民法05/債権総論(45肢)

法定利率

01 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約において、Bが売買契約で定めた売買代金の支払期日である令和7年3月1日までに代金を支払わなかった場合、売買契約に利率等について特段の定めがない限り、AはBに対して、年5%の割合による遅延損害金を請求することができる。

01 誤り Bが売買代金の支払期日までに代金を支払わなかったことは、金銭の給付を目的とする債務の不履行にあたる。この場合、約定利率の定めがないときの損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。令和5年4月1日から令和8年3月31日までの法定利率は、年3%である。よって、Aは、売買契約に特段の定めがない限り、年5%ではなく、年3%の割合による遅延損害金を請求することができる。

選択債権

02 AとBとの間で、Aを売主、Bを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについての選択権に関する特段の合意がない場合、Bが選択権者となる。

02 誤り 債権の目的が数個の給付の中から選択によって定まるときは、その選択権は、債務者に属する。よって、選択権に関する特段の合意がない場合、債務者であるAが選択権者となる。


03 AとBとの間で、Aを売主、Bを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについて、第三者Dを選択権者とする合意がなされた場合、Dが選択権を行使するときは、AとBの両者に対して意思表示をしなければならない。

03 誤り 第三者が選択をすべき場合には、その選択は、債権者又は債務者に対する意思表示によってする。よって、第三者Dが選択権を行使するときは、A又はBのいずれかに対し意思表示をすれば足り、AとBの両者に対して意思表示をする必要はない。


04 AとBとの間で、Aを売主、Bを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについて、第三者Cを選択権者とする合意がなされた場合、Cが選択をすることができないときは、選択権はBに移転する。

04 誤り 第三者が選択をすべき場合において、第三者が選択をすることができないときは、選択権は、債務者に移転する。よって、第三者Cが選択をすることができないときは、選択権は債務者であるAに移転する。


05 AとBとの間で、Aを売主、Bを買主とする、等価値の美術品甲又は乙のいずれか選択によって定められる美術品の売買契約が締結された。本件契約において、給付の目的を甲にするか乙にするかについて、Aを選択権者とする合意がなされた後に、Aの失火により甲が全焼したときは、給付の目的物は乙となる。

05 正しい 債権の目的である給付の中に不能のものがある場合において、その不能が選択権を有する者の過失によるものであるときは、債権は、その残存するものについて存在する。よって、選択権者であるAの失火により甲が全焼したときは、給付の目的物は乙となる。

受領遅滞

06 債務の目的が特定物の引渡しである場合、債権者が目的物の引渡しを受けることを理由なく拒否したため、その後の履行の費用が増加したときは、その増加額について、債権者と債務者はそれぞれ半額ずつ負担しなければならない。

06 誤り 債権者が債務の履行を受けることを拒んだことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。債権者と債務者はそれぞれ半額ずつ負担するわけではない。

履行遅滞の時期

07 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限が到来したことを知らなくても、期限到来後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

07 正しい 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。よって、債務者は、期限来を知らなくても、期限到来後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。


08 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来したことを知った後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

08 誤り 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う。債務者が期限の到来したことを知った後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うというものではない。


09 善意の受益者は、その不当利得返還債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

09 正しい 善意の不当利得者の返還義務は期限の定めのない債務であり、債務者は催告、つまり履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う(大判S2.12.26)。


10 不法行為の加害者は、不法行為に基づく損害賠償債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

10 誤り 不法行為に基づく損害賠償債務は期限の定めのない債務であるが、なんらの催告を要することなく、損害の発生と同時に遅滞に陥る(最判S37.9.4)。よって、不法行為の加害者は、不法行為に基づく損害賠償債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負うものではない。

履行不能

11 個人として事業を営むAが死亡した。AがA所有の土地について買主Dとの間で売買契約を締結し、当該土地の引渡しと残代金決済の前にAが死亡した場合、当該売買契約は原始的に履行が不能となって無効となる。

11 誤り 売主が死亡しても、売主の相続人が売主の債務を引き継ぐところから、売買契約は原始的に履行不能とはならない。

債務不履行損害賠償請求

12 契約に基づく債務の履行が契約の成立時に不能であったとしても、その不能が債務者の責めに帰することができない事由によるものでない限り、債権者は、履行不能によって生じた損害について、債務不履行による損害の賠償を請求することができる。

12 正しい 債務の履行が不能であるときは、債権者は、その不能が債務者の責めに帰することができない事由によるものでない限り、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であった場合も同様であり、当該不能が債務者の責めに帰することができない事由によるものでない限り、債権者は、履行不能によって生じた損害について、債務不履行による損害の賠償を請求することができる。


13 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約において、AがBに甲土地の引渡しをすることができなかった場合、その不履行がAの責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、BはAに対して、損害賠償の請求をすることができる。

13 正しい 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。Aが甲土地の引渡しをすることができなかったことは、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときにあたる。よって、その不履行がAの責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、BはAに対して、損害賠償の請求をすることができる。


14 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に、当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる。

14 正しい 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。


15 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約において、Bが売買契約で定めた売買代金の支払期日までに代金を支払わなかった場合、売買契約に特段の定めがない限り、AはBに対して、年5%の割合による遅延損害金を請求することができる。

15 誤り Bが売買代金の支払期日までに代金を支払わなかったことは、金銭の給付を目的とする債務の不履行にあたる。この場合の損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。法定利率は、改正当初は年3%であるが、変動する。いずれにせよ、Aは、売買契約に特段の定めがない限り、年5%の割合による遅延損害金を請求することができるというものではない。

弁 済

16 Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。

16 正しい 弁済受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして弁済受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。ここにいう弁済受領権者としての外観を有するものに債権者の代理人と称して債権を行使する者も該当する(最判S37.8.21)。よって、Bが、Aの代理人と称するDに対して弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。


17 Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。Bが、Aの相続人と称するEに対して本件代金債務を弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。

17 正しい 弁済受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして弁済受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する。ここにいう債権の準占有者に表見相続人(外観上は相続人であるが、真実の相続人ではない者)も該当する(大判T10.5.30)。よって、Aの相続人と称するEに対して弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。


18 Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。Bが、本件代金債務につき受領権限のないCに対して弁済した場合、Cに受領権限がないことを知らないことにつきBに過失があれば、Cが受領した代金をAに引き渡したとしても、Bの弁済は有効にならない。

18 誤り 弁済受領権者以外の者への弁済は有効な弁済とならないのが原則である。ただ、弁済受領権者以外の者に対してした弁済であっても、債権者がこれによって利益を受けた限度においては、その効力を有する。よって、弁済受領権限のないCへの弁済であっても、Cが受領した代金をAに引き渡せば、Aは利益を受けることになり、Bの弁済は有効となる。

相 殺

19 Aが債権者でBが債務者である貸金債権甲とBが債権者でAが債務者である貸金債権乙があるとき、債権乙の弁済期が到来していれば、債権甲の弁済期が到来していなくても、Aは一方的な意思表示により債権甲と債権乙とを対当額にて相殺することができる。

19 誤り 相殺するには、両債権が弁済期にあることが必要である。よって、受働債権とする債権の弁済期が到来していても、自働債権とする債権の弁済期が到来していなければ、相殺することはできない。ここより、Aは、弁済期が到来していない甲債権を自働債権とし、弁済期が到来している乙債権を受働債権として相殺することはできない。


20 Aが債権者でBが債務者である弁済期の定めのない貸金債権甲とBが債権者でAが債務者である貸金債権乙があるとき、貸金債権乙の弁済期が到来前であっても、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をしていれば、Aは一方的な意思表示により債権甲と債権乙とを対当額にて相殺することができる。

20 正しい 相殺するには、両債権が弁済期にあることが必要である。ただ、弁済期の定めのない債権は、催告により相手方を履行遅滞に陥れることなく、自働債権とすることができ(最判S17.11.19)、弁済期が到来していない債権は、期限の利益を放棄することができるものであれば、期限の利益の放棄をなし、弁済期を到来させることで受働債権とすることができる(最判H25.2.28)。ここよりAは、弁済期の定めのない債権甲を自働債権とし、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をした債権乙を受働債権として相殺することができる。


21 Aが債権者でBが債務者である弁済期の定めのない貸金債権甲とBが債権者でAが債務者である貸金債権乙があるとき、貸金債権乙の弁済期が到来前であっても、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をしていれば、Aは一方的な意思表示により債権甲と債権乙とを対当額にて相殺することができる。

21 正しい 相殺するには、両債権が弁済期にあることが必要である。ただ、弁済期の定めのない債権は、催告により相手方を履行遅滞に陥れることなく、自働債権とすることができ(最判S17.11.19)、弁済期が到来していない債権は、期限の利益を放棄することができるものであれば、期限の利益の放棄をなし、弁済期を到来させることで受働債権とすることができる(最判H25.2.28)。ここよりAは、弁済期の定めのない債権甲を自働債権とし、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をした債権乙を受働債権として相殺することができる。


22 Aが債権者でBが債務者である弁済期の定めのない貸金債権甲とBが債権者でAが債務者である弁済期が到来している貸金債権乙があるとき、Aは一方的な意思表示により債権甲と債権乙とを対当額にて相殺することができる。

22 正しい 相殺するには、両債権が弁済期にあることが必要である。ただ、弁済期の定めのない債権は、催告により相手方を履行遅滞に陥れることなく、自働債権とすることができる(最判S17.11.19)。よって、Aは、弁済期の定めのない甲債権を自働債権とし、弁済期が到来している乙債権を受働債権として相殺することができる。


23 Aが債権者でBが債務者である貸金債権甲とBが債権者でAが債務者である弁済期の定めのない貸金債権乙があるとき、債権甲の弁済期が到来すれば、Aは一方的な意思表示により債権甲と債権乙とを対当額にて相殺することができる。

23 正しい 相殺するには、両債権が弁済期にあることが必要である。ただ、自働債権が弁済期にあれば、弁済期の定めのない債権を受働債権として相殺することができる(最判S8.9.8)。よって、Aは、弁済期が到来している債権甲を自働債権とし、弁済期の定めのない債権乙を受働債権として相殺することができる。


24 請負人の報酬請求権に対して、注文者がこれと同時履行の関係にある目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、請負人に対する相殺後の報酬残債務について、当該債務の履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。

24 誤り 請負人の報酬債権に対し注文者がこれと同時履行の関係にある瑕疵修補に代わる損害賠償債権を自働債権とする相殺の意思表示をした場合、注文者は、相殺後の報酬残債務について、相殺の意思表示をした日の翌日から履行遅滞による責任を負う(最判H9.7.15)。

連帯債務

25 債務者A、B、Cの3名が、内部的な負担部分の割合は等しいものとして合意した上で、債権者Dに対し300万円の連帯債務を負った。DがAに対して裁判上の請求を行ったとしても、特段の合意がなければ、BとCがDに対して負う債務の消滅時効の完成には影響しない。

25 正しい 裁判上の請求があれば、時効の完成が猶予される。ただ、更改、相殺、混同を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、特段の合意がなければ、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。つまり、請求は、相対的効力事由である。よって、DがAに対して裁判上の請求を行ったとしても、特段の合意がなければ、BとCがDに対して負う債務の消滅時効の完成には影響しない。


26 債務者A、B、Cの3名が、内部的な負担部分の割合は等しいものとして合意した上で、債権者Dに対し300万円の連帯債務を負った。DがCに対して債務を免除した場合でも、特段の合意がなければ、DはAに対してもBに対しても、弁済期が到来した300万円全額の支払を請求することができる。

26 正しい 更改、相殺、混同を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、特段の合意がなければ、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。つまり、免除は、相対的効力事由である。よって、DがCに対して債務を免除した場合でも、特段の合意がなければ、ABに効力は及ばず、DはAに対してもBに対しても、弁済期が到来した300万円全額の支払を請求することができる。


27 債務者A、B、Cの3名が、内部的な負担部分の割合は等しいものとして合意した上で、債権者Dに対し300万円の連帯債務を負った。BがDに対して300万円の債権を有している場合、Bが相殺を援用しない間に300万円の支払の請求を受けたCは、BのDに対する債権で相殺する旨の意思表示をすることができる。

27 誤り 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、当該連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。ここより、BがDに対して300万円の債権を有している場合、Bが相殺を援用しない間に300万円の支払の請求を受けたCは、BのDに対する300万円の債権のうちBの負担部分に相当する100万円について債務の履行を拒むことができるに過ぎず、300万円全額につき相殺する旨の意思表示をすることはできない。


28 債務者A、B、Cの3名が、内部的な負担部分の割合は等しいものとして合意した上で、債権者Dに対し300万円の連帯債務を負った。AとDとの間に更改があったときは、300万円の債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

28 正しい 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。つまり、更改は、絶対的効力事由である。よって、AとDとの間に更改があったときは、300万円の債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。

保 証

29 個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合をケース①、個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合をケース②とするとき、ケース①の保証契約は、口頭による合意でも有効であるが、ケース②の保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。

29 誤り 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。ケース①は事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約を個人が締結した場合、いわゆる事業に係る債務についての個人による保証契約であり、ケース②は一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(根保証契約)を個人が締結した場合、いわゆる個人根保証契約である。どちらも保証契約として、書面でしなければ、その効力を生じない。よって、ケース①の保証契約は、口頭による合意では無効である。


30 個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合をケース①、個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合をケース②とするとき、ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、BがCに債務の履行を請求したときはCは催告の抗弁を主張することができるが、DがEに債務の履行を請求したときはEは催告の抗弁を主張することができない。

30 誤り 連帯保証人は、催告の抗弁を主張することができない。よって、ケース①及びケース②の保証契約がいずれも連帯保証契約である場合、CもEも連帯保証人として催告の抗弁を主張することができない。


31 特定物売買における売主の保証人は、特に反対の意思表示がない限り、売主の債務不履行により契約が解除された場合には、原状回復義務である既払代金の返還義務についても保証する責任がある。

31 正しい 特定物の売買契約における売主のための保証人は、特に反対の意思表示のないかぎり、売主の債務不履行により契約が解除された場合における原状回復義務についても、保証の責に任ずる(最判S40.6.30)。


32 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。

32 誤り 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。保証人は、主たる債務者が主たる債務の時効の利益を放棄した場合でも、なお主たる債務の時効を援用し、保証債務を免れる(大判S6.6.4)。


33 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。

33 正しい 時効を援用することができるのは、当事者である。ここにいう当事者には、消滅時効においては、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。ここより、消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者といえ、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれるということができる。


34 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。

34 誤り 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。保証人は、主たる債務者が主たる債務の時効の利益を放棄した場合でも、なお主たる債務の時効を援用し、保証債務を免れる(大判S6.6.4)。


35 委託を受けた保証人が主たる債務の弁済期前に債務の弁済をしたが、主たる債務者が当該保証人からの求償に対して、当該弁済日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

35 正しい 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務の弁済期前に債務の消滅行為をしたとき、主たる債務者が債務の消滅行為の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。


36 委託を受けた保証人は、履行の請求を受けた場合だけでなく、履行の請求を受けずに自発的に債務の消滅行為をする場合であっても、あらかじめ主たる債務者に通知をしなければ、同人に対する求償が制限されることがある。

36 正しい 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者にあらかじめ通知しないで債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができ、保証人の求償権が制限される。ここにおける保証人の債務の消滅行為が債権者から履行の請求を受けてのものか否かを問わない。よって、委託を受けた保証人は、履行の請求を受けた場合だけでなく、履行の請求を受けずに自発的に債務の消滅行為をする場合であっても、あらかじめ主たる債務者に通知をしなければ、同人に対する求償が制限されることがある。


37 個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合をケース①、個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合をケース②とするとき、ケース①の保証契約は、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はないが、ケース②の保証契約は、Eが個人でも法人でも極度額を定めなければ効力を生じない。

37 誤り ケース①の保証契約は、特定の債務を主たる債務とするものであり、根保証契約ではない。よって、Cが個人でも法人でも極度額を定める必要はない。ケース②の保証契約は、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約であり、根保証契約にあたる。根保証契約で保証人Eが法人であるときは極度額を定める必要はないが、保証人Eが個人であるときは、いわゆる個人根保証契約であり、極度額を定めなければその効力を生じない。


38 個人Aが金融機関Bから事業資金として1,000万円を借り入れ、CがBとの間で当該債務に係る保証契約を締結した場合をケース①、個人Aが建物所有者Dと居住目的の建物賃貸借契約を締結し、EがDとの間で当該賃貸借契約に基づくAの一切の債務に係る保証契約を締結した場合をケース②とするとき、保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるときはケース①の保証契約は効力を生じないが、ケース②の保証契約は有効である。

38 正しい 事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約で保証人になろうとする者が当該事業に関与しない個人である場合には、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。よって、ケース①のCがAの事業に関与しない個人であるとき、保証人が保証契約締結の日前1箇月以内に公正証書で保証債務を履行する意思を表示していない場合は、保証契約は効力を生じない。一方、ケース②の保証契約については、保証人になろうとする者があらかじめ公正証書で保証債務を履行する意思を表示している必要はなく、表示していない場合でも保証契約は有効である。

債権譲渡

39 譲渡制限の意思表示がされた債権の譲受人が、その意思表示がされていたことを知っていたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって譲受人に対抗することができる。

39 正しい 譲渡制限の意思表示がされたことを知っていた譲受人に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその譲受人に対抗することができる。


40 譲渡制限の意思表示がされた債権が譲渡された場合、当該債権譲渡の効力は妨げられないが、債務者は、その債権の全額に相当する金銭を供託することができる。

40 正しい 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(譲渡制限の意思表示)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。債務者は、譲渡制限の意思表示がされた金銭の給付を目的とする債権が譲渡されたときは、その債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。


41 債権が譲渡された場合、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、その後に発生した債権を取得できない。

41 誤り 債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。よって、債権譲渡の意思表示の時に現に発生していない債権の譲受人は、その後に発生した債権を取得することができる。


42 債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知し、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができず、その譲渡の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。

42 正しい 債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。このとき、債務者以外の第三者に対抗するための通知又は承諾は、確定日付のある証書によってなされる必要がある。

債務引受

43 第三者が債権者との間で、債務者の債務につき併存的債務引受契約をした場合、債務者が第三者に承諾をした時点で、その効力が生ずる。

43 誤り 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。その効力発生につき債務者の第三者に対する承諾は不要である。


44 第三者が債務者のとの間で、債務者の債務につき併存的債務引受契約をした場合、債権者が第三者に承諾をした時点で、その効力が生ずる。

44 正しい 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。


45 第三者が債務者との間で、債務者の債務につき免責的債務引受契約をする場合、債権者の承諾は不要である。

45 誤り 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。よって、第三者が債務者との間で、債務者の債務につき免責的債務引受契約をする場合、債権者の承諾は必要である。

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