1 土地を使用する権原を有しない者が当該土地に小麦の種をまき、これを育てた場合には、成育した小麦の所有権は、種をまいた者に帰属する。
1 誤り 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。播かれた種から生育した苗の所有権は、播種が土地使用の権原のない者によってなされた場合は、土地所有者に属する(最判S31.6.19)。ここより、土地を使用する権原を有しない者が当該土地に小麦の種をまき、これを育てた場合には、成育した小麦の所有権は、種をまいた者ではなく、土地の所有者に帰属する。
2 BがAからAの所有する土地を買い受けて立木を植栽した後に、Cが当該立木とともに当該土地をAから買い受けてその所有権の移転の登記を備えた場合には、Bは、当該立木につき対抗要件を備えていなくとも、Cに対し、当該立木の所有権を主張することができる。
2 誤り 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。植栽した立木は土地に付合するが、Bによる立木の植栽は土地を買い受けた後に行われたものであり権原により附属させたものといえ、立木の所有権はBに帰属する。ただ、地盤所有権の取得につき未登記のままその地盤上に植栽した立木の所有権を、第三者に対抗するには、公示方法を必要とする(最判S35.3.1)。よって、Cが当該立木とともに当該土地をAから買い受けてその所有権の移転の登記を備えた場合には、Bは、当該立木につき対抗要件を備えていなければ、Cに対し、当該立木の所有権を主張することができない。
3 AがBから賃借するB所有の甲建物があり、AがBの同意を得ないで甲建物の一室にエアコンを設置した場合、当該エアコンの所有権は、AがBの同意を得ていないので、Bに帰属する。
3 誤り 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ここに付合とは、それまで独立に所有権の対象となっていた物が他の物に付着して独立性を失い、社会経済上その他の物そのものとみられるようになることをいう。建物に設置エアコンは、建物との関係で独立性を失っているとはいえず、社会経済上建物とみられるようになってもいない。よって、エアコンは建物に付合しておらず、Bは、エアコンの所有権を取得しない。
4 AがBから賃借するB所有の甲建物にBの同意を得てAが提供した材料を用いて出窓を増築した場合において、AB間に所有権の取得について特約がないときは、出窓には独立性が認められないので、出窓の所有権はBに帰属する。
4 正しい 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ここに付合とは、それまで独立に所有権の対象となっていた物が他の物に付着して独立性を失い、社会経済上その他の物そのものとみられるようになることをいう。増築された出窓は、建物との関係で独立性は認められず、社会経済上建物そのものとみられるようになるものであり、建物に付合する。ただ、権原によって物を附属させた場合、附属させた者が付合部分の所有権を有するが、この場合、附属させた物が不動産の構成部分となっているような強い付合の場合は、権原による附属であっても、附属部分は不動産所有者に帰属する。出窓の増築は、建物の構成部分となる強い付合といえる。そこで、Aによる出窓の増築がBの同意を得たもので、AB間に所有権の取得について特約がなく、権原によるものといえても、出窓の所有権は、建物所有者であるBに帰属する。
5 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て当該建物を増築した場合であっても、その増築部分が取引上の独立性を有しないときは、当該賃借人は、当該増築部分の所有権を取得しない。
5 正しい 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。増改築部分が構造上の独立性又は利用上の独立性を満たしていないがゆえに区分所有権の対象とならない場合には、増改築部分は建物に従として付合し、その所有権は建物の所有者に帰属し(大判T5.11.29)、その際、賃借人が増改築について賃貸人の承諾を得ていたとしても、賃借人が権原に基づいて増改築部分の所有権を留保することはできない(最判S44.7.25)。ここより、建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て当該建物を増築した場合であっても、その増築部分が取引上の独立性を有しないときは、当該賃借人は、当該増築部分の所有権を取得しない。
6 AがBから賃借するB所有の平屋の甲建物について、Bの同意を得て2階として、独立した玄関口があり、かつ、1階とは内部で通じていない居宅を増築し、2階部分が独立性を有し、区分所有権の対象となる場合で、AB間に所有権の取得について特約がないときは、甲建物の2階部分の所有権は、Aに帰属する。
6 正しい 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。家主が増改築を承諾した場合において、増改築部分が区分所有権の対象になるときは、増改築部分は借家人が権原によって附属させた独立の建物であり、他に特別の事情が存しない限り、借家人がその区分所有権を取得する(最判S38.10.29)。ここより、Aが増築した甲建物の2階部分が独立性を有し、区分所有権の対象となる場合には、Aがその所有権を取得する。
7 Aが所有する甲動産に甲動産の賃借人Bが所有する乙動産が付合したときは、甲動産が主たる動産であったとしても、Bは、乙動産の所有権を失わない。
7 誤り 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。Aが所有する甲動産に甲動産の賃借人Bが所有する乙動産が付合したときは、甲動産が主たる動産であれば、その合成物の所有権はAに帰属し、Bは乙動産の所有権を失う。
8 AがBの同意を得ないでBから賃借するB所有の甲建物に改装をした結果、改装前に1、000万円であった甲建物の価値が改装後に3、000万円となった場合には、改装によって甲建物の価値が倍以上に増加しているところから、甲建物の所有権の帰属はAに帰属する。
8 誤り 建物の改装とは、建物の内装や外装を新しくきれいにすることをいう。それは、建物に工作を加えることといえる。他人の動産に工作を加えた者(加工者)があるときは、その加工物の所有権は、材料の所有者に帰属するが、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する。ただ、この加工は、動産に限り適用があり、不動産の加工については適用がない。よって、Aによる改装によって甲建物の価値が倍以上に増加しているとしても、甲建物の所有権はAに帰属しない。
9 不動産の付合によって付合した物の所有権を喪失し、損失を受けた者は、当該不動産の付合によって所有権を取得した者に対し、その償金を請求することができる。
9 正しい 付合によって損失を受けた者は、不当利得の規定に従い、その償金を請求することができる。ここより、不動産の付合によって付合した物の所有権を喪失し、損失を受けた者は、当該不動産の付合によって所有権を取得した者に対し、その償金を請求することができる。
10 AがBから賃借するB所有の甲建物を増築し、付合により当該増築した部分の所有権をBが取得することとなる場合であっても、Aは、当該部分を継続して使用することができるところから、Bに対し、金銭の支払いを請求することはできない。
10 誤り 付合によって損失を受けた者は、不当利得返還請求として、その償金を請求することができる。よって、付合により、増築した部分の所有権をBが取得することとなる場合に、Aは、Bに対し、金銭の支払いを請求することができる。