民法03/物権1(45肢)

物権的請求権

01 AがBに対してA所有の甲建物を令和3年7月1日に①売却又は②賃貸した場合において、甲建物をDが不法占拠しているとき、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をDに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。

01 誤り 不動産に関する物権の得喪は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。不法占拠者は、ここにいう第三者にあたらない(最判S25.12.19)。よって、①において、Bは、甲建物の所有権移転登記を備えていなくても、甲建物の所有権の取得をDに対抗することができる。また、不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求をすることができる。つまり、②において、Bは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。


02 土地の所有者が直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根を設けた場合、隣地所有者は、その所有権に基づいて妨害排除又は予防の請求をすることができる。

02 正しい 土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。これに違反して土地の所有者が直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根を設けた場合、隣地所有者の土地所有権に基づく円満な土地支配の状態を妨害し、又は妨害するおそれがあるといえる。このとき、土地所有者は、その所有権に基づいて妨害排除又は予防の請求をすることができる。


03 Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約が締結された直後にAが死亡し、CがAを単独相続した。Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権移転登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。

03 誤り 売買契約において所有権の移転時期が定められていないときは、売買契約が締結されれば、別段の合意又は特別の事情の存在しない限り、売主から買主への目的物の所有権移転効果が発生する(最判S33.6.20)。ここより、売買契約の締結により、Bは、甲土地の所有権を取得する。買主は、売主及びその相続人に対し、登記なしに、売買による所有権の取得を対抗することができる。そして、買主は、売買目的物につき、取得した所有権に基づき物権的返還請求権により目的物の引渡しを請求することができる(大判S2.3.22/大判S3.10.16)。以上より、Bは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Cに対して甲土地の引渡しを請求することができる。また、売買契約により、買主が登記を備えたか否かにかかわらず、売主は目的物の引渡し債務を負担する。相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するところから、CはAの甲土地の引渡し債務を承継する。ここからも、Bは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Cに対して甲土地の引渡しを請求することができる。

物権変動の対抗要件

04 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、背信的悪意者ではないCが当該不動産をAから二重に買い受けた場合、先に買い受けたBは登記が未了であっても当該不動産の所有権取得をもってCに対抗することができる。

04 誤り 不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。ここから、BはCより先に不動産を買い受けた場合であっても、登記が未了であれば、当該不動産の所有権取得をもってCに対抗することができない。


05 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、Cが当該不動産をAから二重に買い受け登記を完了した場合、Cが背信的悪意者に該当しなくてもBが登記未了であることにつき悪意であるときには、Cは当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができない。

05 誤り 不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。ここに第三者は、善意であることが求められるわけではなく(最判S32.9.19)、悪意の第三者も含まれる(大判M38.10.20)。ここより、Aからの第二譲受人であるCは、登記を備えれば、第一譲受人Bの登記未了につき悪意であっても、Cは当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができる。


06 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。Bが甲土地の所有権移転登記を備えていない場合には、Aから建物所有目的で甲土地を賃借して甲土地上にD名義の登記ある建物を有するDに対して、Bは自らが甲土地の所有者であることを主張することができない。

06 正しい 不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。ここにいう第三者に、不動産賃借権者は該当する(最判S49.3.19)。そして、建物所有目的の土地賃借権、いわゆる借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。つまり、賃借地上の登記された建物が、借地権の対抗要件となる。ここより、Dが賃借した甲土地上に登記した建物を所有するときは、その賃借権を所有権移転登記を備えていないBに対抗することができる。つまり、Bは、Dの賃借権の付いた甲土地を取得したことになる。


07 土地の賃借人として当該土地上に登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。

07 正しい 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。ここより、土地の賃借人として当該土地上に登記ある建物を所有する者は、当該土地の所有権を新たに取得した者と対抗関係にある第三者に該当する。


08 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。Bが甲土地の所有権移転登記を備えないまま甲土地をEに売却した場合、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。

08 正しい 不動産が甲乙丙と順次譲渡された場合、現在の登記名義人たる甲が丙から直接転移登記手続を求められるにあたって、甲は民法177条にいう第三者として、丙に対しその物権取得を否認できる関係にはない(最判S39.2.13)。つまり、不動産を取得した者は、前々主に対し登記なしに所有権取得を対抗することができる。よって、Eは、甲土地の所有権移転登記なくして、Aに対して甲土地の所有権を主張することができる。


09 不動産の所有権がAからB、BからC、CからDと転々譲渡された場合、Aは、Dと対抗関係にある第三者に該当する。

09 誤り 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。不動産が転々譲渡された場合の前々主は、ここにいう第三者にあたらない(最判S39.2.13)。よって、不動産がABCDと転々譲渡された場合、AはDとの関係で前々主であり、Dと対抗関係にある第三者に該当しない。


10 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。甲土地を何らの権原なく不法占有しているCがいる場合、BがCに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするには、甲土地の所有権移転登記を備えなければならない。

10 誤り 不法占有者は民法177条にいう第三者に該当せず、これに対しては登記がなくても所有権の取得を対抗することができる(最判S25.12.19)。よって、Bは、Cに対して甲土地の所有権を主張して明渡請求をするにあたり所有権移転登記を備えておく必要はない。


11 AがBに対してA所有の甲建物を令和3年7月1日に①売却又は②賃貸した場合において、甲建物をDが不法占拠しているとき、①ではBは甲建物の所有権移転登記を備えていなければ所有権をDに対抗できず、②ではBは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。

11 誤り 不動産に関する物権の得喪は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。不法占拠者は、ここにいう第三者にあたらない(最判S25.12.19)。よって、①において、Bは、甲建物の所有権移転登記を備えていなくても、甲建物の所有権の取得をDに対抗することができる。また、不動産の賃借人は、対抗要件を備えた場合において、その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求をすることができる。つまり、②において、Bは甲建物につき賃借権の登記を備えていれば賃借権をDに対抗することができる。


12 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、Cが当該不動産をAから二重に買い受けて登記を完了した場合、Cは、自らが背信的悪意者に該当するときであっても、当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができる。

12 誤り 不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。ただ、実体上物権変動があった事実を知る者において右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しないものであって、民法177条にいう第三者に当らない(最判S43.8.2)。ここより、Cが背信的悪意者に該当するときは、Bは、Cに対し当該不動産の所有権取得をもって対抗することができ、Cは所有権取得をBに対抗することができない。


13 所有者AからBが不動産を買い受け、その登記が未了の間に、背信的悪意者であるCが当該不動産をAから二重に買い受け、更にCから転得者Dが買い受けて登記を完了した場合,DもBに対する関係で背信的悪意者に該当するときには、Dは当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができない。

13 正しい 不動産について、登記を備えた背信的悪意者からの転得者は、自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権の取得をもって第三者に対抗することができる(最判H8.10.29)。ここから、背信的悪意者からの転得者は、自身が背信的悪意者に該当するときは、所有権の取得をもって第三者に対抗することができないと解せられる。よって、背信的悪意者であるCからの転得者Dは、登記を完了しても、Bに対する関係で背信的悪意者に該当するときには、当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができない。

登記により決すべき注意事例(疑似対抗問題)

14 AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた。AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消した後、CがBから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えた場合、AC間の関係は対抗問題となり、Aは、いわゆる背信的悪意者ではないCに対して、登記なくして甲土地の返還を請求することができない。

14 正しい 不動産売買契約が取り消され、その所有権が復帰した売主と買主から不動産を取得した第三者は二重譲渡にける対抗問題ととらえ、登記を先に備えた方が所有者であることを主張できる(大判S17.9.30)。よって、Aは、いわゆる背信的悪意者ではないCに対して、登記なくして甲土地の返還を請求することができない。


15 Aは、Aが所有している甲土地をBに売却した。Bが甲土地の所有権移転登記を備えた後に甲土地につき取得時効が完成したFは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。

15 正しい 時効取得者は、時効完成前に原所有者から所有権を取得し、時効完成前に移転登記を経由した者に対し、時効取得を対抗することができる(大判T7.3.2/最判S41.11.22)。よって、Fは、甲土地の所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。


16 第三者のなした登記後に時効が完成して不動産の所有権を取得した者は、当該第三者に対して、登記を備えなくても、時効取得をもって対抗することができる。

16 正しい 時効取得者は、時効完成前に原所有者から所有権を取得し、時効完成前に移転登記を経由した者に対し、時効取得を対抗することができる(大判T7.3.2/最判S41.11.22)。


17 AはBに対し、自己所有の甲土地を売却し、代金と引換えにBに甲土地を引き渡したが、その後にCに対しても甲土地を売却し、代金と引換えにCに甲土地の所有権登記を移転した。Bが甲土地の所有権を時効取得した場合、Bは登記を備えなければ、その所有権を時効完成時において所有者であったCに対抗することはできない。

17 誤り  不動産の時効取得者は、取得時効の進行中に原権利者から当該不動産の譲渡を受けその旨の移転登記を経由した者に対しては、登記がなくても、時効による所有権の取得を主張することができる(最判S41.11.22)。ここより、Bが甲土地の所有権を時効取得した場合、Bは登記を備えなくても、その所有権を時効完成時において所有者であったCに対抗することができる。


18 AがCに対して所有する甲土地を売却し、Cが所有権移転登記を備えた後に甲土地につきBの取得時効が完成した場合には、Bは登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。

18 正しい 時効取得者は、時効完成前に原所有者から所有権を取得し、時効完成前に移転登記を経由した者に対し、時効取得を対抗することができる(大判T7.3.2/最判S41.11.22)。よって、AがCに対して甲土地を売却し、Cが所有権移転登記を備えた後にBの取得時効が完成した場合には、Bは登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をCに対抗することができる。


19 A所有の甲土地についてBの取得時効が完成した後に、AがDに対して甲土地を売却しDが所有権移転登記を備え、Bが、Dの登記の日から所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、所有権移転登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をDに対抗することができる。

19 正しい 所有権の取得時効完成後、第三者が原所有者から所有権を取得し、登記をなせば、時効取得者は時効取得を対抗し得ないが、引き続き占有を継続すれば、当該第三者の登記から再び時効は進行し、時効期間経過により再度時効が完成し、登記なしに時効取得を対抗できることになる(最判S36.7.20)。ここより、Bの取得時効が完成した後に、甲土地を買い受けたDが所有権移転登記を備えても、Bが、Dの登記の日から時効取得に必要な期間占有を継続した場合、所有権移転登記を備えていなくても、甲土地の所有権の時効取得をDに対抗することができる。


20 A所有の甲土地についてBの時効取得完成後、Bへの所有権移転登記がなされないままEがAを債務者として甲土地にAから抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合において、Bがその後引き続き所有の意思をもって平穏にかつ公然と時効取得に必要な期間占有を継続した場合、特段の事情がない限り、再度の時効取得により、Bは甲土地の所有権を取得し、Eの抵当権は消滅する。

20 正しい 不動産の取得時効の完成後、所有権移転登記がされることのないまま、第三者が原所有者から抵当権の設定を受けて抵当権設定登記を了した場合において、上記不動産の時効取得者である占有者が、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続し、その期間の経過後に取得時効を授用したときは、上記占有者が上記抵当権の存在を容認していたなど抵当権の消滅を妨げる特段の事情がない限り、上記占有者が、上記不動産を時効取得する結果、上記抵当権は消滅する(最判H24.3.16)。ここより、Bの時効取得完成後、Eが甲土地に抵当権の設定を受けて抵当権設定登記をした場合でも、Bがその後引き続き時効取得に必要な期間占有を継続した場合、特段の事情がない限り、再度の時効取得により、Bは甲土地の所有権を取得し、Eの抵当権は消滅する。


21 共同相続財産につき、相続人の一人から相続財産に属する不動産につき所有権の全部の譲渡を受けて移転登記を終えた第三者に対して、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。

21 正しい 不動産の権利の相続による法定相続分の取得は、登記なしに第三者に対抗することができる(最判S38.2.22)。ここより、共同相続財産につき、相続人の一人から相続財産に属する不動産につき所有権の全部の譲渡を受けて移転登記を終えた第三者に対して、他の共同相続人は、自己の持分を登記なくして対抗することができる。

物権の消滅

22 Aの所有する甲土地にBを地上権者とする地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCを抵当権者とする抵当権が設定され、その旨の登記がされた。BがAとの売買契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。

22 誤り 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。ここより、地上権者Bが当該地上権の目的である甲土地の所有権を売買により取得しても、甲土地にCの抵当権が設定されている場合は、Bの地上権は消滅しない。


23 Aの所有する甲土地にBを地上権者とする地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCを抵当権者とする抵当権が設定され、その旨の登記がされた。Aが死亡してBがAを単独相続し、甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。

23 誤り  同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。ここより、地上権者Bが当該地上権の目的である甲土地の所有権を相続により取得しても、甲土地にCの抵当権が設定されている場合は、Bの地上権は消滅しない。


24 Aの所有する甲土地にBを地上権者とする地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCを抵当権者とする抵当権が設定され、その旨の登記がされた。BがAとの代物弁済契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。

24 誤り 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。ここより、地上権者Bが当該地上権の目的である甲土地の所有権を代物弁済契約により取得しても、甲土地にCの抵当権が設定されている場合は、Bの地上権は消滅しない。


25 Aの所有する甲土地にBを地上権者とする地上権が設定され、その旨の登記がされた後に、甲土地にCを抵当権者とする抵当権が設定され、その旨の登記がされた。BがAとの贈与契約に基づき、甲土地の所有権を取得したときは、Bの地上権は消滅する。

25 誤り 同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は、消滅する。ただし、その物又は当該他の物権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。ここより、地上権者Bが当該地上権の目的である甲土地の所有権を贈与契約により取得しても、甲土地にCの抵当権が設定されている場合は、Bの地上権は消滅しない。

所有権

26 AがBに対してA所有の甲建物を令和3年7月1日に①売却又は②賃貸した場合において、①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。

26 正しい ①の売買契約においては、買主は所有権を取得する。所有者は、自由に所有物を使用又は収益することができる。ここから、①において、Bは、所有権を取得した甲建物をAの承諾を得ずにCに賃貸することができる。②の賃貸借契約において、Bは賃借人となる。賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。ここから、②において、Bは、Aの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。

相隣関係

27 Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合には、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができなくなる。

27 誤り 相隣関係としての公道に至るための他の土地の通行権は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地にとってはその所有権の内容として所有権の拡張が認められているものであり、その土地を囲んでいる他の土地にとってもその所有権の内容として所有権が制限されるものといえる。よって、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、その土地を囲んでいる他の土地の所有者に対してその所有権をいかにして取得したかを問わず、通行権を主張することができる。ここより、Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合であっても、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができる。


28 土地の所有者は、境界標の調査又は境界に関する測量等の一定の目的のために必要な範囲内で隣地を使用することができる場合であっても、住家については、その家の居住者の承諾がなければ、当該住家に立ち入ることはできない。

28 正しい 土地の所有者は、①境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕、②境界標の調査又は境界に関する測量、③233条3項の規定による枝の切取りのため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。


29 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。

29 誤り 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。このとき、通行の場所及び方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。よって、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができるわけではない。


30 Aは公道に至るため甲土地を囲んでいる土地を通行する権利を有するところ、Aが自動車を所有していても、自動車による通行権が認められることはない。

30 誤り 判例(最判H18.3.16)は、「自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は、公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性、周辺の土地の状況、上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。」と述べ、自動車による通行権が認められることもあることを前提としている。よって、自動車による通行権が認められることはないとはいえない。


31 甲土地が共有物の分割によって公道に通じない土地となっていた場合には、Aは公道に至るために他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。

31 正しい 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。よって、Aは、他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。


32 土地の所有者が直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根を設けた場合、隣地所有者は、その所有権に基づいて妨害排除又は予防の請求をすることができる。

32 正しい 土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。これに違反して土地の所有者が直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根を設けた場合、隣地所有者の土地所有権に基づく円満な土地支配の状態を妨害し、又は妨害するおそれがあるといえる。このとき、土地所有者は、その所有権に基づいて妨害排除又は予防の請求をすることができる。


33 高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすためであっても、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることはできない。

33 誤り 高地の所有者は、その高地が浸水した場合にこれを乾かすため、公の水流又は下水道に至るまで、低地に水を通過させることができる。


34 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。

34 正しい 土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。


35 隣接する土地の境界線上に設けた障壁は、相隣者の共有に属するものと推定される。

35 正しい 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。


36 相隣者の一人は、相隣者間で共有する障壁の高さを増すときは、他方の相隣者の承諾を得なければならない。

36 誤り  相隣者の一人は、共有の障壁の高さを増すことができる。このとき、他方の相隣者の承諾を得る必要はない。


37 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を超える場合、その竹木の所有者にその枝を切除させることができるが、その枝を切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しなかったときであっても、自らその枝を切り取ることはできない。

37 誤り  土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。ただし、竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

共 有

38 共有物である不動産の各共有者の持分が不明な場合、持分は平等と推定される。

38 正しい 各共有者の持分が不明なときは、各共有者の持分は、相等しいものと推定する。


39 不動産の共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は国庫に帰属する。

39 誤り 共有者の一人が死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。国庫に帰属するものではない。


40 甲土地につき、A、B、C、Dの4人がそれぞれ4分の1の共有持分(相続財産ではない。)を有しているが、A、B、CのいずれもDの所在を知ることができない。Aが裁判所に請求して、裁判所がDの持分をAに取得させる旨の決定をした場合、Dは、その決定から3年以内に限り、Aが取得したDの共有持分の時価相当額をAに対して支払うよう請求することができる。

40 誤り 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者の所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(所在等不明共有者)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。これにより共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。この請求につき、期間の制限はない。よって、裁判所の決定から3年以内に限り持分の時価相当額の支払を請求することができるというものではない。


41 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物である不動産に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない。

41 正しい 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない。


42 甲土地につき、A、B、C、Dの4人がそれぞれ4分の1の共有持分(相続財産ではない。)を有しているが、A、B、CのいずれもDの所在を知ることができない。甲土地に、その形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加える場合には、共有者の過半数の同意が必要であり、本件ではA、B、C3人の同意が必要となる。

42 誤り  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を加えることができない。ここより、甲土地に、その形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加える場合には、共有者全員の同意を要する。よって、A、B、C3人の同意では足りず、Dの同意も必要となる。ただ、Dの所在を知ることができない場合、ABC各自は、裁判所に対しABC全員の同意があれば甲土地に変更を加えることができる旨の裁判を求めることができる。


43 甲土地につき、A、B、C、Dの4人がそれぞれ4分の1の共有持分(相続財産ではない。)を有しているが、A、B、CのいずれもDの所在を知ることができない。A、B、C3人の同意があれば、甲土地を資材置場として賃借したいFとの間で期間を3年とする賃貸借契約を締結することができる。

43 正しい 共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有者は、共有物の管理の方法により、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等以外の土地の賃借権等であって、その期間が5年を超えないものを設定することができる。ここより、A、B、C3人の同意があれば、持分の価格の過半数ということで、甲土地を資材置場として賃借したいFとの間で期間を3年とする賃貸借契約を締結することができる。


44 共有物である不動産の保存行為については、各共有者が単独ですることができる。

44 正しい 共有物の保存行為は、各共有者が単独ですることができる。


45 甲土地につき、A、B、C、Dの4人がそれぞれ4分の1の共有持分(相続財産ではない。)を有しているが、A、B、CのいずれもDの所在を知ることができない。甲土地の所有権の登記名義人となっている者が所有者ではないEである場合、持分に基づいてEに対して登記の抹消を求めるためには、所在が判明しているA、B、Cのうち2人の同意が必要である。

45 誤り 不実の持分移転登記が存在することは共有不動産に対する妨害状態が生じているということができ、共有者の一人はその持分権に基づき共有不動産に加えられた妨害を排除することができるところから、単独で当該不実の持分移転登記の抹消を請求することができる(最判S31.5.10/最判S33.7.22/最判H15.7.11)。ここより、所有者ではないEが登記名義人となっているとき、A、B、Cは単独でその登記の抹消を求めることができる。A、B、Cのうち2人の同意が必要となるものではない。

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