するものであって、賃貸人は、賃貸借終了後賃借人の家屋の明渡しまでに生じた債権を敷金から控除することはできない。

39 誤り 賃貸借における敷金は、賃貸借の終了後家屋明渡義務の履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することのある一切の債権を担保するものであり、賃貸人は、賃貸借の終了後家屋の明渡がされた時においてそれまでに生じた右被担保債権を控除してなお残額がある場合に、その残額につき返還義務を負担するものと解すべきものである(最判S48.2.2/最判S49.9.2)。よって、賃貸人は、賃貸借終了後賃借人の家屋の明渡しまでに生じた債権を敷金から控除することができる。


40 建物の賃貸借契約が期間満了により終了したとき、賃借人から敷金の返還請求を受けた賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、これを拒むことができる。

40 正しい 賃貸人は、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに敷金を返還しなければならない。つまり、目的物返還と敷金返還とは同時履行の関係になく、目的物返還が先履行の関係にある。よって、賃貸人は、賃貸物の返還を受けるまでは、敷金の返還を拒むことができる。


41 家屋明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にたつものではないと解するのが相当であり、このことは、賃貸借の終了原因が解除(解約)による場合であっても異なるところはないと解すべきである。

41 正しい 家屋明渡債務と敷金返還債務とは、家屋明渡債務が先履行の関係にあり、同時履行の関係に立たない。このことは、賃貸借の終了原因が解除(解約)による場合であっても異なるところはない(最判S49.9.2)。


42 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡しまでに賃貸人が取得する一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質にも適合する。

42 誤り 賃貸借の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務の間に同時履行の関係を肯定することは、家屋の明渡までに賃貸人が取得することのある一切の債権を担保することを目的とする敷金の性質に適合するとはいえない(最判S49.9.2)。


43 Aは、B所有の甲建物(床面積100㎡)につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。AがBに対して敷金を差し入れている場合、当該賃貸借契約が期間満了で終了するに当たり、Bは甲建物の返還を受けるまでは、Aに対して敷金を返還する必要はない。

43 正しい 賃貸人は、敷金を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたときに、敷金を賃借人に返還しなければならない。よって、Bは甲建物の返還を受けるまでは、Aに対して敷金を返還する必要はない。


44 賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はない。

44 正しい 賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合にあっては、賃借人は賃貸人に対し敷金返還 請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はないというべきである(最判S49.9.2)。

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