物権変動

1 A所有の土地をBがCに売却し、その後BがAから当該土地を買い受けた場合において、いずれの売買契約にも所有権の移転時期や方法に関する特約がないとき、BがAから当該土地を買い受け、かつ、AからBへの所有権の移転の登記がされた時点で、Cに当該土地の所有権が移転する。

1 誤り 所有権の移転時期や方法に関する特約がないときは、売買契約が締結されれば、別段の合意又は特別の事情の存在しない限り、これと別に所有権移転の意思表示がなくても、売主から買主への目的物の所有権移転効果が発生する(最判S33.6.20)。所有権の移転の登記がされた時点で所有権が移転するものではない。


2 Aがその所有する土地をBに遺贈する旨の遺言をした後に死亡したが、Bがこれに基づく登記をしない間に、Aを相続したCの債権者Dが代位によりその土地について相続登記をしてこれを差し押さえた場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができる。

2 誤り 遺贈の効力発生後、特定遺贈の目的である不動産について、相続人の債権者がその相続分を差し押さえた場合、受遺者は登記がなければ遺贈による権利取得を対抗することができない(最判S39.3.6)。ここより、A所有の土地の受遺者Bが登記をしない間に、Aを相続したCの債権者Dがその土地を差し押さえた場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができない。


3 Cが所有する土地をAに売却したが、所有権の移転の登記をしないうちにCの一般債権者Bがその土地についてその土地について仮差押えをした。Aは、Bに対して土地の所有権を主張することができない。

3 正しい 仮差押えの登記をした譲渡人の債権者に対し、登記なしには所有権取得を対抗することができない(大判S9.5.11/大判S10.11.22)。よって、Aは、所有権の移転の登記をしないうちに土地について仮差押えをしたCの一般債権者Bに対して土地の所有権を主張することができない。


4 甲土地がAからBへ、BからCへと順次譲渡され、所有権の登記名義人がいまだAのままである場合には、Cは、Bの相続人であるDに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

4 誤り 不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。ここに第三者とは、一般に当事者及びその包括承継人以外の者をいう。そこで、不動産の譲受人は、譲渡人の相続人に対し登記なしに当該不動産の所有権の取得を主張することができる(大判S3.8.31)。ここより、甲土地がAからBへ、BからCへと順次譲渡され、所有権の登記名義人がいまだAのままであり、Cが登記を備えていない場合でも、CはBの相続人であるDに対し、甲土地の所有権を主張することができる。


5 甲土地がAからBへ、BからCへと順次譲渡され、所有権の登記名義人がいまだAのままである場合であっても、Cは、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができる。

5 正しい 不動産に関する物権の得喪及び変更は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。不動産が甲乙丙と順次譲渡された場合、現在の登記名義人たる甲が丙から直接転移登記手続を求められるにあたって、前々主である甲は民法177条にいう第三者として、丙に対しその物権取得を否認できる関係にはない(最判S39.2.13)。ここより、甲土地がAからBへ、BからCへと順次譲渡され、所有権の登記名義人がいまだAのままである場合であっても、Cは、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができる。


6 Aは、所有し、登記している甲土地を、Bに売却し、Bが甲土地の所有権を取得したが、甲土地の所有権の登記名義人は、Aのままであった。この場合において、甲土地をCが違法に占有しているときは、Bは、甲土地の所有権に基づき、Cに対し、甲土地の明渡しを求めることができる。

6 正しい 不法占拠者に対しては、登記なしに所有権を主張することができる(最判S25.12.19)。所有権を主張することができれば、当然、その侵害に対し所有権に基づく返還請求権により返還を請求することができる。ここより甲土地の所有権を取得したBは、その登記をしていなくても、甲土地を違法に占有するCに対し、甲土地の所有権に基づき、甲土地の明渡しを求めることができる。


7 A所有の土地をAがBに売却した後、AからBへの所有権の移転の登記がされる前に、Bからその登記の申請を受任していたCが、Aから当該土地を買い受け、AからCへの所有権の移転の登記がされた場合、Bは、Cに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することができる。

7 正しい 不動産に関する物権の得喪は、その登記をしなければ、第三者に対抗することができない。ただ、他人のために登記申請義務のある受任者が、二重に買受け、その他人のために登記をする義務を怠って、自分名義の登記をした場合は、委任者は、受任者に対し所有権の取得を対抗することができる。よって、Bからその登記の申請を受任していたCが、Aから当該土地を買い受け、AからCへの所有権の移転の登記した場合、Bは、Cに対し、当該土地の所有権を主張することができる。


8 A所有の甲土地がAからBに売却されたが、その旨の登記がされる前に、甲土地はAからC、CからDへと順次売却され、その旨の登記がされた。Bに対する関係で、Cは背信的悪意者であるがDは背信的悪意者ではない。この場合に、Bは、Dに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができない。

8 正しい 所有者AからBが不動産を買い受けたが、その登記が未了の間に、背信的悪意者Cが当該不動産をAから二重に買い受け、さらにこのCから買い受けたDが登記を完了したとき、Dは、Bとの関係でD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもってBに対抗することができる(最判H8.10.29)。つまり、Bは、Dに対して、甲土地の所有権取得を対抗することができない。


9 AとBは甲土地を共有していたところ、Aはその共有持分をCに譲渡したが、その旨の登記はされていない。この場合に、Cは、Bに対して、甲土地の共有持分の取得を対抗することができる。

9 誤り 共有不動産の持分取得を他の共有者に対抗するには、登記を要する(最判S46.6.18)。よって、Aの共有持分を取得したCは、その旨の登記をしていないと、Bに対して、甲土地の共有持分の取得を対抗することができない。


10 AとBとの間の売買契約に基づいてAからBへ甲土地の所有権の移転の登記がされた場合において、AがBによる詐欺を理由としてその売買契約に係る意思表示を取り消した後、Bへの所有権の移転の登記を抹消する前に、BからCへの甲土地の譲渡が行われていたときは、Cは、自己への所有権の移転の登記をしなければ、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができない。

10 正しい 不動産売買契約締結後、売主が買主の詐欺を理由に当該売買契約を取り消したにもかかわらず、買主がさらに当該不動産を第三者に売却したとき、取り消した売主と第三者は、先に登記を備えた方が所有者であることを主張することができる(大判S17.9.30)。Aが詐欺を理由にBとの売買契約を取り消した後、Bから甲土地を譲り受けたCは、自己への所有権の移転の登記をしなければ、Aに対し、甲土地の所有権を主張することができない。


11 A所有の土地をAがBに売却し、AからBへの所有権の移転の登記がされた後、Aが、Bの債務不履行により、当該売買契約を解除した。その解除後、BがCに当該土地を売却し、BからCへの所有権の移転の登記がされた場合、Aは、Cに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することができる。

11 誤り 不動産の売買契約が解除された場合の解除権者と解除後に現れた第三者との関係は、二重譲渡の関係と同様、登記により優劣を決す(最判S35.11.29)。よって、解除後、BがCに当該土地を売却し、BからCへの所有権の移転の登記がされた場合、Aは、Cに対し、当該土地の所有権を主張することができない。


12 Bが所有する土地をCに売却して所有権の移転の登記をし、CがAにその土地を売却したがその所有権の移転の登記をする前に、BがCの代金未払を理由にBC間の売買契約を解除した。Aは、Bに対して土地の所有権を主張することができない。

12 正しい 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。第三者が不動産の所有権を得た者であるとき、保護されるためには、登記を備えておく必要がある(大判T10.5.17)。Bによる解除の前に土地の所有権を取得したAは、所有権の移転の登記をする前であれば、Bに対して土地の所有権を主張することができない。


13 Cが占有しているA所有の土地をAがBに売却し、AからBへの所有権の移転の登記がされた後、Cにつき当該土地の取得時効が完成して、Cが時効を援用した場合、Cは、Bに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することができる。

13 正しい 時効取得者は、時効完成前に原所有者から所有権を取得し、時効完成前に移転登記を経由した者に対し、時効取得を対抗することができる(大判T7.3.2/最判S41.11.22)。ここより、AからBへの所有権の移転の登記がされた後、Cにつき当該土地の取得時効が完成して、Cが時効を援用した場合、Cは、Bに対し、登記なくして当該土地の所有権を主張することができる。


14 A所有の甲土地をBが時効取得した後その旨が登記される前に、Aは甲土地をCに売却しその旨の登記がされた。この場合に、Bは、Cに対して甲土地の所有権取得を対抗することができない。

14 正しい 不動産の時効取得者と時効完成後の第三者とは、登記を先に備えた方が優先する(最判S33.8.28)。よって、Bが甲土地を時効取得した後に、甲土地を買い受け登記をCに対して、Bは、甲土地の所有権取得を対抗することができない。


15 Aは、平成2年1月1日、B所有の甲土地を、自己の所有地であると過失なく信じて占有を開始し、以後、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と甲土地を占有している。平成13年1月1日にCがBから甲土地を譲り受け、Aが平成15年1月1日に、Bに対して甲土地の時効取得を主張するとき、Aは、所有権の移転の登記をしなければ、Bに対して時効取得を主張することができない。

15 誤り 10年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。時効取得者は、原所有者に対しては、登記なしに時効取得を主張することができる。よって、Aは、所有権の移転の登記をしなくても、Bに対しては時効取得を主張することができる。


16 Aがその所有する土地をBに譲渡したが、その旨の登記をしないまま死亡し、Aを相続したCがその土地について相続登記をしてこれをD(Bに対する関係で背信的悪意者に当たらないものとする。)に譲渡し、その旨を登記した場合、Bは、Dに対し、土地所有権の取得を対抗することができる。

16 誤り 相続開始前に被相続人から権利を取得した者と相続開始後に相続人から権利を取得した第三者は、先に登記を備えた方が他方に対し権利を対抗することができる(最判S33.10.14)。よって、Aがその所有する土地をBに譲渡し、その旨の登記をしないまま死亡し、Aを相続したCがその土地について相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨を登記した場合、Bは、先に登記を備えたDに対し、土地所有権の取得を対抗することができない。


17 Aが死亡し、BとCがAを共同相続したが、Cが、Aの所有していた土地について、勝手に、Cが単独で取得する旨の相続登記をしてこれをD(Bに対する関係で背信的悪意者に当たらないものとする。)に譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、相続分に応じた土地持分の取得を対抗することができる。

17 正しい 不動産の権利の相続による法定相続分の取得は、登記なしに第三者に対抗することができる(最判S38.2.22)。よって、Cが、Aの所有していた土地について、勝手に、Cが単独で取得する旨の相続登記をしてこれをDに譲渡し、その旨の登記をした場合であっても、Bは、Dに対し、相続分に応じた土地持分の取得を対抗することができる。


18 Aが死亡し、その共同相続人であるBとCとの間でAの所有していた土地をBが単独で相続する旨の遺産分割協議が成立したが、その土地について、Bが遺産分割協議を前提とする相続登記をする前に、CがBとCを共同相続人とする相続登記をし、C名義の土地持分をD(Bに対する関係で背信的悪意者に当たらないものとする。)に譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。

18 誤り 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記を備えなければ、第三者に対抗することができない。ここより、Aの所有していた土地をBが単独で相続する旨の遺産分割協議が成立したが、Bが遺産分割協議を前提とする相続登記をする前に、CがC名義の土地持分をDに譲渡し、その旨の登記をした場合、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することはできない。


19 Aが死亡した後、その法定相続人であるBとCのうちCが適法に相続を放棄したが、Aの所有していた土地について、この放棄を前提とする相続登記がされる前に、Cの債権者Dが代位によりBとCを共同相続人とする相続登記をし、C名義の土地持分を差し押さえた場合、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。

19 正しい 相続財産たる不動産について、相続の放棄をした相続人からその相続分の譲渡を受けた者は、その登記をしても他の相続人にその取得を対抗することはできない(最判S42.1.20)。つまり、他の相続人は、放棄者の相続分の取得について、登記なしに放棄者からの譲受人に対し放棄者の相続分の取得を対応することができる。ここより、相続を放棄したCの債権者DがC名義の土地持分を差し押さえても、Bは、Dに対し、当該土地持分の取得を対抗することができる。


20 Aは、自己所有の不動産の登記がBの名義になっていることを知りながら、この状態を事実上容認し、長期間放置していた。Bは当該不動産の登記がBの名義になっていることを利用して、善意のCに当該不動産を売ってしまった。Aは、Cに対し、当該不動産の所有権を主張することができる。

20 誤り 不実の所有権移転登記の経由が所有者の不知の間に他人の専断によってされた場合でも、所有者が右不実の登記のされていることを知りながら、これを存続せしめることを明示または黙示に承認していた ときは、94条2項を類推適用し、所有者は、その後当該不動産について法律上利害関係を有するに至った善意の第三者に対して、登記名義人が所有権を取得していないことをもって対抗することをえない。ここから、自己所有の不動産の登記がBの名義になっていることを知りながら、この状態を事実上容認し、長期間放置していたAは、Bから当該不動産を取得した善意のCに、所有者ではないBから当該不動産を買い受けたものであり、所有権を取得していないということを対抗することができない。つまり、Aは、Cに不動産の所有権を主張することができない。


21 Aは、B所有の動産をBから買ったが、後日持ち帰ることにして、当該動産をBに保管してもらっていた。しかし、Bは、善意のCにも当該動産を売ってしまい、Cの依頼を受けてCのために当該動産を保管していた。Aは、Cに対し、当該不動産の所有権を主張することができる。

21 正しい 民法178条は、「動産の所有権取得につき、動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない旨」を規定する。ここにいう引渡しには、代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示することで本人が占有権を取得する、いわゆる占有改定が含まれる(大判S11.2.14/最判S30.6.2)。ただ、Bから動産を買い受けたAが占有改定により対抗要件を備えても、Bから二重に当該動産を買い受けたCも占有改定により対抗要件を備えることができ、民法178条の対抗要件によりAとCの優劣を決することはできない。そこで、こうした動産の二重譲渡については、民法192条の「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する」との即時取得が認められれば、第二譲受人であるCが保護され、即時取得が否定されれば、第一譲受人であるAが保護されるという形でACの優劣を決することになる。ところで、この即時取得における「占有の取得」は、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得することを要し、かかる状態に一般外観上変更を来たさないいわゆる占有改定の方法による取得をもっては足らない(最判S35.2.11)。ここより、Cが動産を占有するBを所有者と信頼して買い受けたとしても、占有改定により占有を始めたのであれば、当該動産を即時取得により取得することはできない。よって、Aは、Cに対し動産の所有権を主張することができる。


22 Aが自宅の庭先に置いていた自転車をBが盗んで乗り回し、その後、これをCに売り渡した場合には、Aは、Cが占有を始めた時から1年以内であれば、占有回収の訴えにより、自転車の返還を請求することができる。

22 誤り 占有物が盗品であるときは、被害者は、盗難の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。ここより、盗まれた自転車を占有するCに対し、Aは、Cが占有を始めた時から1年ではなく2年以内であれば、占有回収の訴えにより、自転車の返還を請求することができる。

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