民法04/物権2・担保物権(20肢)

地上権

01 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、Dが甲土地を不法占拠してAの土地利用を妨害している場合、①では、Aは当該権原に基づく妨害排除請求権を行使してDの妨害の排除を求めることができるが、②では、AのDの妨害の排除を求めることはできない。

01 誤り 不動産の賃借人は、賃借権の対抗要件を備えた場合において、その不動産の占有を第三者が妨害しているとき、その第三者に対する妨害の停止の請求をすることができる。よって、②賃借権である場合では、AのDの妨害の排除を求めることはできないとはいえない。①地上権の場合は、地上権が物権であり物権的請求権としての妨害排除請求権が認められるところから、Aは当該権原に基づく妨害排除請求権を行使してDの妨害の排除を求めることができる点は、正しい。


02 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、①でも②でも、特約がなくても、BはAに対して、甲土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。

02 誤り ①地上権である場合、地上権設定者Bに土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務はない。②賃借権である場合に、賃貸人Bが土地の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う点は、正しい。


03 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、①では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することができるが、②では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することはできない。

03 正しい 地上権も、抵当権の目的とすることができる。よって、①地上権である場合は、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することができる。しかし、賃借権に抵当権を設定することはできない。よって、②賃借権である場合は、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することはできない。


04 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、CがBに無断でAから当該権原を譲り受け、甲土地を使用しているときは、①でも②でも、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる。

04 誤り 地上権者は、地上権設定者の承諾なしに地上権を譲渡することができる。よって、①地上権である場合、Bに無断であっても、CはAから地上権を取得しており、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することはできない。賃借権の譲渡を承諾しない賃貸人は、賃借契約を解除しなくても、譲受人に対し賃貸目的物の返還を求めることができる(最判S26.5.31)。よって、①賃借権である場合にBはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる点は、正しい。

地役権

05 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、承役地を要役地の便益に供する権利を有する。

05 正しい 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地、つまり承役地を自己の土地の便益に供する権利を有する。


06 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を負担する。

06 正しい 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人も、その義務を負担する。


07 地役権は、継続的に行使されるもの、又は外形上認識することができるものに限り、時効取得することができる。

07 誤り 地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものに限り、時効によって取得することができる。継続的に行使されるものであっても、外形上認識することができるものでないときは時効によって取得することはできず、外形上認識することができるものであっても、継続的に行使されるものでないときは時効によって取得することはできない。よって、継続的に行使されるもの、又は外形上認識することができるものに限り、時効取得することができるとはいえない。


08 要役地の所有権とともに地役権を取得した者が、所有権の取得を承役地の所有者に対抗し得るときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗することができる。

08 正しい 地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転する。よって、要役地の譲受人は、当然、地役権も取得し、これを地役権設定者である承役地所有者に対抗することができる。また、承役地が譲渡され承役地の所有者となった者に対し、要役地の譲受人は、要役地の所有権移転登記をし、所有権を対抗することができることで、地役権の取得についても対抗することができる(大判T13.3.17)。以上より、要役地の所有権とともに地役権を取得した者は、所有権の取得を承役地の所有者に対抗し得るときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗することができることになる。

占 有

09 Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた。Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始を知るまでは、Bによる甲建物の占有を承継しない。

09 誤り 被相続人の事実的支配の中にあった物は、原則として、当然に、相続人の支配の中に承継されるとみるべきであるから、その結果として、占有権も承継され、被相続人が死亡して相続が開始するときは、特別の事情のないかぎり、従前その占有に属したものは、当然相続人の占有に移る(最判S44.10.30)。ここより、Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始を知るまでは、Bによる甲建物の占有を承継しないというものではない。


10 Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた。CがBに対し甲建物をAから買受けたとの虚偽の話をしたので、これを信じたBが甲建物の占有を任意にCに移転した場合、AはCに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。

10 正しい 占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。占有回収の訴えを提起することができる占有侵奪は、当初から侵奪されたものであることを要する。よって、占有者が任意に占有を移転したのであれば、占有を移転する意思が他人の欺罔によって生じた場合でも、占有の侵奪はない(大判T11.11.27)。ここより、甲建物の占有を任意にCに移転しているBは、それが虚偽の話を信じたことによるもので、後日、その意思に反することになったとしても、占有を奪われたものとはいえず、Cに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。


11 Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた。Bが、Aの甲建物への立ち入りを建物入り口を閉ざして拒んだときは、Aは甲建物の間接占有が侵害されたものとして、Bに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することができる。

11 誤り  当初その意思に基づいて所持を移した場合には、後日、その意思に反することになったとしても、占有を奪われたとはいえず、占有回収の訴えを提起することはできない(大判S7.4.13)。Aは、当初賃貸人としてその意思に基づいて甲建物の所持を移したものであり、Bが、Aの甲建物への立ち入りを建物入り口を閉ざして拒んだとしても、Bに対して、占有回収の訴えにより甲建物の返還を請求することはできない。

抵当権

12 AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合に関して、①では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することができるが、②では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することはできない。

12 正しい 地上権も、抵当権の目的とすることができる。よって、①地上権である場合は、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することができる。しかし、賃借権に抵当権を設定することはできない。よって、②賃借権である場合は、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することはできない。


13 Aは、Bからの借入金の担保として、A所有の甲建物に第一順位の抵当権(「本件抵当権」という。)を設定し、その登記を行った。AC間にCを賃借人とする甲建物の一時使用目的ではない賃貸借契約がある。本件抵当権設定登記後にAC間の賃貸借契約が締結され、AのBに対する借入金の返済が債務不履行となった場合、Bは抵当権に基づき、AがCに対して有している賃料債権を差し押さえることができる。

13 正しい 抵当権は、その目的物の賃貸によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、抵当権者は、その払渡しの前に差押えをしなければならない。ここより、抵当権設定登記後にAC間の賃貸借契約が締結され、Aの借入金の返済が債務不履行となった場合、Bは抵当権に基づき、AがCに対して有している賃料債権を差し押さえることができる。


14 A所有の甲土地にBのCに対する債務を担保するためにCの抵当権が設定され、その旨の登記がなされた。Cに対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、甲土地の競売における買受人Fの買受けの時から6カ月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しない。

14 誤り 抵当権者に対抗することができない賃貸借により競売手続の開始前から抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者(抵当建物使用者)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。この賃借権者の引渡し猶予制度は、抵当権が設定された土地の賃借人(抵当土地使用者)には適用がない。よって、対抗することができない賃貸借により甲土地を競売手続の開始前から使用するEは、競売における買受人Fの買受けの時から6カ月を経過するまでは、甲土地をFに引き渡すことを要しないというものではない。


15 Aは、Bからの借入金の担保として、A所有の甲建物に第一順位の抵当権(「本件抵当権」という。)を設定し、その登記を行った。AC間にCを賃借人とする甲建物の一時使用目的ではない賃貸借契約がある。本件抵当権設定登記後にAC間で賃貸借契約を締結し、その後抵当権に基づく競売手続による買受けがなされた場合、買受けから賃貸借契約の期間満了までの期間が1年であったときは、Cは甲建物の競売における買受人に対し、期間満了までは甲建物を引き渡す必要はない。

15 誤り 抵当権設定登記後に賃貸借契約を締結した場合、賃借権を抵当権に対抗することができない。抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であっても、競売手続の開始前から使用又は収益をする者は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。ここから、抵当権に対抗できない建物賃借権者であるCは、買受けの時から6箇月間は甲建物を引き渡す必要はない。しかし、買受けから賃貸借契約の期間満了までの期間が1年であったとしても、Cは、期間満了までは甲建物を引き渡す必要はないというものではない。


16 A所有の甲土地にBのCに対する債務を担保するためにCの抵当権が設定され、その旨の登記がなされた後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。

16 誤り 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる。そこで、抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Cが競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てることができるのであって、申立てなければならないというものではない。


17 A所有の甲土地にBのCに対する債務を担保するためにCの抵当権が設定され、その旨の登記がなされた。Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、Cの抵当権はDのために消滅する。

17 正しい 抵当不動産について所有権を買い受けた第三者が、抵当権者の請求に応じてその抵当権者にその代価を弁済したときは、抵当権は、その第三者のために消滅する。よって、Aから甲土地を買い受けたDが、Cの請求に応じてその代価を弁済したときは、本件抵当権はDのために消滅する。


18 A所有の甲土地にBのCに対する債務を担保するためにCの抵当権が設定され、その旨の登記がなされた。BがAから甲土地を買い受けた場合、Bは抵当不動産の第三取得者として、本件抵当権について、Cに対して抵当権消滅請求をすることができる。

18 誤り 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をすることができる。しかし、主たる債務者は、抵当権消滅請求をすることができない。ここより、主たる債務者であるBがAから甲土地を買い受けても、Cに対して抵当権消滅請求をすることはできない。


19 債務者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額2,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額2,400万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額3,000万円)をそれぞれ有しているが、BはDの利益のために抵当権の順位を譲渡した。甲土地の競売に基づく売却代金が6,000万円であった場合、Bの受ける配当額は、600万円である。

19 正しい 抵当権の順位の譲渡があれば、順位を譲り受けた者(順位譲受人)が、譲り受けた順位及び本来の順位においても、順位譲渡人に優先して配当を受ける。ここより、順位譲受人Dは、一番抵当権の配当金及び三番抵当権の配当金において、順位譲渡人Bに優先して配当を受けることができる。本肢の場合、売却代金6,000万円に係る配当金は、一番抵当権2,000万円、二番抵当権2,400万円、三番抵当権1,600万円である。そこで、Dは、一番抵当権の配当金2,000万円につき全額及び三番抵当権の配当金1,600万円のうち1,000万円につきBに優先して配当を受けることができ、Bの受ける配当額は、三番抵当権の配当額1,600万円のうちDが配当を受けた後の残額600万円となる。


20 債権者Aが所有する甲土地には、債権者Bが一番抵当権(債権額1,000万円)、債権者Cが二番抵当権(債権額1,200万円)、債権者Dが三番抵当権(債権額2,000万円)をそれぞれ有しているが、BがDの利益のため、Aの承諾を得て抵当権の順位を放棄した。甲土地の競売に基づく売却代金が2,400万円であった場合、Bの受ける配当額は400万円である。

20 正しい 抵当権の順位の放棄があれば、順位の放棄を受けた者が、放棄した者の順位及び本来の順位においても、放棄した者と平等の立場で債権額に比例して弁済を受ける。被担保債権額が、一番抵当権1,000万円、二番抵当権1,200万円、三番抵当権2,000万円であるとき、甲土地の競売に基づく売却代金2,400万円についての配当額は、一番抵当権1,000万円、二番抵当権1,200万円、三番抵当権200万円となる。そこで、一番抵当権者Bが三番抵当権者Dの利益のため抵当権の順位を放棄すれば、一番抵当権への配当額1,000万円と三番抵当権への配当額200万円のそれぞれについて、つまり合計1,200万円について、DとBは債権額に比例して、つまり2対1の割合で弁済を受けることになる。よって、Bの受ける配当額は、1,200万円の3分の1、すなわち400万円となる。

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